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第154回 「哩王」

2024.01.10

 2023年11月21日、社台スタリオンステーションが発表した「2024年度シーズン種付料」の種牡馬リストから、ダイワメジャーの名前が消えた。日刊スポーツの報道によると、ダイワメジャーは2023年限りで種牡馬を引退、功労馬として余生を過ごすという。


 2008年に種付けを開始。その種牡馬生活は16年の長きに及んだ。


 これまでに中央競馬のGⅠ勝ち馬7頭を送り出した。達成順に挙げると次の通りとなる。カレンブラックヒル(2012年NHKマイルC)、コパノリチャード(2014年高松宮記念)、メジャーエンブレム(2015年阪神JF、2016年NHKマイルC)、レーヌミノル(2017年桜花賞)、アドマイヤマーズ(2018年朝日杯フューチュリティS、2019年NHKマイルC)、レシステンシア(2019年阪神JF)、セリフォス(2022年マイルチャンピオンS)である。


 ダートグレードの交流Jpn1は2勝。ノーヴァレンダ(2018年全日本2歳優駿)とブルドッグボス(2019年JBCスプリント)が勝利を飾っている。


 派手さこそないが、ダイワメジャーはコンスタントに上位争いをする産駒を出す印象が強い。2015年のJRA2歳リーディングサイアー争いでは、最後までディープインパクトと競り合い、勝利数43対42、獲得賞金6億5,000万円対6億円という僅差で首位を奪取した。また2016年の中央競馬では342頭の産駒が27億円あまりを稼ぎ、ディープインパクト、キングカメハメハに次いで種牡馬別総合ランキングで3位に食い込んだ。


 2023年も総合ランキングではベスト10から外れてしまいそうだが、2歳リーディングではアスコリピチェーノが新潟2歳Sを制し、ボンドガールがサウジアラビアロイヤルCで2着になるなど一桁順位も可能な位置につける。アスコリピチェーノもボンドガールも2024年のクラシックで期待できそうな逸材だ。


 ダイワメジャー産駒はJRAGⅠとJpnⅠを合わせて11勝を挙げている。このうち9勝が距離1600㍍のレースだという特徴を持つ。マイルGⅠで3勝を挙げた父とそっくりな産駒が多いということだろう。ところが、そんなダイワメジャー産駒としては異色の存在が現れた。それも海外で。


 2023年10月29日、パリロンシャン競馬場で行われたGⅠロワイヤルオーク賞(芝3100㍍)で優勝したのはダイワメジャーを父に持つアイルランド産馬ダブルメジャーDouble Major(IRE)(騸3歳)だった。これがGⅠ初勝利。前走のショードネイ賞(GⅡ、芝3000㍍)に続く長距離重賞連勝で通算9戦4勝とした。


 種牡馬晩年に異色の大物を送り出したかと思うと、ブルードメアサイアーとしても爪痕を残した。


 マイルチャンピオンシップ優勝の牝馬ナミュールだ。ナミュールの母の父がダイワメジャーである。2022年3月のチューリップ賞でナミュールが優勝したのが、ダイワメジャーの母の父としての重賞初制覇だった。その後、ラヴェル(アルテミスS)、キミワクイーン(函館スプリントS)、モリアーナ(紫苑S)と重賞勝ち馬を続けて送り出し、ついにGⅠ勝ち馬が誕生した。このメンバーをながめて気づくのは、ブルードメアサイアーとして送り出した重賞勝ち馬はすべて牝馬であることだ。


 ダイワメジャーは2001年4月8日に社台ファームで生まれた。父は名種牡馬のサンデーサイレンス(USA)、母のスカーレットブーケはノーザンテースト(CAN)の娘でJRAの重賞4勝を挙げた。ダイワメジャーは美浦トレーニング・センターの上原博之調教師に育てられ、2004年の皐月賞で初のGⅠ勝利を挙げた。その後、ノド鳴りでスランプに陥るが、手術によって病気を克服し、最終的にはGⅠ5勝を含め重賞8勝を挙げる強豪に成長した。特にマイル戦に強く、10戦して5勝、2着3回の成績を残した。5勝のうち3勝はマイルGⅠでマイルチャンピオンSは2006年と2007年に連覇、安田記念は3度目の挑戦となった2007年に初優勝を果たしている。


 ダイワメジャーの3歳年下の半妹がダイワスカーレット(父アグネスタキオン)だ。2007年に桜花賞、秋華賞、エリザベス女王杯を制したダイワスカーレットは有馬記念に出走する。優勝はマツリダゴッホに譲ったが先行して2着に粘る頑張りを見せた。そのダイワスカーレットの2½馬身後ろの3着でゴールしたのが兄のダイワメジャーだった。きょうだいで中央のGⅠに出走した例は数多いが、2頭とも馬券圏内に入ったのはスカーレット、メジャーの「ダイワきょうだい」以外にはいない。


 この有馬記念を最後に現役を引退したダイワメジャーに対し、ダイワスカーレットは翌年も競走生活を続けた。産経大阪杯で逃げ切り勝ち。天皇賞・秋ではウオッカと大接戦を演じて約2㌢差といわれた2着。そして2度目の有馬記念に挑み、見事に優勝した。牝馬の有馬記念制覇は1971年のトウメイ以来37年ぶりで、ガーネツト(1959年)、スターロツチ(1960年)に続く4頭目の快挙だった。


 このようにダイワメジャーは母系にも多くの活躍馬が出現する血統だ。後継のアドマイヤマーズ産駒はセレクトセールで1億円超えするなど楽しみな素材がいる。

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