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第5コーナー ~競馬余話~

有吉正徳 第5コーナー ~競馬余話~

第92回 「アイ」

 10月14日に京都競馬場であった第23回秋華賞は断然の1番人気に支持されたアーモンドアイ(牝3歳、美浦・国枝栄厩舎)が優勝した。桜花賞、オークスに続く優勝で史上5頭目の牝馬3冠に輝いた。

 かつて牝馬3冠の最終戦はビクトリアカップだった。1970年に創設され、京都競馬場の芝2400㍍を舞台とした。1975年にエリザベス女王が来日したのを記念して、翌1976年からレース名がエリザベス女王杯へと変わった。条件は同じく京都競馬場の芝2400㍍だった。

 その後、牝馬路線の競走体系が整備されたのに伴い、1996年に3歳牝馬限定戦として距離2000㍍の秋華賞が誕生。エリザベス女王杯の出走条件は3歳以上の牝馬に変わった。距離も2400㍍から2200㍍へと短縮された。

 ビクトリアカップの時代、3冠牝馬は誕生せず、エリザベス女王杯の時代の1986年にメジロラモーヌ(父モガミ(FR)、母メジロヒリュウ)が桜花賞、オークス、エリザベス女王杯の3冠を制した。メジロラモーヌがすごかったのは3冠制覇を成し遂げたばかりでなく、3つのレースの前哨戦にも、すべて優勝したことだ。

 すなわち4歳牝馬特別(当時、現フィリーズレビュー)1着→桜花賞優勝→4歳牝馬特別(現フローラS)1着→オークス優勝→ローズS1着→エリザベス女王杯優勝、と重賞レース6連勝で3冠を制した。

 2003年のスティルインラブ(父サンデーサイレンス(USA)、母ブラダマンテ(USA))は、3冠レースすべて2番人気で勝ち、一度も1番人気にならなかった。常にスティルインラブの前に立ちはだかったのはアドマイヤグルーヴ。スティルインラブと同じサンデーサイレンスを父に、天皇賞馬エアグルーヴを母に持つ良血馬で、デビューから3連勝で桜花賞を迎えたが、桜花賞は3着、オークスは7着、秋華賞は2着とスティルインラブの後塵を拝した。秋華賞敗戦後に2番人気で臨んだエリザベス女王杯は、スティルインラブにハナ差で先着し、3歳最後のレースで意地を見せた。

 2010年のアパパネ(父キングカメハメハ、母ソルティビッド(USA))は、もっとも体の大きな3冠牝馬だった。秋華賞を制した時の体重は490キロ。2012年のジェンティルドンナ(父ディープインパクト、母ドナブリーニ(GB))は父も3冠馬という血統の持ち主だった。

 それぞれ個性豊かな3冠馬ばかりだが、アーモンドアイ(父ロードカナロア、母フサイチパンドラ)は、これまでの4頭とは違う記録をいくつか作った。

 一番の特徴はその勝ちっぷりだ。桜花賞では2着のラッキーライラックに1馬身4分の3の差をつけ、オークスではリリーノーブルに2馬身差で快勝。そして秋華賞はミッキーチャームに1馬身半差をつけた。3冠レースすべてで2着に1馬身半以上の差をつけたのは3冠牝馬の中ではアーモンドアイが初めてだった。過去の4頭はどこかのレースで苦戦をしていたが、アーモンドアイはすべて快勝という中身だった。

 もう一つの特徴はキャリアが少ないことだ。3冠馬になったにもかかわらず、キャリアは6戦。メジロラモーヌが11戦目、スティルインラブが7戦目、アパパネが9戦目、ジェンティルドンナが8戦目で3冠に到達したのをクリアした。その原因は「ぶっつけ本番」だ。

 特に注目されたのがオークスから直接、秋華賞に向かった異例のローテーションだ。過去の3冠牝馬は必ず前哨戦をステップに3冠最終戦に挑んでいたが、アーモンドアイは5月20日のオークスから10月14日の秋華賞まで中146日という間隔をあけた。キャリア6戦目での3冠達成は牡馬に範囲を広げても最少のものだ。

 オークスでも秋華賞でも、レース後に熱中症のような症状を見せた。1戦1戦全力を出し切るタイプのように思える。十分にレース間隔をあけて走ることがアーモンドアイにとっては最善なのかもしれない。