南関フリーウェイ
第113回 船橋競馬 佐藤裕太厩舎から山本大翔騎手がデビューしました
春は新しい時間が動き出す季節。南関東競馬でも新人騎手5人がデビューしました。その中から、船橋・佐藤裕太厩舎所属、デビュー当日に初勝利を挙げた山本大翔(やまもとつばさ)騎手をクローズアップしてみました。
山本騎手は神奈川県出身、2003年11月29日生まれの20歳。競馬に関心を持ったのは高校2年生の時だそう。ということは、わずか3年ほど前。それを聞くと、若い時代の「1年」「2年」に刻まれる“可能性”や“成長力”の濃さを感じます。ちなみに、山本騎手が生まれた2003年、南関東競馬のダービー馬はナイキアディライト、中央競馬はネオユニヴァースでした。
山本騎手の師匠・佐藤裕太調教師は、2024年4月25日時点で重賞12勝。リッカルドやサウンドトゥルーなどJRAから引き継いだ名馬をはじめ、4月2日に行われた3歳重賞・クラウンカップ(SIII)ではシシュフォス(父アポロソニック)が優勝するなど、信頼と実績を積み重ねています。
騎手時代にはアジュディミツオー、クラーベセクレタ、フリオーソ、ルースリンド・・・と馬名をあげればキリがないほどの名馬たちの活躍を、調教パートナーとして支えていました。その佐藤裕太厩舎は今年の秋で開業丸10年。その節目の年に、初めての弟子を迎えました。
桜の花が風景に色を添える4月11日。もともとは3Rの自厩舎・テキサスブロンコでデビュー予定の山本騎手でしたが、2Rのアイディンエース(林幻厩舎)で急遽乗り替わりという珍しいパターンでの初陣に。このことについて「乗せていただけてありがたかったです。感謝しています」と振り返っていましたが、前日は食欲もなく、眠れないほど緊張したそうです。
そのデビュー戦。硬い表情で馬場入りする山本騎手を、検量室横から見守っていたのは笠野雄大騎手。遠目からでも、その眼差しに強く温かいエールが込められているのが伝わってきて、心に沁みるものがありました。馬場入り時、アドバイスの締めくくりに「はい、上手!」と力強い言葉で山本騎手を送り出したアイディンエースの担当厩務員、レース後、山本騎手を出迎えたアブクマポーロで知られる大ベテラン楠厩務員。スタンドから声援を送る家族やファンの姿。それらを目にした時、どの騎手もこんな風に、誰かに見守られ、応援され、祝福されながらデビューしたのだと、胸が熱くなる思いでした。
デビュー戦は3着。続いて8着、4着とレースを重ね、4戦目に騎乗したのはマイネルグローリエ(父ハーツクライ 函館一昭厩舎)。外から脚を伸ばし、家族からの大声援を受けながら、嬉しい初勝利となりました。
「おめでとう!よかったね!」と関係者の笑顔と拍手に迎えられた山本騎手。そんな山本騎手をエスコートする佐藤調教師の姿からは、弟子への細やかな心配りが伝わってきました。食事面でのサポートをはじめ、トレーニングジムに通う時間を設けたエピソードなどからも、弟子への期待と愛情を感じます。
初勝利の記念撮影は、オーナー、家族、先輩ジョッキーと、たくさんの人々が集い、笑顔と祝福に満ちたひとときに。それは、この先、どうか無事に、たくさんの光が射す騎手人生でありますようにと願わずにはいらない光景でした。後輩騎手の初勝利を祝う、先輩たちの姿もとっても頼もしかった!
「ゲートでは最初は心臓がバクバクしましたが、騎乗を重ねるうちに徐々に落ち着いて臨めました。プロの中で、自分よりずっと上手な人たちとレースをするのでとても緊張しました。先生(佐藤調教師)には『新人なんだから失敗はする。失敗を恐れずに乗ってこい』と言っていただきました」(山本騎手)。
今回、インタビューの全てを掲載することはできませんが、伝わりやすい言葉で話す豊かな語彙力、言葉遣いも印象的でした。
「いろいろなレースを観て、自分のレースの中での選択肢を増やせるようにしっかりと勉強したい。自分に厳しく、謙虚な気持ちを忘れずにやっていきたいです」と山本騎手。佐藤調教師と相談して決めたという勝負服は、佐藤調教師の騎手時代の勝負服の色を受け継いだ『桃色胴白うろこ袖白一本輪』。5年後、10年後の姿を楽しみに、応援していきたいと思います。