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第107回 「大差」

2020.02.12
 2020年が明けたばかりの1月18日、中山競馬場で15年ぶりの出来事があった。同じ日の同じ競馬場で2度の「大差勝ち」が見られたのだ。
 
 第2レースは「3歳未勝利戦」。ダートの1800㍍で争われた。優勝したのは単勝1.5倍の圧倒的な1番人気に支持されていたアイスナイン。2番手から抜け出し、逃げたシラカバに大差をつけた。優勝タイムは1分56秒7。2着シラカバとは2秒0の差があった。

 続く第3レースは「3歳新馬戦」。舞台は第2レースと同じくダートの1800㍍だった。勝ったのは、これまた単勝2.1倍という1番人気に推されたシェダル。勝ち時計は1分54秒6。2着のショウナンアニメとのタイム差は2秒0、つけた着差は大差だった。

 このように同じ日の同じ競馬場で2度の大差勝ちが演じられたのは、2005年10月8日の東京競馬場以来のことだった。この時は第8レースでマイティスプリングが圧勝劇を演じると、第9レースではユーワハリケーンが2歳ダート1400㍍のコース新記録を塗り替える1分23秒1で快勝した。

 中央競馬では22種類の「着差」が採用されている。着差の小さな方から順に並べると次のようになる。「同着」「ハナ」「アタマ」「クビ」「1/2馬身」「3/4馬身」「1馬身」「1 1/4馬身」「1 1/2馬身」「1 3/4馬身」「2馬身」「2 1/2馬身」「3馬身」「3 1/2馬身」「4馬身」「5馬身」「6馬身」「7馬身」「8馬身」「9馬身」「10馬身」「大差」。ご覧になって、わかっていただけるかと思うが、10馬身を超えると大差になる。

 障害レースでは1、2着馬の間に大差がつくことは珍しくないが、平地でのケースはまれだ。だから同じ日の同じ競馬場で、2度も大差勝ちがあるというのは非常に珍しいケースである。

 1984年にグレード制が導入されて以降、GⅠレースでの大差勝ちはない。最大着差は9馬身差で2度記録されている。1度目は2003年11月のジャパンカップ。優勝したタップダンスシチーが2着のザッツザプレンティに9馬身差をつけた。2度目は同じ年12月の有馬記念だった。シンボリクリスエス(USA)がリンカーンに9馬身差をつけて圧勝した。グレード制導入以前では、1968年の天皇賞・春で優勝したヒカルタカイが2着のタイヨウに大差をつけた例がある。この時のタイム差は2秒8だった。

 平地の重賞レースでは、4度の大差勝ちが見つかった。1987年の札幌記念(優勝馬フォスタームサシ)、1989年の弥生賞(レインボーアンバー)、1997年のステイヤーズステークス(メジロブライト)、1998年の金鯱賞(サイレンススズカ)だ。メジロブライトはその後、天皇賞・春に優勝、サイレンススズカも宝塚記念で逃げ切り勝ちを収め、いずれも大差勝ちをのちのGⅠ優勝に結びつけた。

 古い記録は不明だが、最近の例で、平地レースでもっとも勝ち馬と2着馬に差のあったレースは1986年3月1日に阪神競馬場のダート1800㍍で行われた新馬戦である。11頭立ての1番人気になったツキノオージャはスタートから先頭に立ち、そのまま逃げ切り勝ち。2着のレッドピュローに3秒6の大差をつけた。ダートコースでは1秒=約5馬身という計算になるから、着差に換算すると「18馬身」となる。

 ただ世界に目を向けると、度肝を抜かれるような圧勝劇がある。1973年の米ベルモントステークスだ。ケンタッキーダービー、プリークネスステークスをいずれもレコードタイムで連勝し、3冠制覇に王手をかけていたセクレタリアトが出走。レースは5頭立てになった。最内枠からスタートしたセクレタリアトは序盤こそ2番手を進んでいたが、向こう正面に入ると早々に先頭に立ち、その後も軽快に飛ばした。後続との差は開くばかり。ゴールでは2着のトワイスアプリンスに「31馬身差」をつけた。勝ちタイムは2分24秒0。ダートの12ハロン(約2400㍍)の記録としては、47年後の現在も破られることのない世界記録だ。

 ちなみにダート2400㍍の中央競馬レコードは2分28秒6。グルーヴィンハイが2007年2月18日に東京競馬場で記録したものだ。セクレタリアトとは4秒以上の差がある。

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