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第99回 『求む、若きホースマン!』

2017.03.16
 競走馬生産・育成牧場就業応援サイトである「BOKUJOB」。そのコンテンツの1つである「先輩紹介」の取材、そして記事を担当させてもらっている。
 取材対象者の多くが20代の就業者であるが、時には10代でこの世界に飛び込んできたホースマンの話を聞かせてもらう機会もある。

 年齢的には子供といってもおかしくない10代の若者が、瞳を輝かせながら牧場就業の理由やこれからの夢などを話す度に、なんちゃってお父さんのような心境になった自分は、「大変な仕事だけど馬のために、そして君の夢のために頑張るんだよ!」とエールを送ってしまうことが多々ある。

 こうした若きホースマンたちの就業の理由として多いのが、「親(あるいは知人)が競馬好きで、TVでレースを見たり、実際に競馬場に行くうちに馬に接する仕事をしたくなった」というもの。当時は未成年だった自分が、ちょっとだけ大人気分を味わいたくて競馬を始めた動機とは違い、非常に健全であり、そのピュアさにもウルウルしてしまうのだが、いざ、馬の仕事をしようとした時に、どうしていいか分からなかったとの話も聞かれた。

 その意味で「BOKUJOB」は、「先輩紹介」の他にも、「牧場の一日」を通して仕事の内容を知ることができるなど、非常に優れたコンテンツであると言える。その一方で取材対象者の話を聞いていくと、ひょっとしたら「BOKUJOB」の存在を知ること無く、別の道を選んだ若者もいたのでは、とも思えてきた。

 ちなみに「馬の仕事」という検索ワードをGoogleに入力してみると、「馬の求人・馬業界就職ジャーナル」が一番上に表示され、「BOKUJOB」はその次となる。以下にも馬の仕事に関する結果が表示されるが、リンク先の仕事内容を見ると、初心者にはちんぷんかんぷんで、仕事の内容や条件を見て、尻込みしてしまうに違いない。

 というのも、こうした求人の多くが、即戦力の人材を対象としているからであろう。勿論、牧場の未来を託せる若きホースマンはどの牧場でも欲しいが、その一方ですぐにでも働いてくれる経験者が求められるくらいに人材が足りないのも、現在の生産界の現状である。

 将来性を見込んだ若きホースマンが、牧場にとって欠かせない人材となるのには時間がかかる。しかも、その間に様々な理由から牧場を辞めてしまうことも充分にあり得る。この繰り返しが、即戦力となる人材の不足に繋がっていったと言える。

 その中間とでもいうのか、年齢は若く、そして馬に接した経験も持ち合わせる即戦力となる人材が、JBBAの軽種馬生産育成技術者研修生、そしてBTCの育成調教技術者養成研修生と言える。実際に「先輩紹介」の取材でも、JBBAあるいはBTCの研修生から話を聞く機会が多かった。

 しかしながら、JBBAやBTCで研修が行われていることは、それほど認知されていないのではという気もしてくる。「馬 研修」のキーワードでGoogleを調べてみると、「BOKUJOB」のコンテンツの中に、「JBBA研修」と「BTC研修」が存在することが分かるが、そもそも馬の仕事を志した際に、研修させてくれる場所があることに気づかなければ、「馬 研修」のキーワードで検索はしないだろう。

 最近では「JBBA」や「BTC」以外にも、研修体験ができる牧場や乗馬施設、また、馬学や乗馬などを学べる学校など、馬の仕事を始めるための選択肢も広がっている。その中には本州にある施設も多く、いきなり馬産地に来なくとも、自分の生活圏とそれほど離れていない場所で、自分が馬の仕事に合っているのかを確かめられるようにもなっている。

 とはいえども、全国の高校もしくは中学校に、こうした研修制度があることや、学校紹介はほぼ行き届いていないだろう。今から約30年前、自分が道内の普通高校に通っていた頃は、求人案内の中に生産牧場もあったらしい。当時から競馬に興味があったとはいえ、その項目を目にした記憶が無く、実際に牧場に勤めた同級生もいなかった。「JBBA」や「BTC」の研修制度を知ったのも、この世界に飛び込んでからである。

 今や日本国民のほとんどが携帯端末を所有する時代。全国の学校に求人案内や学校紹介は出せなくとも、「馬 仕事」と検索した際に、「BOKUJOB」などのリンク先が一番上に表示されるようになれば、若者にとって馬の仕事はより近くなるのかもしれない。その上で研修制度や学校をはじめとした、馬の仕事を学べる機関が思ったより多いことを、業界全体で周知していかなれればいけない。

 追記 「先輩紹介」の取材者の中に「The LEGEND」のCMに感銘を受けて、この世界に飛び込んだという若者がいた。現在のCMが悪いとは言わないが、競馬や馬本来の魅力を伝えるCMを今後も作り続けて欲しい。
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