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第16回 日本産馬,世界を駆けめぐる

2009.07.01
 もうニュースとはいえないかもしれない。日本産馬が米国の重賞を制した。

 6月13日,ケンタッキー・ダービーの舞台でもあるチャーチルダウンズ競馬場の芝9ハロンで行われたG2ジェファーソンカップSで,牡3歳のフロレンティーノが優勝した。
 フロレンティーノは父スウェプトオーヴァーボード(USA),母マストビーラヴド(その父サンデーサイレンス(USA))という血統。北海道安平町のノーザンファームで06年2月8日に生まれた。05年の桜花賞,NHKマイルカップなどを制したラインクラフト(父エンドスウィープ(USA))の4歳年下の半弟にあたる。スウェプトオーヴァーボードはエンドスウィープの息子なので,フロレンティーノとラインクラフトの血統構成はとてもよく似ている。

 06年に行われたセレクトセールの当歳せりに出場し,ダーレー・ジャパン(株)に1億4千万円で落札された。07年に米国に渡り,08年にデビュー。これで通算成績を8戦3勝とした。

 日本産馬の米国重賞制覇といえば,05年のシーザリオが思い出される。カリフォルニア州ハリウッドパーク競馬場で行われたアメリカンオークス(芝10ハロン,G1)で4馬身差の圧勝劇を演じた。翌06年はダンスインザムードが同じくハリウッドパーク競馬場で行われたG3のキャッシュコールマイル(芝8ハロン)で優勝した。

 フロレンティーノの快挙が達成された2週間前の5月31日,シンガポールでも日本産馬が現地のG1を制した。

 優勝したのは4歳牝馬のジョリーズシンジュ。父ジョリーズヘイロー(USA),母インディアリングクオリティ(USA)(その父Danzig)という血統で,北海道浦河町の丸幸小林牧場で05年4月22日に生まれた。

 ジョリーズシンジュは06年のHBAオータムセールに上場され,シンガポールの馬主に300万円で落札され,シンガポールを拠点に活躍中の高岡秀行調教師の元に送られ,08年1月にデビュー勝ちを飾った。今回の勝利で通算17戦7勝とした。

 日本産馬がシンガポールのG1を制したのは06年のシンガポール航空国際カップのコスモバルク,翌年の同じレースのシャドウゲイト,08年のシンガポールゴールドカップを勝ったエルドラド以来4頭目となった。ホッカイドウ競馬の調教師から転身した高岡調教師にとってもエルドラド以来のG1優勝になった。

 競走馬の世界では,日本産馬が海外のレースを勝っても珍しいことではなくなったが,馬術の世界では前代未聞だった。その前代未聞の快挙が6月13日,ルクセンブルクの大会で達成された。

 大仕事をやってのけたのは福島大輔選手(日本中央競馬会)と愛馬ハリー・ベイだ。77年生まれの福島選手は全日本障害飛越選手権で最年少優勝を飾るなど明大時代から,その手腕を高く評価されていた。ロンドン五輪を目指し,昨年12月にベルギーへ渡り,1年間の予定でトレーニングに励んでいる。

 優勝したのは13日に行われたスピードクラス(130センチ障害)。51組の人馬が出場し,高さ130センチの障害物を飛び越えて,走行タイムを競った。このうち9組が一つも障害を落とさない無失点でゴールを果たし,この中で福島選手とハリー・ベイのコンビは2位に2秒61の差をつける52秒03のトップタイムをマークして見事に優勝した。

 岩手県遠野市で生まれたハリー・ベイは7歳のセン馬。品種はセルフランセ。04年の遠野市場で日本中央競馬会が購入し,訓練を受けて,今年の1月にベルギーに渡った。

 かつての競馬と同じように世界から大きく遅れていた乗馬の生産だが,10数年前から力を入れ始めている。その成果がハリー・ベイの快挙につながった。「日本産馬は世界に通用する」。日本のホースマンに勇気を与えた。


JBBA NEWS 2009年7月号より転載
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