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北海道馬産地ファイターズ

村本浩平 北海道馬産地ファイターズ

第162回 『ゴールデンカムイ』

 コミックス29巻での累計発行部数が1,900万部を突破。この後には第30巻、そして第31巻の発売も控えており、間違いなく2,000万部を超えるであろう大ヒット漫画が、週刊ヤングジャンプに掲載されていた、『ゴールデンカムイ』である。原作者の野田サトルさんは、北海道北広島市出身。この漫画の主人公である杉元佐一は、屯田兵となった自分の曽祖父をモデルとしている。

 その杉元と、この漫画のヒロインでもあるアシリパが、明治後期の北海道を舞台に、アイヌの残した埋蔵金を探し求める、『冒険・歴史・文化・狩猟グルメGAG&LOVE! ホラー』漫画(22巻の紹介文より抜粋)なのだが、この説明を読んでもなんのこっちゃ分からない、という方に朗報である。実は作者の野田さんは、「無料で読んで頂いたとしても単行本を集めて、何度も読み返したくなる作品だという自信があるからです」とのことで、なんと全話をWEBコミックで無料公開したのだ。

 マンガ喫茶などでだいたいのストーリーを追っていた自分も、この際にとゴールデンウィーク中に全話読み返してみたのだが、確かに「冒険・歴史・文化・狩猟グルメGAG&LOVE! ホラー」の要素が全て詰まった、素晴らしい漫画であることを再認識した。

 とここまで、全く競馬の話が出ていないではと思った皆さん、ここからが本題である。作者の野田さんは物語の題材となっているアイヌ文化を正しく伝えるべく、様々な参考資料に目を通しただけでなく、アイヌ語研究の第一人者である大学教授に監修を依頼。それどころか平取町を始めとして、全道へ取材に赴き、正確な描写を行っていった。その『ゴールデンカムイ』の中で、苫小牧勇払地区に存在していた、苫小牧競馬場での競馬を題材にした回(第61話蝦夷地ダービー~第62話替え玉騎手キロランケ)がある。

 この2話では白石由竹という、この作品のムードメーカー的なキャラクターが、占いを得意とする、インカラマッというアイヌの女性に勝ち馬を占ってもらい、その結果を元に資金を増やしていくも...という、誰もが想定するオチが待っている。

 実は白石というキャラクターは大の競馬好きであり、その前には札幌でも競馬で散財したというエピソードが描かれていた。

 さて、その2話ではアシリパと関係の深い、キロランケという幼いころから馬に親しんできたキャラクターがひょんなことから、レースに騎乗。関係者からは八百長を頼まれるも、馬の勝ちたいという気持ちを尊重し、出遅れもなんのその、果敢に追い上げていき、ゴール前では...という胸熱な展開となっている。

 その際、野田さんはレースの描写も行っているのだが、他の騎手たちが『天神乗り』で騎乗していたのに対して、『モンキー乗り』をしているという描写があった。

 モンキー乗りの発祥地となったのはアメリカとされており、その後、1980年代後半のイギリスでアメリカの騎手が披露したのち、ヨーロッパ各国へ広がっていったとされている。

 日本で初めてモンキー乗りを行ったのは、1900年初頭に来日したオーストラリア人の騎手とされる。モンキー乗りを大きく広めたのは1958年のアメリカ遠征を機に騎乗フォームを改造。そこから、3年連続でリーディングジョッキーとなった保田隆芳騎手である。

 つまり、『ゴールデンカムイ』で描かれている明治後期には、モンキー乗りをしている騎手は日本にいない!と重箱の隅を楊枝でほじくるツッコミをしたいわけではない。

 作者の野田さんが物語の演出として、モンキー乗りを重要なアクションとして据えたこと。何よりも迫力溢れるレースの描写などが、漫画家のこだわりというよりも、ひょっとしたら競馬好きなのでは?と思わされた。

 先述したように野田さんは、苫小牧競馬場の取材を行っただけでなく、北広島市出身ということからも、札幌競馬場に行ったことがあるのかもしれない。何より、知人や親戚に競馬関係者がいるという可能性も無くはない。

 野田さんは苫小牧を舞台とした、アイスホッケーを題材とした『スピナマラダ!』という漫画も執筆されていた。
『ゴールデンカムイ』もそうだが、続けて生まれ故郷である北海道を題材とした作品を書かれており、いつかは競馬についても、その見事な画力と、読むものを飽きさせないストーリー展開で描いてくれないかと思うばかりである。

 ちなみに『ゴールデンカムイ』の週刊ヤングジャンプ上での連載は4月28日号で最終回を迎えている。そして残念なことに、WEBコミックでの無料公開も5月8日までとなっているのだ。レースの決着や物語の結末を知りたいのならば、全31巻のコミックスを揃えるのが賢明と言えそうだ。