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第125回 「至宝」

2021.08.11
 名馬ガリレオGalileo(IRE)が死んだ。
 現役時代に英、アイルランド両ダービーを含めGⅠ3勝を挙げ、引退後は英ダービー馬5頭を送り出し、種牡馬としても大成功したガリレオが天国に旅立ったのは7月10日。左前脚の故障が慢性化したため安楽死の処分がとられた。23歳だった。

 大種牡馬のサドラーズウェルズSadler's Wells(USA)を父に持ち、母は凱旋門賞優勝のアーバンシーUrban Sea(USA)という超良血だった。1998年に生まれたガリレオは、2000年10月にデビューすると連戦連勝。翌年6月の英ダービーを制し、続くアイルランドダービーも快勝した。初めて古馬と顔を合わせたキングジョージ6世&クイーンエリザベスDSでも当時の最強馬ファンタスティックライト(USA)に2馬身差をつけて優勝した。デビューからの連勝は「6」になった。その後、アイルランドと米国で2連敗。通算8戦6勝の成績を残し、3歳いっぱいで現役を退いた。

 ガリレオが真価を発揮したのは現役時代よりむしろ種牡馬になってからだった。2003年生まれの初年度産駒からいきなりGⅠ馬が生まれた。2006年5月、カラ競馬場で行われた日本の桜花賞に当たるアイルランド1000ギニーでナイタイムNightime(IRE)が優勝した。ナイタイムは繁殖牝馬になってから欧州年度代表馬ガイヤースGhaiyyath(IRE)の母になった。

 ガリレオはその後も毎年のように良駒を送り出した。2008年にニューアプローチNew Approach(IRE)、2013年にルーラーオブザワールドRuler of The World(IRE)、2014年にオーストラリアAustralia(GB)、2019年にアンソニーヴァンダイクAnthony Van Dyck(IRE)、2020年にサーペンタインSerpentine(IRE)が父と同じく英ダービーを制した。英ダービーで5頭もの優勝馬の父になったのはガリレオが初めてだった。ニューアプローチは2018年優勝のマサーMasar(IRE)の父になっており、ガリレオ→ニューアプローチ→マサーと父子3代の英ダービー制覇も達成している。

 2020年までに英国(アイルランドを含む)で11年連続を含む12度のリーディングサイアーになったガリレオだが、同年6月には歴代記録も更新した。アイルランド1000ギニーで産駒のピースフルPeaceful(IRE)が優勝し、ガリレオにとって85頭目のGⅠ馬となったのだ。これはデインヒル(USA)と並んでいた84頭の記録を更新する歴代最多記録になった。その後もガリレオ産駒のGⅠ馬は着々と増え続け、2021年7月18日現在、92頭に達した。

 ガリレオの遺伝力は母の父としても発揮されている。今年の7月17日にはカラ競馬場で行われたアイルランドオークスでディープインパクト産駒のスノーフォールSnowfall(JPN)が優勝した。英オークスに次ぐGⅠ2連勝だ。スノーフォールの母ベストインザワールド(IRE)は父ガリレオ、母レッドイーヴィーRed Evie(IRE)という血統だ。全姉のファウンドFound(IRE)は2016年の凱旋門賞を制した名馬だった。アイルランドの競馬組織クールモアはそんなトップクラスの牝馬を日本に送った。ディープインパクトの遺伝子を求めてのものだ。父ディープインパクト、母の父ガリレオという日本と欧州のそれぞれの最高の血統が巡り合い、大きな成果を残しつつある。

 数多くの名馬の父となったガリレオではあるが、その最高傑作といえば、やはりフランケルFrankel(GB)だろう。

 英2000ギニーを含め現役時代は14戦14勝。うちGⅠは10勝という、ものすごい成績だった。当然ガリレオの影響は日本にも及んでいる。ガリレオの遺伝子を受け継ぎ、JRAで重賞勝ちを収めた馬は計13頭を数えるが、GⅠ馬の3頭ソウルスターリング、モズアスコット(USA)、グレナディアガーズはいずれもフランケル産駒だ。スピード能力が必要な日本の競馬でも、中距離で絶対的な強さを発揮したフランケルの特長は生かされるようだ。今後もガリレオの偉大さを日本に伝えるのはフランケルを通してということになりそうだ。

 それにしても近年、国内外で大種牡馬の死が相次ぐ。ディープインパクト、キングカメハメハ、そしてガリレオ。種牡馬の世代交代が一気に進みそうだ。
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