第5コーナー ~競馬余話~
第9回 天皇賞のこぼれ話
2008.12.25
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秋の天皇賞はゴール前,ウオッカとダイワスカーレットの壮絶な競り合いになった。1着ウオッカと2着ダイワスカーレットの着差は,わずか2センチ。競馬ファンはいまだに,あのレースから受けた刺激にしびれているようだ。久しぶりに会う友人とは「天皇賞,見た?」が合言葉のようになっている。
歴史的な名勝負と評価される,このレースではいくつかの記録が生み出された。
まずはウオッカの優勝タイムだ。1分57秒2は,シンボリクリスエスが同じく2003年秋の天皇賞で記録した1分58秒0を,0秒8も更新する東京競馬場,芝2000メートルのコースレコードとなった。また秋の天皇賞で,牝馬が1,2着を独占したのは1958年にセルローズとミスオンワードが達成して以来50年ぶりという快挙だった。
ウオッカはこれでG1競走4勝目。2歳時の阪神ジュベナイルフィリーズに始まり,3歳時のダービー,4歳時の安田記念,そして天皇賞・秋とビッグタイトルをそろえた。
1984年に,日本中央競馬会(JRA)が重賞レースの格付けをするグレード制を導入してから,G1競走の最多勝はシンボリルドルフ,テイエムオペラオー,ディープインパクトの3頭が記録した7勝。それに続くのがナリタブライアン,メジロドーベル,ダイワメジャーの5勝だ。G㈵競走4勝馬はウオッカのほかにはオグリキャップ,メジロマックイーン,トウカイテイオー,マヤノトップガン,タイキシャトル,グラスワンダー,スペシャルウィーク,アグネスデジタル,シンボリクリスエス,メイショウサムソンと10頭しかいない。
ウオッカのすごいところはG1競走4勝のうち3勝を東京競馬場で挙げていることだ。東京競馬場でG1競走3勝しているのは,過去にヤマニンゼファー(安田記念2勝,天皇賞・秋),スペシャルウィーク(ダービー,天皇賞・秋,ジャパンカップ),アグネスデジタル(天皇賞・秋,フェブラリーS,安田記念)の3頭しかいない。しかもウオッカの場合,ダービー(2400メートル),安田記念(1600メートル),天皇賞・秋(2000メートル)と東京競馬場の「芝の基本距離」で優勝している。これは史上初の快挙でもある。さらにいえば,3勝すべてが牡馬を相手にしての勝利。こんな牝馬には,今後もしばらくはお目にかかれないのではないだろうか。現役の間によく目に焼き付けておきたい。
隠れた記録としては,配当でG1競走史上初の出来事もあった。今回の天皇賞・秋では,単勝,枠連,馬連,馬単,3連複,3連単と5つの券種が1番人気で決着し,複勝とワイドは1,2,3番人気となった。8種類すべての馬券が人気通りに的中したということだ。
最も新しい馬券の3連単馬券が発売されたのは2004年。初めて3連単が発売されたスプリンターズSから,今回の天皇賞・秋まで合計91のG1競走が終わったが,今回のように3連単が1番人気で決着したのは,3度目だった。最初は05年のオークスで1着シーザリオ,2着エアメサイア,3着ディアデラノビアで3連単4−5−9は3330円の配当になった。次は今年のスプリンターズS。1着スリープレスナイト,2着キンシャサノキセキ,3着ビービーガルダンという決着になり,3連単の14−15−13は5530円の配当となった。今回は1着ウオッカ,2着ダイワスカーレット,3着ディープスカイで3連単14−7−2は3250円だった。しかし,天皇賞以外の2レースはほかの券種が1番人気とはならなかった。
かねて僕は日本の競馬ファンの馬券のうまさに舌を巻いているが,20万センチ(2000メートル)走った末に,ウオッカとダイワスカーレットとの間にできた差は,たったの2センチ。10万分の1の違いを見分けて,すべて1番人気という馬券を的中させた日本の競馬ファンの「眼力」に改めて敬服した。そういう意味でも,この秋の天皇賞は語り継がれることになると思う。
JBBA NEWS 2008年12月号より転載
歴史的な名勝負と評価される,このレースではいくつかの記録が生み出された。
まずはウオッカの優勝タイムだ。1分57秒2は,シンボリクリスエスが同じく2003年秋の天皇賞で記録した1分58秒0を,0秒8も更新する東京競馬場,芝2000メートルのコースレコードとなった。また秋の天皇賞で,牝馬が1,2着を独占したのは1958年にセルローズとミスオンワードが達成して以来50年ぶりという快挙だった。
ウオッカはこれでG1競走4勝目。2歳時の阪神ジュベナイルフィリーズに始まり,3歳時のダービー,4歳時の安田記念,そして天皇賞・秋とビッグタイトルをそろえた。
1984年に,日本中央競馬会(JRA)が重賞レースの格付けをするグレード制を導入してから,G1競走の最多勝はシンボリルドルフ,テイエムオペラオー,ディープインパクトの3頭が記録した7勝。それに続くのがナリタブライアン,メジロドーベル,ダイワメジャーの5勝だ。G㈵競走4勝馬はウオッカのほかにはオグリキャップ,メジロマックイーン,トウカイテイオー,マヤノトップガン,タイキシャトル,グラスワンダー,スペシャルウィーク,アグネスデジタル,シンボリクリスエス,メイショウサムソンと10頭しかいない。
ウオッカのすごいところはG1競走4勝のうち3勝を東京競馬場で挙げていることだ。東京競馬場でG1競走3勝しているのは,過去にヤマニンゼファー(安田記念2勝,天皇賞・秋),スペシャルウィーク(ダービー,天皇賞・秋,ジャパンカップ),アグネスデジタル(天皇賞・秋,フェブラリーS,安田記念)の3頭しかいない。しかもウオッカの場合,ダービー(2400メートル),安田記念(1600メートル),天皇賞・秋(2000メートル)と東京競馬場の「芝の基本距離」で優勝している。これは史上初の快挙でもある。さらにいえば,3勝すべてが牡馬を相手にしての勝利。こんな牝馬には,今後もしばらくはお目にかかれないのではないだろうか。現役の間によく目に焼き付けておきたい。
隠れた記録としては,配当でG1競走史上初の出来事もあった。今回の天皇賞・秋では,単勝,枠連,馬連,馬単,3連複,3連単と5つの券種が1番人気で決着し,複勝とワイドは1,2,3番人気となった。8種類すべての馬券が人気通りに的中したということだ。
最も新しい馬券の3連単馬券が発売されたのは2004年。初めて3連単が発売されたスプリンターズSから,今回の天皇賞・秋まで合計91のG1競走が終わったが,今回のように3連単が1番人気で決着したのは,3度目だった。最初は05年のオークスで1着シーザリオ,2着エアメサイア,3着ディアデラノビアで3連単4−5−9は3330円の配当になった。次は今年のスプリンターズS。1着スリープレスナイト,2着キンシャサノキセキ,3着ビービーガルダンという決着になり,3連単の14−15−13は5530円の配当となった。今回は1着ウオッカ,2着ダイワスカーレット,3着ディープスカイで3連単14−7−2は3250円だった。しかし,天皇賞以外の2レースはほかの券種が1番人気とはならなかった。
かねて僕は日本の競馬ファンの馬券のうまさに舌を巻いているが,20万センチ(2000メートル)走った末に,ウオッカとダイワスカーレットとの間にできた差は,たったの2センチ。10万分の1の違いを見分けて,すべて1番人気という馬券を的中させた日本の競馬ファンの「眼力」に改めて敬服した。そういう意味でも,この秋の天皇賞は語り継がれることになると思う。
JBBA NEWS 2008年12月号より転載