北海道馬産地ファイターズ
第163回 『競馬知名度アンケート』
2022.07.15
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先日、北海道内の民放局が始めた、競馬のYouTubeチャンネルに出演してきた。競馬好きのアナウンサーとディレクターが中心となって始めたこのチャンネルは、GⅠ週におけるレースの予想が受けているのか、それなりの再生回数を集めている。
その中でも再生回数がずば抜けて多いのが、ダービー前にアップされるPOG情報。昨年に引き続き、そのゲストとして呼んでいただけたのだが、今回はレギュラーで出演しているアナウンサーが別のロケで不参加。その代わりに、昨年、入社したばかりの女性アナウンサーがアシスタントを務めた。
札幌生まれ、そして札幌市内の大学を卒業している女子アナウンサーが、どこまで競馬の知識があるのだろうかと思い、打ち合わせで色々と質問をしてみた。すると、競馬場でレースを見たのは、このチャンネルのロケで訪れた門別競馬場が初めてだという。
続いて知っている馬を尋ねたところ、ディープインパクトは聞き覚えがあるものの、現在の競馬界におけるアイドルホースと言える、ソダシは知らないと首を傾げた。その他には武豊騎手はテレビで見たことがある一方で、同じように、テレビでも取り上げられる機会が多かった藤田菜七子騎手については、「すみませんが、存じて無いですね...」と申し訳なさそうに返してきた。
だがウマ娘は理解していたというか、実際にアプリをダウンロードしてはいないものの、それが競馬ゲームであることは理解していた。
それぐらいの理解力にかかわらず、もっと面倒くさいPOGの収録に立ち合わせたのは、可哀そうだなあと思っていたところ、コメントを返しながらも、僅かな時間を見つけては熱心にメモを取っていた。収録の後には、「ハーツクライとハービンジャー(GB)の名前を覚えました!」と笑顔を向けてくれた時には、ビギナーズセミナーの講師だった頃を思い出した。
その数日後、ノーザンホースパークマラソンの取材に出かけてきた。この大会で最も写真映えするのは、ノーザンファーム空港の屋内直線坂路を駆け上がってくる誘導馬とランナーたち。今年もその写真を撮ろうと、坂路の頂上にある、通称「坂路小屋」に向かうと、そこにはボランティアに来ていた女子高生がポツンと立っていた。
一人で見ず知らずの場所に取り残されたのが寂しかったのか、笑顔だけが取り柄の50歳おじさんから、「大変な場所に来ちゃったね」と話を向けられると、「一緒に来た友達とも離れ離れになっちゃいました」と表情をほころばせる。苫小牧市内の高校に通っているその女子高生だが、両親だけでなく、知人にも競馬関係者はおらず、しかも家のテレビでも競馬を見た記憶はないという。
このボランティアを選んだ理由を聞くと、「学校の"活動として"にボランティアと書けますし、そして、このアウターも貰えるからいいかなあと思って」とスタッフが着用する、お洒落なウインドブレーカーを色々な角度から見せてくれた。
ここは競馬アンケートだ!と思い、ディープインパクト、ソダシ、武豊...といった様々な単語をぶつけて見たものの、やはり、いい反応は返ってこなかった。そのうち、誘導馬が坂路の入り口に姿を見せ、しばらくしてから全長900㍍かつ、最大斜度が7%という急勾配を選手たちが駆けあがってくる。
その女子高生から、「どんな言葉をかけたらいいですか?」と聞かれたので、とりあえず、頑張れ!と言ってみようと話すと、その女子高生は素直に選手たちにエールを送り続けていった。
こんな見ず知らずのおじさんの言葉を受け止めてくれるだなんて、さそがし立派なご両親の教育が良かったのだろうなあと胸を熱くしていた矢先、突然、「あ、ウマ娘の人だ!」とその女子高生が驚いたような声を出した。
確かに坂路を駆け上がってくるのはウマ娘のコスプレをした、ウマ娘ならぬウマお兄さん。女子高生から頑張れ!と声をかけられたウマお兄さんは、笑顔で大きく手を振りながら、我々の前を通り過ぎていった。その後、競馬は知らないみたいだけど、ウマ娘は知っているんだね、と女子高生に話を向けると、「遊んでいる同級生もいますし、テレビでCMもやっていますよね」と意外な競馬との接点を話してくれた。
このコラムでもウマ娘について取り上げたが、その後もブームは続いており、競馬を知らない層への更なる認知にも繋がっている。それでもウマ娘に抵抗があるホースマンがいるのも事実であり、それを無理に覆そうとは思わない一方で、業界として、この認知度を生かさない手は無いとも思うのだが...。
その中でも再生回数がずば抜けて多いのが、ダービー前にアップされるPOG情報。昨年に引き続き、そのゲストとして呼んでいただけたのだが、今回はレギュラーで出演しているアナウンサーが別のロケで不参加。その代わりに、昨年、入社したばかりの女性アナウンサーがアシスタントを務めた。
札幌生まれ、そして札幌市内の大学を卒業している女子アナウンサーが、どこまで競馬の知識があるのだろうかと思い、打ち合わせで色々と質問をしてみた。すると、競馬場でレースを見たのは、このチャンネルのロケで訪れた門別競馬場が初めてだという。
続いて知っている馬を尋ねたところ、ディープインパクトは聞き覚えがあるものの、現在の競馬界におけるアイドルホースと言える、ソダシは知らないと首を傾げた。その他には武豊騎手はテレビで見たことがある一方で、同じように、テレビでも取り上げられる機会が多かった藤田菜七子騎手については、「すみませんが、存じて無いですね...」と申し訳なさそうに返してきた。
だがウマ娘は理解していたというか、実際にアプリをダウンロードしてはいないものの、それが競馬ゲームであることは理解していた。
それぐらいの理解力にかかわらず、もっと面倒くさいPOGの収録に立ち合わせたのは、可哀そうだなあと思っていたところ、コメントを返しながらも、僅かな時間を見つけては熱心にメモを取っていた。収録の後には、「ハーツクライとハービンジャー(GB)の名前を覚えました!」と笑顔を向けてくれた時には、ビギナーズセミナーの講師だった頃を思い出した。
その数日後、ノーザンホースパークマラソンの取材に出かけてきた。この大会で最も写真映えするのは、ノーザンファーム空港の屋内直線坂路を駆け上がってくる誘導馬とランナーたち。今年もその写真を撮ろうと、坂路の頂上にある、通称「坂路小屋」に向かうと、そこにはボランティアに来ていた女子高生がポツンと立っていた。
一人で見ず知らずの場所に取り残されたのが寂しかったのか、笑顔だけが取り柄の50歳おじさんから、「大変な場所に来ちゃったね」と話を向けられると、「一緒に来た友達とも離れ離れになっちゃいました」と表情をほころばせる。苫小牧市内の高校に通っているその女子高生だが、両親だけでなく、知人にも競馬関係者はおらず、しかも家のテレビでも競馬を見た記憶はないという。
このボランティアを選んだ理由を聞くと、「学校の"活動として"にボランティアと書けますし、そして、このアウターも貰えるからいいかなあと思って」とスタッフが着用する、お洒落なウインドブレーカーを色々な角度から見せてくれた。
ここは競馬アンケートだ!と思い、ディープインパクト、ソダシ、武豊...といった様々な単語をぶつけて見たものの、やはり、いい反応は返ってこなかった。そのうち、誘導馬が坂路の入り口に姿を見せ、しばらくしてから全長900㍍かつ、最大斜度が7%という急勾配を選手たちが駆けあがってくる。
その女子高生から、「どんな言葉をかけたらいいですか?」と聞かれたので、とりあえず、頑張れ!と言ってみようと話すと、その女子高生は素直に選手たちにエールを送り続けていった。
こんな見ず知らずのおじさんの言葉を受け止めてくれるだなんて、さそがし立派なご両親の教育が良かったのだろうなあと胸を熱くしていた矢先、突然、「あ、ウマ娘の人だ!」とその女子高生が驚いたような声を出した。
確かに坂路を駆け上がってくるのはウマ娘のコスプレをした、ウマ娘ならぬウマお兄さん。女子高生から頑張れ!と声をかけられたウマお兄さんは、笑顔で大きく手を振りながら、我々の前を通り過ぎていった。その後、競馬は知らないみたいだけど、ウマ娘は知っているんだね、と女子高生に話を向けると、「遊んでいる同級生もいますし、テレビでCMもやっていますよね」と意外な競馬との接点を話してくれた。
このコラムでもウマ娘について取り上げたが、その後もブームは続いており、競馬を知らない層への更なる認知にも繋がっている。それでもウマ娘に抵抗があるホースマンがいるのも事実であり、それを無理に覆そうとは思わない一方で、業界として、この認知度を生かさない手は無いとも思うのだが...。