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北海道馬産地ファイターズ

村本浩平 北海道馬産地ファイターズ

第44回 『南部忠平記念陸上競技大会』

 南部杯ならぬ、南部記念を見てきた。勿論、レースが行われた場所は、盛岡競馬場ではなく、札幌市にある円山競技場である。

 レースの冠名となった「南部」とは、1932年のロサンゼルスオリンピックにおける三段跳びにおいて金メダルを獲得した、札幌市出身の故南部忠平さんから付けられた名前。そもそもこの南部記念が行われたこの大会こそが、「南部忠平記念陸上競技大会」という、南部さんの功績を称えて創設された、由緒正しき陸上競技会であるのだ。

 そこにどうして馬産地ライターなる自分が? とお思いの方もいらっしゃるだろうが、心配はしないで欲しい。競技場に着くなり、普段、競馬場や産地馬体検査などで顔を合わせているスポーツ新聞の記者の方々から、「競馬を開催しているのに、何故ここに?」「トラックで行われてはいるけど、ここには馬は走ってないよ(笑)」と突っ込まれてしまっているからだ。

 まあ、何の目的も持たずにここに来たのではない。最近、仕事をさせてもらっている、とあるスポーツ紙の取材で、ロンドンオリンピックの男子200mと400mリレーに出場する高平慎士選手、東京オリンピック以来、48年ぶりとなる十種競技でのオリンピック出場を決めた右代啓祐選手、そして女子400m障害の久保倉里美選手という道産子アスリートの取材に来たのだ。

 この3人に加えて、実は女子100mと200mに出場する福島千里選手も取材する予定だったが、大会前日に行われた記者会見、そして大会出場を、疲れと本番に向けての調整のために取りやめてしまっていた。

 何もかも競馬に置き換えてしまうのが、馬産地ライターと言われる残念たる所以で、「今回は福島というGⅠ馬不在かあ...」と考えてしまったり、比較的競馬と流れや展開が似ているとされる、1500mや3000mの競走を見ては、「もうちょいで差しが届く!」とつい、口に出しそうになっていた。

 この南部忠平記念陸上競技大会が興味深いのは、こうしたオリンピック選手と共に、小学生や中学生のレースも行われるところ。まあ、競馬ではGⅠレースの日に、メイクデビューも組まれているからなあと考えてしまいそうになるが、こうしたレベルの大会では非常に珍しいらしい。しかも招待選手は日本のトップ選手のみならず、男子三段跳びの世界記録保持者だったウイリー・バンクス選手や、女子100mの世界記録保持者だったエベリン・アシュフォード選手といったメダリストたちも参戦している。まあ、これも競馬的に考えれば、「GⅠレースに一流の外国産馬が出走してきた」とも置き換えられるのかもしれないが。

 ちなみに南部忠平記念陸上競技大会だが、行われる競技の格は、その時々でGⅠであったり、はたまたオープンであったりもするようだ。陸上の重要な大会の一つである「日本グランプリシリーズ」の一つに組み込まれており、その昔はここでオリンピックの標準記録を超えると、追加招集をされることもあったという。「つまりトライアルとなった重賞レースで3着以内に入った馬が、クラシックに出られるのと一緒かい?」と思ったあなた。自分もその話を聞いたときには全く同じことを考えてしまいました(笑)。

 今回はオープンクラスのレースだなと思ってしまったのは、福島選手だけでなく、男子100mでロンドンオリンピック出場を決めた、江里口匡史選手も欠場。また高平選手も、エントリーしていた男子100mを本番に向けた調整を優先した結果、当日に欠場することとなってしまったのだ。まあ、競馬の世界でも有力馬が出走回避した結果、レースレベルが落ちるのは良くあることだと、妙に自分を納得させていた。

 それでも改めて思うのは、こうした選手達にとってはGⅠ、もしくはクラシックと言えるオリンピックに出場することの大変さである。ひどく当たり前のことだが、この目で見たどの選手達も足が速くて、そして強い筋力と、とんでもない跳躍力を持ち合わせていた。それでも世界にはまだ優れたアスリートが数え切れないほどいるのだろう。

 オリンピックに出場する選手たちを通して改めて、世界に挑戦することの大変さを学んだような気がした。ロンドンオリンピックに出場する全ての選手たちにGⅠ制覇、いやいや、金メダルという喜びがもたらされることを期待したい。