北海道馬産地ファイターズ
第97回 『高齢化競馬』
2017.01.10
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契約更改のお知らせ。「JBBA NEWS」で「馬産地ファイターズ」を連載中の村本浩平氏ですが、来年度の契約を更新したことをお知らせいたします。
以下、村本氏のコメント。「北海道日本ハムファイターズの日本一を期に、この連載も一区切りなのではと思っていましたが、フロント、いや事務局からは、『ここまで来たら背番号100番を目指して欲しい』との温かい言葉をいただきました。以前から懸念していた背番号100超え(プロ野球では育成選手が付ける背番号)が確実となったわけですが、育成選手のような向上心を持って、JBBA NEWSの勝利、いや、読者の皆様に少しでも癒やしを届けられるように執筆を頑張っていく所存です」というわけで(ちなみに昨年のコラムとほぼ、一緒の書き出し)、来年も引き続きコラムを執筆させていただけることになった。
ライターとして執筆を開始して以降、10年に迫るほどの長期連載をさせていただいているのは、この「JBBA NEWS」と「うまレター」だけである。両誌の関係者の方には頭が上がらないが、うまレターが競馬ファンを対象としたフリーペーパーである一方で、JBBA NEWSは主に生産関係者を対象としている業界誌。それだけに取材でお会いした生産者の方から、「読んでるよ」などの言葉をかけられるのは、圧倒的にJBBA NEWSが多い。読者の方に直接感想をもらえることは他ではほとんどなく、その度に、「また、面白いと思ってもらえるコラムを書こう」との気持ちが生まれていたのも事実である。
その積み重ねが、背番号100超えに繋がったと思うと感慨深くもなるが、このJBBA NEWSの執筆陣だけでなく、「優駿」や「競馬ブック」など、他に仕事をさせていただいている雑誌媒体を見ても、10年選手、いや、場合によっては20年も30年も第一戦で仕事をされている諸先輩の方々は珍しくない。ライター歴20年を超えた自分でさえ、この業界の中では、いまだに「若くない若手ライター」と言われている程だ。
これは自分より若手と言われる人材が、競馬業界(特に雑誌媒体)に入ってこないことも関係しているかと思われる。まあ、名乗った瞬間から誰でも始められる一方で、続けて行くことは非常に難しいライター業。しかも、競馬を専門とすると、執筆の場が限られてしまうのも事実である。
一方、生産界でもなかなか若手が出てこない。生産牧場の後継者が年々数を減らしている上に、新規創業者となると皆無に等しい。牧場が経営できるだけの敷地を購入し、繁殖牝馬を揃えるのも大変なのに、その他にも様々な経費が上乗せされるとなれば、個人で創業するのは不可能なのではと思えてくる。
以前、新規創業者の方にお話を聞かせてもらったことがあるが、務めていた生産牧場から厩舎を借り、繁殖牝馬もその牧場から譲ってもらったというものの、それでも、経営するためには充分な繋養頭数とは言えず、生産の傍ら、午前中は育成牧場のライダーとして仕事を行っていた。
若い担い手ならぬ、「若い馬券購入者」もそれほど増えていないように感じる。JRA北海道シリーズでは、ビギナーズアイの講師をさせてもらっているのだが、20代と思われる参加者は少なく、場内を回っても視界に入ってくるのは、競馬だけでなく、人生においても大先輩と呼べそうな方ばかりだった。
見方を変えれば、20代の若い競馬ファンは、講師から競馬新聞の見方や馬券の買い方を学ばなくとも、自分で情報や知識を得ているのかもしれない。それでも自分が20代の頃には、人生の大先輩に負けない程に、若い競馬ファンが競馬場やウインズに足を運び、馬産地にも観光客だけでなく、若きホースマンたちの姿もまだ見られたような気がする。
日本国内における人口統計を見る限り、競馬ブームを支えているのは、その頃に競馬に参加できるようになったベビーブーム世代という見方もできる。一方で現在、成人となっている世代は、第二次ベビーブームの約半分であり、競馬に対する興味も半分に減ってしまったと考えれば、競馬産業の停滞も納得せざるを得ない。
となると、現在の競馬ファンや競馬産業に属している、決して若くない若手が盛り上げていくしかないのだが、とはいえども、新たな人材を入れていかないと衰退に向かってしまうのは自明の理である。早く「若手ライター」の看板を外したいと思う一方で、育成選手のように活気溢れる仕事も、次代の若い担い手が後を継ぐまで、まだまだ頑張って行かなければと思う今日この頃。少しでも未来の競馬産業にとってプラスになるようにと心に据えながら、今後も「馬産地ファイターズ」で健筆を振るっていこうと思っている。というわけで、2017年もよろしくお願いします!
以下、村本氏のコメント。「北海道日本ハムファイターズの日本一を期に、この連載も一区切りなのではと思っていましたが、フロント、いや事務局からは、『ここまで来たら背番号100番を目指して欲しい』との温かい言葉をいただきました。以前から懸念していた背番号100超え(プロ野球では育成選手が付ける背番号)が確実となったわけですが、育成選手のような向上心を持って、JBBA NEWSの勝利、いや、読者の皆様に少しでも癒やしを届けられるように執筆を頑張っていく所存です」というわけで(ちなみに昨年のコラムとほぼ、一緒の書き出し)、来年も引き続きコラムを執筆させていただけることになった。
ライターとして執筆を開始して以降、10年に迫るほどの長期連載をさせていただいているのは、この「JBBA NEWS」と「うまレター」だけである。両誌の関係者の方には頭が上がらないが、うまレターが競馬ファンを対象としたフリーペーパーである一方で、JBBA NEWSは主に生産関係者を対象としている業界誌。それだけに取材でお会いした生産者の方から、「読んでるよ」などの言葉をかけられるのは、圧倒的にJBBA NEWSが多い。読者の方に直接感想をもらえることは他ではほとんどなく、その度に、「また、面白いと思ってもらえるコラムを書こう」との気持ちが生まれていたのも事実である。
その積み重ねが、背番号100超えに繋がったと思うと感慨深くもなるが、このJBBA NEWSの執筆陣だけでなく、「優駿」や「競馬ブック」など、他に仕事をさせていただいている雑誌媒体を見ても、10年選手、いや、場合によっては20年も30年も第一戦で仕事をされている諸先輩の方々は珍しくない。ライター歴20年を超えた自分でさえ、この業界の中では、いまだに「若くない若手ライター」と言われている程だ。
これは自分より若手と言われる人材が、競馬業界(特に雑誌媒体)に入ってこないことも関係しているかと思われる。まあ、名乗った瞬間から誰でも始められる一方で、続けて行くことは非常に難しいライター業。しかも、競馬を専門とすると、執筆の場が限られてしまうのも事実である。
一方、生産界でもなかなか若手が出てこない。生産牧場の後継者が年々数を減らしている上に、新規創業者となると皆無に等しい。牧場が経営できるだけの敷地を購入し、繁殖牝馬を揃えるのも大変なのに、その他にも様々な経費が上乗せされるとなれば、個人で創業するのは不可能なのではと思えてくる。
以前、新規創業者の方にお話を聞かせてもらったことがあるが、務めていた生産牧場から厩舎を借り、繁殖牝馬もその牧場から譲ってもらったというものの、それでも、経営するためには充分な繋養頭数とは言えず、生産の傍ら、午前中は育成牧場のライダーとして仕事を行っていた。
若い担い手ならぬ、「若い馬券購入者」もそれほど増えていないように感じる。JRA北海道シリーズでは、ビギナーズアイの講師をさせてもらっているのだが、20代と思われる参加者は少なく、場内を回っても視界に入ってくるのは、競馬だけでなく、人生においても大先輩と呼べそうな方ばかりだった。
見方を変えれば、20代の若い競馬ファンは、講師から競馬新聞の見方や馬券の買い方を学ばなくとも、自分で情報や知識を得ているのかもしれない。それでも自分が20代の頃には、人生の大先輩に負けない程に、若い競馬ファンが競馬場やウインズに足を運び、馬産地にも観光客だけでなく、若きホースマンたちの姿もまだ見られたような気がする。
日本国内における人口統計を見る限り、競馬ブームを支えているのは、その頃に競馬に参加できるようになったベビーブーム世代という見方もできる。一方で現在、成人となっている世代は、第二次ベビーブームの約半分であり、競馬に対する興味も半分に減ってしまったと考えれば、競馬産業の停滞も納得せざるを得ない。
となると、現在の競馬ファンや競馬産業に属している、決して若くない若手が盛り上げていくしかないのだが、とはいえども、新たな人材を入れていかないと衰退に向かってしまうのは自明の理である。早く「若手ライター」の看板を外したいと思う一方で、育成選手のように活気溢れる仕事も、次代の若い担い手が後を継ぐまで、まだまだ頑張って行かなければと思う今日この頃。少しでも未来の競馬産業にとってプラスになるようにと心に据えながら、今後も「馬産地ファイターズ」で健筆を振るっていこうと思っている。というわけで、2017年もよろしくお願いします!