南関フリーウェイ
第104回 誘導馬ミューチャリー始動!
6月21日、地方競馬所属馬として初のJBCクラシック優勝馬となったミューチャリーが、誘導馬として新たな一歩を踏み出しました。今回は、記録も兼ねてこの日を振り返ってみました。
メインレースでの誘導を目標に組まれたスケジュールは、1Rから4Rまでが練習、休憩を挟んで9Rから馬場入りというもの。激しい気性のパイロを父に持つミューチャリー、現役引退からわずか3か月での誘導馬デビューです。
まずは1R。出走馬の最後尾から馬場方面に向かったミューチャリー。初心者マークを付け、タテガミにはピンクとミントグリーンの花飾り。カワイイ・・・と、馬場の入り口で立ち止まり、後ずさり。
この時のミューチャリーは場内の雰囲気に戸惑っていたそうですが、予告無しで行われた練習ということもあり、ミューチャリーを見つけたファンの皆さんも「!!」となっていた様子。ミューチャリーは鼻先をきゅっとした表情で、気持ちの整理をするかのように周回していました。
続いて2R。少しだけ馬場入りができるように。尻尾と頭を振り、立ち止まって周囲を見て、返し馬を見て・・・。この時のミューチャリーの表情を写真で見直してみると、口元と首にきゅっと力が入っています。それは、確かめて、納得し、受け入れるという、懸命に学ぶ表情そのものだった.。
3Rでは随分と落ち着きも出た印象で、課題に立ち向かうミューチャリーを励ますように、スタンドや業務エリアから、あたたかい眼差しが向けられていました。
そして、練習最後の4Rには馬場入りをクリア。返し馬をしていく出走馬たちを前にしても、入れ込むことなく駐立。そのミューチャリーに手を添え、励まし、安心させながら一歩一歩進めていった騎乗スタッフの姿も、この日の記憶として残しておきたい光景でした。
さて、ミューチャリーを管理していた矢野義幸調教師は、というと、この日は管理馬の出走が目白押しで、ゆっくりとミューチャリーの練習風景を見ることは叶わず。その後、「最初は心配したけど、飲み込みは早いようだったし無事に務められて良かった。これからも皆さんに愛されてほしいですね。またミューチャリーの好物のクローバーを持っていきますよ」と語ってくださいました。
9Rの前には貴重なツーショットも。10Rに騎乗する今村聖奈騎手(JRA)が、馬場に出て砂の状態をチェック。ゴール付近を歩き、入念な下調べを行っていました。その後、ミューチャリーと今村騎手が遭遇。鞍上のスタッフと会話をした後、ミューチャリーの鼻先を撫でて笑顔を見せた今村騎手。周囲も、「いいね」と和やかな雰囲気になりました。
その今村騎手は船橋競馬場・初騎乗初勝利。ミューチャリーについては「地方競馬の最前線でJRA勢とも戦ってきた馬。誘導初日でもさすがに堂々としているなと思いました」とのことでした。
そして、いよいよ本番、メインレース準重賞短夜賞。ミューチャリーは大先輩のタカラスノーウェーブに従って馬場へ。出走馬の多くは誘導馬が向かうゴール方向へは行かず、待機所がある1コーナー方向へ。それでも何頭かは誘導馬について馬場入り。ミューチャリーはスタンドのファンの前で立ち止まるサービスもできるようになり、無事に目標を達成しました。
この日の記録として、先輩誘導馬の頼もしさも忘れてはいけません。馬場見せの練習をしているミューチャリーのもとにチャラオが近づき、まるで「ミューチャリーくん、大丈夫。安心してかっこいいボクについてくればいいんだよ」というように、すました顔をして悠々と先導。誘導馬になったばかりの頃にスタッフの隙をついて脱走し、所属していた岡林厩舎に戻ってしまったあのチャラオが・・・と、改めて成長を見続ける楽しみを感じました。
もうひとつ記録しておきましょう。この日のミューチャリーは、かなり短めの前髪だった模様。メンコの下にそんな愛らしい素顔も潜んでいたのですね。誘導馬・ミューチャリー。これからも、多くのファンに愛される存在として競馬場を盛り上げてくれること間違いなしです。