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北海道馬産地ファイターズ

村本浩平 北海道馬産地ファイターズ

第108回 『草ばん馬大会PartⅡ』

 北海道・北斗市で毎年のように開催されている、(株)田山産業運輸の主催するばん馬競技大会。草ばん馬初心者の自分は会場にたどり着いたものの、いったいどこに行っていいのか、それどころか、何をしていいのかさえも分からなかった。

 会場を歩き回る中で見つけた大会本部で、受付をしていたのが、全道の草ばん馬大会に愛馬を参戦させている、知り合いの牧場スタッフTさん、そしてTTさんだった。

 二人に話しかけると、「本当に来たんですね」とTさんが笑顔を見せる。その際に大会の概要が書かれたパンフレットを受け取ったのだが、そこには「一般馬」「ポニー」といった馬の種類や重量分けがされており、そのレース数は20近くにも及んでいた。

 TTさんが大会本部のすぐ前にある、ベニヤ板が置かれている場所を指差す。「ポニーはあの場所で体高を図り、大きさによって重量分けをしています。あとは一般馬、ポニーともに年齢ごとのレースも行われますね」

 Tさん、TTさんが参加するレースはポニーばん馬。最も軽い1歳馬だけのレースではおもりの重さは30㎏でしか無いのだが、高重量戦となるとその重さは250㎏にもなる。そのために身体(体高)の大きさで、重量の区分が行われていくわけだが、時には、「俺の馬はそれほど体高が無いべや!」と測定を行う人に食ってかかる参加者も出てくる。

 「何かを言ってくる人は、少しでも軽いおもりのレースに出たいからなのでしょう。草ばん馬ではよく見る光景ですよ」とTさん。軽いおもりのレースはスピード決着になる一方、最重量戦だと250㎏ものおもりが乗ったソリをポニーが引くことになる。ちなみにTさんとTTさんが所有しているポニーは、軽重量戦から高重量戦のどちらにも対応できる練習を重ねてきたそうで、2種目制覇を狙っていることも教えてくれた。

 そうこうしていると、全道で行われている草ばんばの大会のほとんどに足を運んでいるK夫妻も会場へ姿を見せる。カメラを携えたK(夫)さんは、外に繋がれたばん馬を指差して、「あの馬は昨日のばんえい競馬のレースに出ていた馬ですよ」と衝撃の事実を教えてくれる。K(夫)さんの話によると、草ばん馬のよく見られる光景その2としては、レースに使ったばん馬が「放牧」という形でそのまま馬運車へと乗り込み、明くる日は「調整」という名の草ばん馬に参加。その後、競馬場で検疫期間を過ごした後、再びレースを使うのだという。そのK(夫)さん曰く、「あそこで馬と一緒にいるのは、ばんえいの調教師の方です。そもそも草ばん馬に参加される方の多くがばんえいのオーナーでもあり、草ばん馬をみんなで盛り上げようという気運があり、現役馬をレースに使うという流れになっているのだと思います」と教えてくれる。

 ゲートを見ると、最大9頭でのレースが行われるようにはなっているが、ばんえい競馬に出走してくるような一般馬のカテゴリーは、時には3頭立てといった少頭数でレースが行われることもあった。このサイズのばん馬を、草ばん馬のために繋養している牧場や個人が、それほどいないであろうことは容易に想像ができるだけに、ばんえい競馬の所属馬や関係者が、草ばん馬を支えている背景が垣間見えたような気がした。

 草ばん馬を支えているのは、何も道内の関係者だけではない。会場で車の駐車位置を探していた時に頻繁に目にしていたのが、東北の地名が入ったナンバーの馬運車だった。

 「東北でも『馬力』という形のばん馬が行われていて、それは馬と騎手の前に、馬を引っ張る助手がいるばん馬なのですが、東北の関係者も、フェリーに乗って大会まで駆けつけてくれることもあります」とK(夫)さんは話す。また、馬運車のナンバーには大会が行われる道南だけでなく、道央、時には道東や道北の地名が書かれた馬運車もあったが、「ウチの草ばん馬大会に来てもらったのだから、そちらの大会にも出向くよ!」との気持ちの表れらしい。

 そんな心温まるエピソードこそあれど、先ほどのポニー体高測定のやり取りからしても、レースに出るからには勝ちたいとの思いが参加者には強いのだろう。

 それが行動として表れたのが第1レースだった。カテゴリーは一般馬の1歳。ゆくゆくはばんえい競馬でソリを引いているであろう馬たちによって行われる、朗らかなはずのレースなのだが、馬を追うためになんと、コースの中に入って共に走る関係者の姿を見て、「負けられない戦いは、そこにはある」とのどこかで聞いたキャッチコピーは、実は草ばん馬にこそ相応しいのではとの衝撃を受けた。