北海道馬産地ファイターズ
第150回 『ウマ娘、初めて見ました PARTⅡ』
2021.06.21
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名馬を擬人化するメリットが、馬の名前よりも先にキャラクターが入ってくることであり、そのキャラクターを通して、名馬を深く知ろうとする試みも「ウマ娘 プリティーダービー」はフォローしている。
その1つがウマ娘の活躍や、ガチャを引いたカードによって公開されていく、ストーリーの存在だ。このストーリーが良くできているというのか、モデルとなった馬のエピソードも盛り込みながら、ウマ娘の魅力も表現されている。
当初はガチャ(ウマ娘を増やしていくゲーム内のイベント)で使えるジュエル欲しさにアニメーション動画を流していたのだが、いつの間にか、ストーリーを真剣に見入ってしまうようになってしまった。まあ、動画の印象で実際の馬の姿を知ってしまう(その逆も然り)と、あまりにもかけ離れていることもある。それでも、全く競馬に興味が無かった人たちが、ウマ娘のキャラクターを通して名馬たちを調べてみようと思うだけでも、これまでの競馬にまつわる創作物では、まず無かったことだと思うのだ。
これも登場するウマ娘たちが、実際の名馬であることも大きい。これまでの創作物は、実際の馬たちをモデルにしていることはあっても、実名が出てくることはほとんどなかった。それは、史実と物語のストーリーに違いが出てくることの問題や、そもそも、名馬自体を主役とするのなら、それはただのノンフィクションになってしまうからである。
なぜにウマ娘では、こうした問題がクリアになったかだが、これも「ウマ娘」という、現実にはあり得ない存在にした「フィクション化」と、実際の名馬のストーリーを追っていく「ノンフィクション化」がちょうどいいバランスで成り立っているからなのだろう。
フィクションとノンフィクションのちょうどいいバランスの向こうに、感動があったのが、ウマ娘となったサイレンススズカと共に、レースを進めていく育成モードである。
その中ではクリアしなければ、トレーナーとして馬を育てる期間が強制的に終了する、育成目標が定められているのだが、サイレンススズカの育成目標はほぼ、競走成績に沿ったものとなっており、その最終目標となるのが、天皇賞・秋での1着である。1998年の11月1日。東京競馬場で、あるいはTVであのレースを見たものならば、誰もがハッとする言葉なのだが、ウマ娘とはいえども、先頭から影を踏ませることなく、見事な逃げ切りを決めたその姿には、カタルシスとしか言えない感情が湧いてきた。
ダービースタリオンといった、様々な競馬育成ゲームで、血統、育成方針を駆使すれば、サイレンススズカのような馬を作り出すことはできる。それでも、それはサイレンススズカの名を借りた、データの1つでしかないというのか、天皇賞・秋を勝った後ですら、次はどのレースを使おうかといった、打算的な気持ちが生まれてしまう。
ただ、ウマ娘のサイレンススズカに関してはそれが起こらなかった。それは、ゲームの中での最終目標(勝利した後は、次なるミッションもあります)となっていることや、史実を基にしながら、ウマ娘と勝ち進んできたという思いも加わっているからなのだろう。
前回のコラムで牡馬も擬人化されて、ウマ娘となっていることに違和感があるといった内容を書いたが、ゲームの中でサイレンススズカが天皇賞・秋を勝った時には、それも許してしまおうとさえ思った(笑)。自分の友達に、サイレンススズカの産まれた(有)稲原牧場の元牧夫がいる。その友達の奥さんは、それほど競馬に詳しくないものの、ウマ娘を育ててから、実際のサイレンススズカについても調べたらしく、「サイレンススズカって、凄い馬なんだね!」とサイレンススズカを良く知る友達に熱弁してきたらしい(笑)。
こうした事象だけでなく、ゲームと競馬好きでも知られる、楽天イーグルスに所属する田中将大選手、そして美浦や栗東といった、トレーニング・センターに勤務する厩務員や調教師までも、育成の様子をアピールしている「ウマ娘 プリティーダービー」。ひょっとしたら、第三次競馬ブームの火付け役になるのでは?との予感もさせる一方で、賢明なホースマンの方であればあるほど、無意識に遠ざけてしまっているかもしれない。
ただ、ゲームとしての出来もいいだけに、スマホゲームに親しまれている方なら、是非始めて欲しいし、これまで、マスコミである自分たちがいくら頑張っても、世間になかなか広められなかった、馬自体の魅力やストーリーを、「ウマ娘」というコンテンツがなぜ可能としたか?を紐解く上でも、アプリをダウンロードすることをお勧めしたい。
その1つがウマ娘の活躍や、ガチャを引いたカードによって公開されていく、ストーリーの存在だ。このストーリーが良くできているというのか、モデルとなった馬のエピソードも盛り込みながら、ウマ娘の魅力も表現されている。
当初はガチャ(ウマ娘を増やしていくゲーム内のイベント)で使えるジュエル欲しさにアニメーション動画を流していたのだが、いつの間にか、ストーリーを真剣に見入ってしまうようになってしまった。まあ、動画の印象で実際の馬の姿を知ってしまう(その逆も然り)と、あまりにもかけ離れていることもある。それでも、全く競馬に興味が無かった人たちが、ウマ娘のキャラクターを通して名馬たちを調べてみようと思うだけでも、これまでの競馬にまつわる創作物では、まず無かったことだと思うのだ。
これも登場するウマ娘たちが、実際の名馬であることも大きい。これまでの創作物は、実際の馬たちをモデルにしていることはあっても、実名が出てくることはほとんどなかった。それは、史実と物語のストーリーに違いが出てくることの問題や、そもそも、名馬自体を主役とするのなら、それはただのノンフィクションになってしまうからである。
なぜにウマ娘では、こうした問題がクリアになったかだが、これも「ウマ娘」という、現実にはあり得ない存在にした「フィクション化」と、実際の名馬のストーリーを追っていく「ノンフィクション化」がちょうどいいバランスで成り立っているからなのだろう。
フィクションとノンフィクションのちょうどいいバランスの向こうに、感動があったのが、ウマ娘となったサイレンススズカと共に、レースを進めていく育成モードである。
その中ではクリアしなければ、トレーナーとして馬を育てる期間が強制的に終了する、育成目標が定められているのだが、サイレンススズカの育成目標はほぼ、競走成績に沿ったものとなっており、その最終目標となるのが、天皇賞・秋での1着である。1998年の11月1日。東京競馬場で、あるいはTVであのレースを見たものならば、誰もがハッとする言葉なのだが、ウマ娘とはいえども、先頭から影を踏ませることなく、見事な逃げ切りを決めたその姿には、カタルシスとしか言えない感情が湧いてきた。
ダービースタリオンといった、様々な競馬育成ゲームで、血統、育成方針を駆使すれば、サイレンススズカのような馬を作り出すことはできる。それでも、それはサイレンススズカの名を借りた、データの1つでしかないというのか、天皇賞・秋を勝った後ですら、次はどのレースを使おうかといった、打算的な気持ちが生まれてしまう。
ただ、ウマ娘のサイレンススズカに関してはそれが起こらなかった。それは、ゲームの中での最終目標(勝利した後は、次なるミッションもあります)となっていることや、史実を基にしながら、ウマ娘と勝ち進んできたという思いも加わっているからなのだろう。
前回のコラムで牡馬も擬人化されて、ウマ娘となっていることに違和感があるといった内容を書いたが、ゲームの中でサイレンススズカが天皇賞・秋を勝った時には、それも許してしまおうとさえ思った(笑)。自分の友達に、サイレンススズカの産まれた(有)稲原牧場の元牧夫がいる。その友達の奥さんは、それほど競馬に詳しくないものの、ウマ娘を育ててから、実際のサイレンススズカについても調べたらしく、「サイレンススズカって、凄い馬なんだね!」とサイレンススズカを良く知る友達に熱弁してきたらしい(笑)。
こうした事象だけでなく、ゲームと競馬好きでも知られる、楽天イーグルスに所属する田中将大選手、そして美浦や栗東といった、トレーニング・センターに勤務する厩務員や調教師までも、育成の様子をアピールしている「ウマ娘 プリティーダービー」。ひょっとしたら、第三次競馬ブームの火付け役になるのでは?との予感もさせる一方で、賢明なホースマンの方であればあるほど、無意識に遠ざけてしまっているかもしれない。
ただ、ゲームとしての出来もいいだけに、スマホゲームに親しまれている方なら、是非始めて欲しいし、これまで、マスコミである自分たちがいくら頑張っても、世間になかなか広められなかった、馬自体の魅力やストーリーを、「ウマ娘」というコンテンツがなぜ可能としたか?を紐解く上でも、アプリをダウンロードすることをお勧めしたい。