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北海道馬産地ファイターズ

村本浩平 北海道馬産地ファイターズ

第140回 『護持』

 コロナ太りと言われる前から、ぽっちゃりとしていた筆者であるが、不要不急の外出を避けていたことが更に拍車をかける形で、ただの「不摂生太り」になっていた。

 緊急事態宣言が解除された以降、筆者の住む札幌市内でも、様々な公共施設が再開していく中で、好んで利用していたトレーニング施設も再開の運びとなった。

 その施設では入場時のマスク着用や、アルコールスプレーでの手の消毒だけでなく、非接触型体温計での検温、そして、簡単な健康チェックに加えて、連絡先も記入させられた。

 ここまで徹底してもらった方が、何かあった時の早い対処へと繋がるに違いない。

 館内への入場制限の意味合いもあったのだろうが、施設内のロッカーも使える場所が制限されており、それどころか、ランニングマシーンも一つ置きかつ、その間には透明のビニールシートが仕切りとして貼られていた。

 これなら飛沫感染も防げるはず、と安心してマシーンのスピードを上げたのだが、その数分後、着用していたマスクが息苦しくなって、息も絶え絶えにペースを落とした。

 取材でホッカイドウ競馬の場外発売が始まったAIBA石狩に行った時も、入口では数取器を持ったスタッフが親指を動かしながら、入場者数をチェックしており、しかも、サーモグラフィーカメラを用いた体温チェックも行われていた。

 ソーシャルディスタンスの意味合いもあるのだろうが、座席だけで無く、売り場も一つ置きとなっていた。競馬ファンもこの状況をわきまえているようで、ゴール前でも大声をあげることなく、どちらかというと、苦渋に満ちた、ため息らしき声がマスク越しに聞こえていた。「新しい生活様式」の中、日常生活が少しずつ動き始めているのだろう。

 そんな中、緊急事態宣言後では初めてとなる、通常通りのせり市場となった「八戸市場」の取材へ行ってきた。

 会場入口でも例に漏れず、アルコールスプレーでの消毒や体温チェック、そして、連絡先の記入欄があった。そこには北海道でもよく会う生産関係者や取材陣の名前があった。

 会場内に入ると、マスク越しでもすぐ分かる知り合いが、ソーシャルディスタンスを保ちながら近寄ってきて、「ここまで顔見知りが多いと、この場所が北海道だと勘違いしちゃうね」と話しかけてくる。展示でも挨拶を交わす人のほとんどが、北海道でも会う人ばかりであり、青森感が全くしないなあ、と思っただけでなく、わざわざ八戸まで足を運んでまでして、せりに参加したいという前向きな気持ちも感じられた。

 実際に購買登録者の数も昨年より増えていたようであり、総売上額、産駒1頭当たりの平均価格などは昨年を下回ったものの、それでも売却率はほぼ変わらない数字となった。

 売り上げ額や平均価格の減少に関しては、高額落札馬の数が昨年より少なかったことも関係している。その一方で市場に足を運び、実際に馬を見た上で、せりに参加したいと思った人が安定数いたこと、今後のせり市場の明るい兆しになるとも感じた。

 市場から八戸駅までの帰り道、タクシーを利用したのだが、その時、運転手の方から、「やはり、お客さんを乗せるときは緊張感もあります。その一方で観光や仕事で来られる方が減っているだけに、乗車していただけるのは有り難いとの気持ちもありますね」と言われた。青森県内は北海道と比べると、検査陽性者の数が少なく、しかも、八戸からほど近い岩手県では、7月中旬に入っても、まだ陽性者が出ていない。それだけ岩手、青森共々、県民を初めとする予防意識が高いのかもしれないが、実際に自分もうがいや手洗いを徹底させてからは、ほとんど風邪をひかなくなった。

 当たり前のことを、当たり前に続けていけば、コロナにはかからないのでは?という自信も生まれてきたのだが、どうやら他のウイルスよりも感染率が格段に高いようであり、まだまだ気は抜けそうにない。

 この原稿を書いている間にも、東京では緊急事態宣言下を超え、最多の感染者数となったとの報道があった。世界に目を向ければ、それ以上のペースで感染が拡大しつつある。

 それでも落ち込んだ経済を回復させるべく、日本国内では様々な制限が解除されつつある。それが今後、どのような方向へ向いていくかはまだ分からないが、それでも個人間で「制限」の気持ちを持ち続けるのが、最大の予防なのではという気がしてくる。

 他のスポーツイベントと同様に、そう遠くない時期に競馬場にも人が戻ってくるのだろう。以前のような賑わいがなくてもいい。マスク越しの声が歓声でなくてもいい。日常生活がこのまま「護持」できるのならば、自分は何だって受け入れてやろうと思う。