北海道馬産地ファイターズ
第164回 『声』
2022.08.17
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コロナ禍以降となってからは、3年ぶりにJRA北海道シリーズ開催中の函館競馬場へ行ってきた。
函館競馬場は7月2日から指定席や入場券のネット予約に加えて、当日現金発売入場券を購入しての入場も可能となっている。とはいっても抽選に当選したり、朝早くから入場券売り場の前に並んだわけではない。7月から函館、福島、小倉と各競馬場でビギナーズセミナーが再開。その講師として競馬場内へ入場することができたのだ。
打ち合わせもあったので、開門の前から入場すると、そのままスタンドへと足を向ける。目の前にはそびえたつ函館山と、その左右に広がる函館湾。自分が初めて実際に競馬を見た場所が函館競馬場であり、この仕事を始めてからは、取材、そしてビギナーズセミナーの講師と、毎年のように通い続けてきた。
様々な思いが頭をよぎっていたのもあり、そのままぼーっとコースを眺めていると、スタッフの方から呼び出しの電話が鳴った。入場口の近くにあるセミナーブースの方に向かって歩き出すと、ちょうど入場が始まったらしく、自分の反対方向からファンの皆さんが、スタンド方面へと小走りで向かっていった。
セミナーの間には、レースやパドックを見に行った。懐かしいというよりも、この感覚を取り戻せたのが嬉しかった。ただ、以前と違うのは、「大きな声を出しての観戦はお控えください」との場内アナウンスをたびたび耳にするように、声を出すのがはばかられる雰囲気となっていたことだった。
とはいっても、驚きや感動といった感情を抑えきれない声は、競馬場内の様々な場所から聞こえていた。例えば、ゴール前の叩き合いには、「差せ!」との言葉もマスク越しに聞こえてくれば、スローモーションで映し出されるスリット写真では、拍手だけでなく、「ああ!」といった嘆きに近い声も耳にした。
また、筆者が函館競馬場に行った日には、白毛馬のアオラキがデビューしていたのだが、パドックでは、「白いなあ」との言葉が様々な場所で飛び交っていた。
そしてこの日、大歓声ならぬ小歓声が聞こえたのが、CBC賞でテイエムスパーダのゴールの瞬間だった。鞍上の今村聖奈騎手は、これが女性騎手としては史上初となる、重賞初騎乗初制覇で、勝ち時計の1分5秒8は芝1200㍍の日本レコード。驚愕の事実の連続に、思わず感嘆の声が出てしまうのは致し方ないと言える。
その一方で、競馬場に来たファンが意識して声を出していたのが、今年の日本ダービーと言えた。
ドウデュースに騎乗した武豊騎手が、6度目となる日本ダービー制覇を果たしたのだが、ウイニングランをしながらスタンドへと戻ってくる人馬を称える拍手だけでなく、自宅でテレビ観戦していた自分にも、画面越しにユタカコールが聞こえていた。
だからといって、ユタカコールをしたファンをとがめたいわけではない。素晴らしいレースを見せてもらった後に、ファンが感謝を伝えるべく、コールを送りたい気持ちはファンの1人としてよく分かる。その人数が少しだけ多かったばかりに、競馬場内にユタカコールがこだましてしまったのだろう。
一方、他のプロスポーツを見ると、野球では一球一打に歓声が聞こえてくるのが当たり前となっていれば、サッカーではチャントが聞こえてくる試合もある。その一方で浦和レッズのサポーターが、『Jリーグ新型コロナウイルス感染症対応ガイドライン』に違反する、大声を出しての応援行為をしたことで、チームに2,000万円の罰金が課せられる可能性も出てきた。
これは会場の収容率が50%、あるいは5,000人までならば、大声を出してのイベントが可能となった一方で、それ以上の収容率や、5,000人以上の入場者数がある場合には、感情を伝える手段は拍手だけとなる。
浦和レッズがホームゲームを行う埼玉スタジアムは、収容定員の上限といっても2万人が入場することができる。そこで無意識の声はなく、チャントのように意識した声が聞こえてくるのは、さすがにおとがめ無しとはいかなかったのだろう。
競馬も入場制限の緩和が行われており、日本ダービー当日には6万2,364人の入場者があった。本来ならばコールなんてもっての外かもしれない。それでも各自が節度を持って、正しく予防をしていけば、いつか、声を出しての競馬観戦を楽しめる日はくるはず。その時は明確な意思を持って勝者を称えたい。
函館競馬場は7月2日から指定席や入場券のネット予約に加えて、当日現金発売入場券を購入しての入場も可能となっている。とはいっても抽選に当選したり、朝早くから入場券売り場の前に並んだわけではない。7月から函館、福島、小倉と各競馬場でビギナーズセミナーが再開。その講師として競馬場内へ入場することができたのだ。
打ち合わせもあったので、開門の前から入場すると、そのままスタンドへと足を向ける。目の前にはそびえたつ函館山と、その左右に広がる函館湾。自分が初めて実際に競馬を見た場所が函館競馬場であり、この仕事を始めてからは、取材、そしてビギナーズセミナーの講師と、毎年のように通い続けてきた。
様々な思いが頭をよぎっていたのもあり、そのままぼーっとコースを眺めていると、スタッフの方から呼び出しの電話が鳴った。入場口の近くにあるセミナーブースの方に向かって歩き出すと、ちょうど入場が始まったらしく、自分の反対方向からファンの皆さんが、スタンド方面へと小走りで向かっていった。
セミナーの間には、レースやパドックを見に行った。懐かしいというよりも、この感覚を取り戻せたのが嬉しかった。ただ、以前と違うのは、「大きな声を出しての観戦はお控えください」との場内アナウンスをたびたび耳にするように、声を出すのがはばかられる雰囲気となっていたことだった。
とはいっても、驚きや感動といった感情を抑えきれない声は、競馬場内の様々な場所から聞こえていた。例えば、ゴール前の叩き合いには、「差せ!」との言葉もマスク越しに聞こえてくれば、スローモーションで映し出されるスリット写真では、拍手だけでなく、「ああ!」といった嘆きに近い声も耳にした。
また、筆者が函館競馬場に行った日には、白毛馬のアオラキがデビューしていたのだが、パドックでは、「白いなあ」との言葉が様々な場所で飛び交っていた。
そしてこの日、大歓声ならぬ小歓声が聞こえたのが、CBC賞でテイエムスパーダのゴールの瞬間だった。鞍上の今村聖奈騎手は、これが女性騎手としては史上初となる、重賞初騎乗初制覇で、勝ち時計の1分5秒8は芝1200㍍の日本レコード。驚愕の事実の連続に、思わず感嘆の声が出てしまうのは致し方ないと言える。
その一方で、競馬場に来たファンが意識して声を出していたのが、今年の日本ダービーと言えた。
ドウデュースに騎乗した武豊騎手が、6度目となる日本ダービー制覇を果たしたのだが、ウイニングランをしながらスタンドへと戻ってくる人馬を称える拍手だけでなく、自宅でテレビ観戦していた自分にも、画面越しにユタカコールが聞こえていた。
だからといって、ユタカコールをしたファンをとがめたいわけではない。素晴らしいレースを見せてもらった後に、ファンが感謝を伝えるべく、コールを送りたい気持ちはファンの1人としてよく分かる。その人数が少しだけ多かったばかりに、競馬場内にユタカコールがこだましてしまったのだろう。
一方、他のプロスポーツを見ると、野球では一球一打に歓声が聞こえてくるのが当たり前となっていれば、サッカーではチャントが聞こえてくる試合もある。その一方で浦和レッズのサポーターが、『Jリーグ新型コロナウイルス感染症対応ガイドライン』に違反する、大声を出しての応援行為をしたことで、チームに2,000万円の罰金が課せられる可能性も出てきた。
これは会場の収容率が50%、あるいは5,000人までならば、大声を出してのイベントが可能となった一方で、それ以上の収容率や、5,000人以上の入場者数がある場合には、感情を伝える手段は拍手だけとなる。
浦和レッズがホームゲームを行う埼玉スタジアムは、収容定員の上限といっても2万人が入場することができる。そこで無意識の声はなく、チャントのように意識した声が聞こえてくるのは、さすがにおとがめ無しとはいかなかったのだろう。
競馬も入場制限の緩和が行われており、日本ダービー当日には6万2,364人の入場者があった。本来ならばコールなんてもっての外かもしれない。それでも各自が節度を持って、正しく予防をしていけば、いつか、声を出しての競馬観戦を楽しめる日はくるはず。その時は明確な意思を持って勝者を称えたい。