北海道馬産地ファイターズ
第98回 『マークシートを塗るだけの簡単なお仕事です』
2017.02.16
Tweet
昨年の有馬記念当日は、ウインズ札幌A館の1階フロアにおいて、普段は競馬場で開催している「ビギナーズセミナー」の講師を務めさせてもらった。
有馬記念、そして日本ダービーは、普段は競馬をやらない一般層にも知られるレースであり、北海道北斗市に住む母親からも、「TVで戸崎騎手の特集を見ていたら応援したくなったから、単勝を買っておいて」との連絡をもらった程だ(勿論、戸崎騎手の単勝という馬券は売っていないので、有馬記念で騎乗していたアルバートの単勝を買っておきました)。
セミナーの参加者の皆さんにも、この日、ウインズに来た理由を聞いてみたが、やはり有馬記念を買いに来たというのがほとんどであり、競馬新聞の見方や、そこに書かれている出走馬の説明などをすると、「北島三郎さんの馬(キタサンブラック)の他にも、色々な馬が出ているんだねえ」と関心を寄せてもらえた時には、少しだけ講師としての役割を果たせたような気がした。
講師の空き時間には、競馬ファンに戻って馬券を購入していたのだが、その際、呼び込みを手伝ってもらっていたスタッフから、「ちょっとお願いしてもいいですか?」と声をかけられ、その声の方向を向くと、年齢は自分の母親ほどの、手にメモを持った女性が立っていた。その女性は話し出す。
「今日、家族に有馬記念の馬券を頼まれたのだけど、どう買っていいのか分からなくて...」と言われて差し出されたメモには、「枠連○-○」「三連複○-○-○」という組み合わせが幾つも書かれていた。
では、このメモに書いてある馬券の購入方法も含めて、ビギナーズセミナーに参加されませんか?と声をかけたが、そこまで競馬に対する興味は無いらしく、とりあえずは馬券を買って帰れればいいと話す。
ここは講師である一方で、少しでもJRAの売り上げに貢献せねばという使命感も働いたこともあり、メモに書かれた組み合わせを、マークカードに記入することにした。
その際、この行為は競馬法的にはどうなのだろう?という疑問を持ったが、その心の動揺を見透かしたように、その女性が話し出す。「昨年も書き方が分からなくて、スタッフの方に書いてもらったの」と1階フロアの総合インフォメーションの方向を指さした。確かにそこで案内を行う女性スタッフを見ると、マークカードを記入している様子も見られる。仕事の合間に馬券の購入を行うとは、熱心な競馬ファンだなあ、と思うわけもなく、つまり、僕のように有馬記念のマークカードを代筆しているということに気づかされた。
このままでは来年もその女性は、有馬記念のマークカードの代筆を誰かに頼んでしまう。これは由々しき事態だと考えた自分は、「お母さん、僕のお手伝いということで、マークカードのここを塗ってもらえます?」と話を振ると、立場が逆転したことを忘れて、ペンを持ち始めた。
「今日は中山競馬場でレースが行われているので、ここを塗って、有馬記念は10レースだから、次はここを塗って...」と誘導すると、メモに書かれた幾つかの組み合わせを塗り上げていた。
「あら、意外と簡単なのね!」と気を良くしたその女性は、まだ残っていた組み合わせを、僕に尋ねながらではあるが、自分の力で書き上げていた。最後に組み合わせのチェックをして、間違っていないことを確認してメモとマークカードを渡すと、「これで来年からは自分で書けるかも」と笑顔を見せて、エスカレーターの方に向かって行った。
そうは言っても、来年の今頃には忘れているだろうな、と思いながら、その女性や自分の母親のような1年に一度しか馬券を買わないような一般層の方々にも、自発的に、そして自分の力で馬券を買える方法は無いだろうか?とふと思った。
しかし、馬券の種類も多くなった今、いくらマークカードが良く出来ているとしても、初心者にはちんぷんかんぷんなのも事実。少しの時間をいただいて、ビギナーズセミナーのような講座に参加してもらいたいところだが、その時間さえ無いとなると、やはり、マークカードの代筆を行うしかない。
とはいえども、代筆を行うのはやはり抵抗があるだけでなく、「自分はこの馬券を買おうと思ったのに、あなたが書いたから外れた!」と難癖をつける人が出てこないとも限らない。ここはJRAの偉い方に許可をもらって、「マークカード塗ります!(ただし、馬券の購入は自己責任で)」というたすきをかけて、ウインズや競馬場をうろつくしか無いとも思っているのだが...。
有馬記念、そして日本ダービーは、普段は競馬をやらない一般層にも知られるレースであり、北海道北斗市に住む母親からも、「TVで戸崎騎手の特集を見ていたら応援したくなったから、単勝を買っておいて」との連絡をもらった程だ(勿論、戸崎騎手の単勝という馬券は売っていないので、有馬記念で騎乗していたアルバートの単勝を買っておきました)。
セミナーの参加者の皆さんにも、この日、ウインズに来た理由を聞いてみたが、やはり有馬記念を買いに来たというのがほとんどであり、競馬新聞の見方や、そこに書かれている出走馬の説明などをすると、「北島三郎さんの馬(キタサンブラック)の他にも、色々な馬が出ているんだねえ」と関心を寄せてもらえた時には、少しだけ講師としての役割を果たせたような気がした。
講師の空き時間には、競馬ファンに戻って馬券を購入していたのだが、その際、呼び込みを手伝ってもらっていたスタッフから、「ちょっとお願いしてもいいですか?」と声をかけられ、その声の方向を向くと、年齢は自分の母親ほどの、手にメモを持った女性が立っていた。その女性は話し出す。
「今日、家族に有馬記念の馬券を頼まれたのだけど、どう買っていいのか分からなくて...」と言われて差し出されたメモには、「枠連○-○」「三連複○-○-○」という組み合わせが幾つも書かれていた。
では、このメモに書いてある馬券の購入方法も含めて、ビギナーズセミナーに参加されませんか?と声をかけたが、そこまで競馬に対する興味は無いらしく、とりあえずは馬券を買って帰れればいいと話す。
ここは講師である一方で、少しでもJRAの売り上げに貢献せねばという使命感も働いたこともあり、メモに書かれた組み合わせを、マークカードに記入することにした。
その際、この行為は競馬法的にはどうなのだろう?という疑問を持ったが、その心の動揺を見透かしたように、その女性が話し出す。「昨年も書き方が分からなくて、スタッフの方に書いてもらったの」と1階フロアの総合インフォメーションの方向を指さした。確かにそこで案内を行う女性スタッフを見ると、マークカードを記入している様子も見られる。仕事の合間に馬券の購入を行うとは、熱心な競馬ファンだなあ、と思うわけもなく、つまり、僕のように有馬記念のマークカードを代筆しているということに気づかされた。
このままでは来年もその女性は、有馬記念のマークカードの代筆を誰かに頼んでしまう。これは由々しき事態だと考えた自分は、「お母さん、僕のお手伝いということで、マークカードのここを塗ってもらえます?」と話を振ると、立場が逆転したことを忘れて、ペンを持ち始めた。
「今日は中山競馬場でレースが行われているので、ここを塗って、有馬記念は10レースだから、次はここを塗って...」と誘導すると、メモに書かれた幾つかの組み合わせを塗り上げていた。
「あら、意外と簡単なのね!」と気を良くしたその女性は、まだ残っていた組み合わせを、僕に尋ねながらではあるが、自分の力で書き上げていた。最後に組み合わせのチェックをして、間違っていないことを確認してメモとマークカードを渡すと、「これで来年からは自分で書けるかも」と笑顔を見せて、エスカレーターの方に向かって行った。
そうは言っても、来年の今頃には忘れているだろうな、と思いながら、その女性や自分の母親のような1年に一度しか馬券を買わないような一般層の方々にも、自発的に、そして自分の力で馬券を買える方法は無いだろうか?とふと思った。
しかし、馬券の種類も多くなった今、いくらマークカードが良く出来ているとしても、初心者にはちんぷんかんぷんなのも事実。少しの時間をいただいて、ビギナーズセミナーのような講座に参加してもらいたいところだが、その時間さえ無いとなると、やはり、マークカードの代筆を行うしかない。
とはいえども、代筆を行うのはやはり抵抗があるだけでなく、「自分はこの馬券を買おうと思ったのに、あなたが書いたから外れた!」と難癖をつける人が出てこないとも限らない。ここはJRAの偉い方に許可をもらって、「マークカード塗ります!(ただし、馬券の購入は自己責任で)」というたすきをかけて、ウインズや競馬場をうろつくしか無いとも思っているのだが...。