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北海道馬産地ファイターズ

村本浩平 北海道馬産地ファイターズ

第145回 『ダービースタリオン』

 4年目にして破産をした。原因は分かっている。初期牝馬にそれなりのネームバリューのある種牡馬を配合したのだが、産まれてきた牡馬は体質が弱く、ほぼレースに出走できないまま、未勝利で引退。

 兄の無念を晴らすかのように、オープンまで上り詰めようとしていた弟は、デビュー前に脚元が強いというコメントが聞かれたにもかかわらず、調教中に屈腱炎を発症し、その後の成績も振るわなくなった。

 その後、インブリードを狙って配合された生産馬も、未勝利戦を突破するのが精一杯という惨状。ついに、初期繁殖牝馬を売却するという最終手段に出たものの、それでも預託料などのランニングコストは確実に経営を圧迫し、ついに破産宣告がされた。

 これは勿論、ゲームの中の話である。実際の筆者は破産ができるほどの器量も無く、ましてや、牧場経営ができるほどのバイタリティーも無い。

 生まれて初めての破産宣告を言い渡されたのは、12月3日に発売されたダービースタリオンSwitch版である。というよりも、過去のダービースタリオンでも、破産をしたのは初めての経験だったが、ネタ的にはありかと思い、ゲーム内だが借金をした上で、このままゲームを続けることにした。

 思えば、競馬番組の詳しい施行時期を知ったのは、ダービースタリオン全国版を通してだったと思う。その後も新作が発表される度に購入を続け、そのうちにダービー馬のオーナーどころか、日本競馬界の悲願とも言える凱旋門賞馬も送り出してみせた(あくまでゲーム内での話です)。

 今、この仕事をしているのも、ダービースタリオンによって得られた様々な知識によるところが大きく、「競馬ライター村本浩平は、ダービースタリオンでできている」と言ってしまっても、決して過言では無いだろう。

 だが、それは他の競馬関係者も一緒のようだ。ある連載媒体において、様々な年齢の牧場スタッフと話をする機会があるのだが、競馬を始めたきっかけ、あるいはこの仕事に就こうと思ったきっかけについて話を聞くと、世代を問わずに、「ダービースタリオンで競馬を覚えました」との言葉が、かなりの頻度で返ってきた。

 ダービースタリオンをきっかけとして、競馬の世界に入ったエピソードは若手騎手や新規調教師からも聞かれている。人手不足が深刻な問題となっている生産地であるが、もし、ダービースタリオンがこの世界に無かったのなら、更に就業者の数は減っていたのでは無いかとさえ思えてくる。

 しばらくダービースタリオンから離れていたという、自分と同世代のホースマンからも、Switch版発売をきっかけに、ソフトを購入したとの声が聞かれていた。しかも、自分もSwitch版を購入したことをFacebookにあげると、知り合いのホースマンやカメラマンから、「ブリーダーズカップ(プレイヤー同士の生産馬を戦わせるレース)をやりましょう!」との書き込みが何件もあった。

 それまでに最強馬を作らなければと思うのだが、残念なことに破産宣告の後、ゲーム内で2億円の借金を背負ってしまっている現状からすると、なかなか投資への意欲が沸いてこない。資金を増やすためには、馬券で儲けるという裏技もあるが、実際の馬券でさえからっきし駄目な自分が、ゲームの世界の馬券で財をなせるとは思えない。

 そもそも牧場経営を始めるのに、2,000万円の現金かつ、繁殖牝馬が1頭。そして繁殖厩舎だけでなく、出産からデビューまで何もしなくていい、イヤリングや育成施設までが揃っている総合牧場というのが、そもそもあり得ないのだ。とダービースタリオン初期からのコンセプトを、はなっから否定してしまったのはさておいて、毎月200万の返済に追われながら、少しでも賞金を稼ぐべくレース選択を行い、日々、「ローリスクハイリターン」の配合を考えている今のゲームスタイルの方が、僅かながらでもリアリティーがある気がする。

 とは言っても、実際に牧場を経営されている方からすれば、月々の経費に人件費が入っていないのがおかしいとか、あまりにも受胎率が良すぎる点など、自分以上にリアリティーからほど遠い世界なのかもしれない。それでも、リアリティーからほど遠くとも、馬の世界を限りなく近づけてくれているダービースタリオンは、これまでに競馬や牧場に興味が無かった人たちを、また引き込んでくれるツールともなり得る。このSwitch版が大ヒットしてくれて、数年後、「ダービースタリオンを通して、馬の仕事をしてみようと思いました」という若きホースマンが増えて欲しい。