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第13回 北海道日本ハムファイターズ(Part2)

2010.01.01
 千葉県の鎌ヶ谷にある,北海道日本ハムファイターズのファーム(二軍)施設であるファイターズタウンを「育成牧場」と一緒だという理由。その一つにはここを巣立った選手が,ほぼ一軍の戦力となっていることがあげられる。

 前回,ファイターズタウンから育った選手として,ダルビッシュ有,田中賢介,森本稀哲の名前をあげたが,この3選手に共通することは,一軍に定着してからは怪我や調整以外の理由で二軍に落ちたことが無い。
 一見,当たり前のようにも思えるが,ファイターズタウンを巣立った選手が,一軍のレベルの野球ができるだけでなく,フルシーズン働けるだけの体力も備えているということでもある。

 どことは明言しないが,下位に喘いでいる某球団では,週替わりのように選手登録と抹消を繰り返している。一軍の選手が調子を崩したために,仕方なく二軍で成績を残している選手を登録するのだろうが,結局,二軍の選手は二軍の野球レベルでしかなく,一軍に定着できないまま,意気消沈して二軍へと戻っていくのだ。

 実は田中賢介は,入団当初は「小笠原二世」と呼ばれたほど,長打力を期待されていたということを知っている方は少ないはずだ。だが,入団してから打撃だけでなく,守備においてもプロの壁にぶち当たった田中賢介は,苦手だった守備を鍛えられるだけでなく,長打力を期待されていたバッティングでも,バントなど小技を使える選手へと軌道修正を図っていく。

 ファンマガジン「FIGHTERS magazine」の取材で鎌ヶ谷を訪れた際,ずっとファームの選手を見つめてきたというファンの方に話を聞いたが,「当時は賢介のところにボールが飛ぶたびにひやひやしていました」
と話していたほどに守備はひどかったらしい。しかし,現在ではゴールデングラブ賞の常連となるほど守備の名手となっただけでなく,今期もフルシーズン,セカンドベースを守り続けた。

 これを育成牧場(二軍)と厩舎(一軍)の関係に例えるとするならば,育成技術の向上に従って,育成牧場を巣立った馬が数週間後にはレースを使っているだけでなく,勝利という結果を残して,次のレースに備えている状態とも言える。それは育成牧場で長所を伸ばすだけでなく短所も矯正し,しかも次のレースを使えるだけの体力も備えられているからだ。

 全ては近年における育成技術の向上がもたらした成果とも言えるのだが,ファイターズタウンも97年の完成当初から機能していたわけではない。北海道移転の前から日本ハムファイターズを応援してきた者の目からしても,弱いチームにありがちな,選手の一軍と二軍の往復は頻繁に見られていた。

 なぜ,近年の日本ハムファイターズにおいて,二軍から一軍へと定着する選手が増えてきたかだが,それは充実した施設としっかりとしたコーチングだけでなく,一軍で求められている選手を,しっかりと送り出せるようになったことが大きい。

 今年中継ぎでブレークした菊地和正という投手がいる。大学卒で今年5年目を迎える選手だが,昨年までは一軍の試合で投げたことがほとんど無かった。

 だが,マイケル中村の読売ジャイアンツへのトレード,それに従うセットアッパー武田久のクローザー移動に伴って中継ぎを任されるようになった菊地和正は,持ち前の剛球と制球力で見事にその役割を全うする。それにはこれまでの二軍生活において,クローザーとしての経験を積んできたこと,そして肉体改造が成功したことがあげられる。同じく今年の終盤にセットアッパーを任された6年目の金森敬之も,二軍でクローザーとしての経験を充分に積んできた投手だった。

 これを育成牧場と厩舎の関係に例えるとするなら,休養明けの馬(選手)が,目標としているレース(ポジション)に使える状態まで仕上がっている状態とも言えるのではないだろうか。

 その正反対の育成調教ならぬ,二軍での調整が続いているのが大物ルーキーの中田翔である。二軍ではリーグ新記録となる30本塁打とタイ記録となる95打点をあげた中田翔ではあるが,今の一軍に求められているのは打撃力よりも守備力。そうなると,一軍の守備力を備えていない中田翔は,まだまだ二軍での調整が必要とされる選手となってしまうのだ。

(次号に続く)


JBBA NEWS 2010年1月号より転載
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