北海道馬産地ファイターズ
第153回 『日本で最も新しい競馬場 PARTⅠ』
2021.09.17
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末広がりの数字が揃った8月8日。日高道の日高門別ICを降りてから車で2分、セブンイレブン日高門別インター店からでも徒歩2分という、非常に利便性のいい立地に、日本で最も新しい競馬場が開場した。
勿論、その競馬場では馬券を売っているわけではない。U字型の全長200㍍のコースで行われているのは、ばん馬競技大会。いわゆる「草ばん馬」である。
日本で最も草ばん馬を取り上げているコラム(あくまで個人の感想です)である北海道馬産地ファイターズとして、その記念すべき日に立ち会わないわけにはいかないだろう。
昨年、今年と新型コロナウイルス感染症の影響で、北海道や東北のばん馬競技大会が軒並み中止となっている。その状況の中、今年、北海道内では3大会目となる「第1回ポニーばん馬大会」が、セブンイレブン日高門別インター店のすぐ近くに完成した特設会場、つまり日本で最も新しい(草ばん馬専用の)競馬場で開催された。
大会は午前10時からのスタートということもあり、その30分前には会場へと着いたのだが、駐車場は既に半分ほど埋まっていた。
マスクを着用し、駐車場近くのテーブルに設置されていた、アルコールスプレーで手を消毒して会場へ入っていく。コースの脇には運動会などで見かける集会用のテントが、見学席として設けられていただけでなく、これぞ草ばん馬の光景と言える、荷台を観戦場所に改造した馬運車も止められていた。
それにしても、見事な草ばん馬専用の競馬場である。高さの違う2つの障害だが、後半の障害は優に1メートルを超えるほどの高さがあり、5頭のポニーが優に走れるほどの幅員も取られている。砂圧もこれまで見てきた草ばん馬専用の競馬場よりもかなり深い。これだけの施設を作るだけでなく、大会に向けて整備してきただけでも、相当の労力がかかったに違いない。それをやり遂げたのが、今大会の実行委員会委員長である、福島一治さんだった。
日高町にある(有)クローバーファームの代表も務める福島さんは、言わばサラブレッドと草ばん馬の「二刀流ホースマン」でもある。
ちなみにこのコラムの第141回『ゾース、馬ソリを引く』のPARTⅠにも、とある牧場の場長として登場しているが、その時と同じように、セレクトセールの会場で、「今度、日高町に草ばん馬のコースを作ったから、もし良かったら見に来てよ」と声をかけていただいていた。
福島さんに挨拶をしようと思ったのだが、声をかける暇もないほど忙しく動き回っていた。すると、自分に草ばん馬の魅力を伝えてくれた帯広のK夫妻がこちらへやってくる。
物凄く立派な競馬場ですね、と話しかけると、K(夫)さんは、「この施設を1年に1度しか使わないのは勿体ないですよね」と言葉を返す。確かに草ばん馬大会は各地区を転戦し、基本的に大会は年に1回しか行われない。世界初となるシマウマのゾースがソリを引いた(多分)、穂別ポニー輓馬大会でも、コースだけでなく会場も普段は草や雪に覆いつくされており、大会の何か月も前から、草刈りや整地を行うと聞いて驚かされた。
そう思えばこの会場の前の道路を、幾度となく車で通りすぎていたはずだが、以前、ここに何があったか思い出せない。
よく、この場所に草ばん馬の会場を作ろうと思ったなあとの思いと、これまでの会場が、一見さんでは到底見つけられないような辺鄙な場所だっただけに、ここなら、誰でも気軽に来れるなとも思った。
そんなことを考えていると、「ここで何をやっているかと思ったら、草ばん馬をやっていたのね」と古くからの知り合いである、牧場関係の奥さんが声をかけてくる。現在は日高町の議会議員も務めているその奥さんだが、町内の事情には精通しているにもかかわらず、今大会については全く知らされてなかったと話す。その事情を話してくれたのはK(妻)さんだった。
「コロナ禍での大会ということで、事前にあまり周知できなかったようです。それでも近くを車で通りかかった人たちが、何かやっているな、と思ったのか、先ほどから車を入れていますね」と駐車場の方を見やる。
確かに北海道内には8月1日から、まん延防止等重点措置が適用され、三密となる状況の回避などの、様々な感染防止対策が要請されてきた。本来ならば日高町民だけでなく、高速出口からのアクセスの良さを考えても、多くの人に周知すべき大会だったのかもしれない。それが叶わなかったことは、草ばん馬の魅力を伝えたいと思っている、一人のマスコミとしても悔しい思いがした。
(次号に続く)
勿論、その競馬場では馬券を売っているわけではない。U字型の全長200㍍のコースで行われているのは、ばん馬競技大会。いわゆる「草ばん馬」である。
日本で最も草ばん馬を取り上げているコラム(あくまで個人の感想です)である北海道馬産地ファイターズとして、その記念すべき日に立ち会わないわけにはいかないだろう。
昨年、今年と新型コロナウイルス感染症の影響で、北海道や東北のばん馬競技大会が軒並み中止となっている。その状況の中、今年、北海道内では3大会目となる「第1回ポニーばん馬大会」が、セブンイレブン日高門別インター店のすぐ近くに完成した特設会場、つまり日本で最も新しい(草ばん馬専用の)競馬場で開催された。
大会は午前10時からのスタートということもあり、その30分前には会場へと着いたのだが、駐車場は既に半分ほど埋まっていた。
マスクを着用し、駐車場近くのテーブルに設置されていた、アルコールスプレーで手を消毒して会場へ入っていく。コースの脇には運動会などで見かける集会用のテントが、見学席として設けられていただけでなく、これぞ草ばん馬の光景と言える、荷台を観戦場所に改造した馬運車も止められていた。
それにしても、見事な草ばん馬専用の競馬場である。高さの違う2つの障害だが、後半の障害は優に1メートルを超えるほどの高さがあり、5頭のポニーが優に走れるほどの幅員も取られている。砂圧もこれまで見てきた草ばん馬専用の競馬場よりもかなり深い。これだけの施設を作るだけでなく、大会に向けて整備してきただけでも、相当の労力がかかったに違いない。それをやり遂げたのが、今大会の実行委員会委員長である、福島一治さんだった。
日高町にある(有)クローバーファームの代表も務める福島さんは、言わばサラブレッドと草ばん馬の「二刀流ホースマン」でもある。
ちなみにこのコラムの第141回『ゾース、馬ソリを引く』のPARTⅠにも、とある牧場の場長として登場しているが、その時と同じように、セレクトセールの会場で、「今度、日高町に草ばん馬のコースを作ったから、もし良かったら見に来てよ」と声をかけていただいていた。
福島さんに挨拶をしようと思ったのだが、声をかける暇もないほど忙しく動き回っていた。すると、自分に草ばん馬の魅力を伝えてくれた帯広のK夫妻がこちらへやってくる。
物凄く立派な競馬場ですね、と話しかけると、K(夫)さんは、「この施設を1年に1度しか使わないのは勿体ないですよね」と言葉を返す。確かに草ばん馬大会は各地区を転戦し、基本的に大会は年に1回しか行われない。世界初となるシマウマのゾースがソリを引いた(多分)、穂別ポニー輓馬大会でも、コースだけでなく会場も普段は草や雪に覆いつくされており、大会の何か月も前から、草刈りや整地を行うと聞いて驚かされた。
そう思えばこの会場の前の道路を、幾度となく車で通りすぎていたはずだが、以前、ここに何があったか思い出せない。
よく、この場所に草ばん馬の会場を作ろうと思ったなあとの思いと、これまでの会場が、一見さんでは到底見つけられないような辺鄙な場所だっただけに、ここなら、誰でも気軽に来れるなとも思った。
そんなことを考えていると、「ここで何をやっているかと思ったら、草ばん馬をやっていたのね」と古くからの知り合いである、牧場関係の奥さんが声をかけてくる。現在は日高町の議会議員も務めているその奥さんだが、町内の事情には精通しているにもかかわらず、今大会については全く知らされてなかったと話す。その事情を話してくれたのはK(妻)さんだった。
「コロナ禍での大会ということで、事前にあまり周知できなかったようです。それでも近くを車で通りかかった人たちが、何かやっているな、と思ったのか、先ほどから車を入れていますね」と駐車場の方を見やる。
確かに北海道内には8月1日から、まん延防止等重点措置が適用され、三密となる状況の回避などの、様々な感染防止対策が要請されてきた。本来ならば日高町民だけでなく、高速出口からのアクセスの良さを考えても、多くの人に周知すべき大会だったのかもしれない。それが叶わなかったことは、草ばん馬の魅力を伝えたいと思っている、一人のマスコミとしても悔しい思いがした。
(次号に続く)