北海道馬産地ファイターズ

　今年の夏も函館競馬場、そして札幌競馬場で「ビギナーズセミナー」の講師を務めさせていただいている。今年のビギナーズセミナーだが、参加者が少数の時には、「ビギナーズセミナーツアー」と称した、新たな取り組みもスタートさせている。その内容だが、少しだけ講議を行った後にはパドック、そして、勝馬投票券発売所へと移動。パドックで気になった馬や、競馬新聞を元にした予想を参加者とともに考えた後、実際に馬券を購入してレースを観戦。馬券を購入して競馬を見る楽しさ（時には悔しさ）を、実際に体験していただいている。
　いざ始めてみると、ビギナーズセミナーよりも、ビギナーズセミナーツアーの参加率が高いようで、講師としては嬉しさとともに、また、的中馬券に繋がるアドバイスもしなければ、というプレッシャーになっているのも事実である。そのビギナーズセミナーツアーだが、ある時、20代の女性２人と、同じく20代の男性１人が参加してくれた。

　その女性２人は姉妹とのことで、妹が競馬に興味を持った際、一人で競馬場に行くのはためらわれて姉を誘ったところ、姉の方が競馬にのめり込むようになり、今日も姉の方から「競馬場に行こう！」と言われたのだという。一方、１人で参加された男性は、仙台から北海道新幹線に乗って函館に来たとのこと。まだ北海道新幹線に乗ったことの無い自分と姉妹２人は、「羨ましい！」と言い合い、パドック解説や予想をそっちのけで、新幹線の乗り心地やそのスピード感について、逆に質問をしていた。しかし、よくよく話を聞いてみると、その男性が函館に来たのは観光では無く、ビギナーズセミナーツアーの次の日に行われる、函館マラソンに参加するために来函したのだった。

　更に話を聞いていくと、仙台市内には競馬場は勿論、場外発売所も無く（宮城県内にはオフト大郷やウインズ三本木がある）、競馬を見に行くためには、福島競馬場まで足を伸ばさなければいけないとのこと。前々から競馬には興味はあったが、場外発売所には抵抗があり、福島競馬場も遠いと考えていた時に、函館マラソンの前日に競馬が開催されているのを知って、来場してみたという。

　その話を聞いた瞬間、姉妹２人とで「明日のマラソン頑張って！」とエールを送ることになったのだが、ふと思ったことは、この男性のようにマラソンのついでに函館競馬場に来場された方も、それなりの数はいるのではないか？という思いだった。

　以前にこのコラム（第57回『函館開催とＧＬＡＹ』）で、競馬開催とバッティングするように、函館市の緑の島で野外ライブが開催された際のあらましを書いたのだが、その時に、函館競馬場にＧＬＡＹファンは来ているのか？と調べたところ、ＧＬＡＹグッズを身につけた競馬ファンに話を聞くことができた。

　ＧＬＡＹのライブは昨年の函館アリーナのこけら落とし公演としても行われ、その際にも競馬場近くの函館アリーナには、多くのファンが列を成していた。こうしたイベントが行われると、パイの小さい函館市内の宿泊施設はたちまちパンクとなり、函館マラソンの際にも、土曜日のホテルが取れないんだよ、と話す競馬関係者の声を耳にしていた。

　それでも、こうしたイベントに参加されている人たちの中には、競馬に興味がある方、もしくは函館で競馬が開催されているのを事前に知っていれば、マラソンランナーの男性のように、競馬場まで足を向けてくれた方がいる可能性もある。

　もし、これをお読みのＪＲＡ関係者の方がいらっしゃるのなら、是非ともお願いしたいのだが、こうしたイベントが行われた日は、無料入場券をイベント主催者の方に渡してはいただけないだろうか？今回の函館マラソンも午前中スタートとなれば、コンディション調整を考えても当日移動はまずあり得なく、前日から函館にお越しのランナーの方は、身体ももてあましているはず。アップのついでに函館競馬場に来ていただいて、疾走する競走馬の姿から何か得るものもあるかもしれない。

　これからＪＲＡ北海道シリーズは札幌に舞台を移すが、その際にも道外からの集客を見込めるような様々なイベントが行われていく。例をあげるなら、８月12日と13日には石狩湾新港樽川ふ頭で「ライジングサンロックフェスティバル」が行われる。その際、参加者が身につけるリストバンドの着用者は札幌競馬場への入場を無料にする、という試みを行ってもいいのかもしれない。勿論、函館マラソンの参加者も、出場を証明できる何かを提示できたら、入場を無料にするという考えも思い浮かぶ。

　ＪＲＡ北海道シリーズの開催期間中は、北海道の観光シーズン。ここは競馬関係者の方には宿泊施設がとれなくなることには目をつぶっていただいたとして、新規の競馬ファンに来てもらえるチャンスだと、前向きに考えていきたい。