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第161回 『成年と馬券』

2022.05.19
 2022年の4月から、成年年齢が現行の20歳から18歳に引き下げられた。成年年齢とは、いわゆる成人のことなのだが、政府広報オンラインによると、今年18歳、そして19歳の年齢に達した国民は成年(成人)と見なされる。
 青年に達すると、親権に服さなくていいだけでなく、様々な契約が自分の意志で決められる。その中には携帯電話やクレジットカードの契約に加え、住む場所だけでなく、進学や就職などの進路なども含まれている。

 筆者は18歳の頃、北海道内の港町に住む高校生だった。当時は自分の意志で何かを決めるというより、大学進学にしても、その後の様々な手続きにしても両親に頼り切りだった。その2年後にその頃の成人となる20歳を迎えたが、お盆に開催された成人式にも、嫌々ながら参加したばかりにほとんど記憶が無い。

 他にもお酒を飲むといった、様々な成人ならではの儀式も何となくやり過ごしてしまったばかりに、「ひょっとしたら、自分はまだ成人になっていないのではないか?」という気もしてくる(笑)。しかしながら、初めて馬券を購入した日のことや、競馬場に足を運んだ日のことは、今でも覚えている。

 初めて馬券を購入したというか、大人の人にこの馬券を買って!と頼んだのは、中学校の頃となる。当時、仲良くしていた競馬好きのバスケット部の顧問に、「有馬記念は『メジローメジロ』が気になるのですが...」と尋ねたところ、その組み合わせの枠連を買ってくれたらしく、次の日の練習では、「的中おめでとう!」とジュースをおごってもらった。

 函館に親戚がいるのをいいことに、家族で親戚の家に行った際には、挨拶もそぞろに市電に飛び乗り、開催中の函館競馬場へと出かけていた。大学進学後は札幌競馬場内のレストランでアルバイトをはじめ、出勤時間よりかなり早い時間に入場しては、1レースに組まれていたアラブのオープンを眺めていた。

 アルバイトでなくとも、開催中は誰でも入場できるはずの競馬場だったが、パークウインズになると未成年と学生は入場ができなくなった。早い時間のレースが見たくとも、競馬場どころか、ウインズに立ち入ることも許されなかった。

 その一方で高校を卒業してから、すぐに就職した同級生は、馬券を購入できるようになった20歳から競馬に興味を持つようになっていった。一方、その友人よりも早く競馬の魅力に気付き、深夜帯のバイトでそれなりの収入があった筆者は、競馬法的に大学を卒業するまで馬券の購入はできなかった。ちなみに2005年の1月に競馬法が改正され、学生でも成年に達した場合は馬券購入が認められたのだが、これを機に大学の競馬サークルが、競馬媒体や各種のイベントにも、名前が載るようになってきた印象がある。

 そして、今回の成人年齢の引き下げとなったのだが、競馬法における勝馬投票券の購入可能年齢は、他の公営競技と同様に、20歳以上のままで変更されていない。

 同じく20歳の年齢が維持された飲酒や喫煙は、身体的な影響などから仕方ないという気もしているが、個人的には18歳の年齢に達したのなら、仕事でもバイトでも自分の力で収入を得た金額の範囲内ならば、馬券購入を認めてもいいのではないかと思っている。

 その最たる理由は、馬券の購入方法の主流がネット投票になってきたことが上げられる。手軽さが受け入れられる形で、今や競馬だけでなく、様々な公営競技もネットの販売が主流となってきた。

 18歳を迎えた新成年が、白毛馬のGⅠ馬として、様々な媒体で取り上げられたソダシの活躍や、あるいは大ヒット中のアプリゲームである、「ウマ娘 プリティーダービー」を楽しんでいくうちに、競馬に興味を持つことは大いに考えられる。その時、ライブ感覚を共有する手段として、馬券を購入したいと思うはずだ。

 確かに馬券購入のきっかけから競馬にどっぷりとはまり、射幸心に火が付く新成人は出てくるかもしれない。それなら20歳までの年齢は、1日の馬券の購入金額を限定するといったシステムを導入する手もある。競馬は馬券を購入しなくとも、充分に楽しめるスポーツイベントである。ただ、その楽しみにプラスして、自分の信じた未来、つまり予想の的中という嬉しさも与えてくれるのが、競馬の魅力だと思う。

 様々な契約を自分で決められる成人ならば、競馬とも上手く付き合えると信じている。20歳を迎えたのなら、学生でも馬券が購入できるようになったように、数年後、18歳を迎えた新成人たちが、馬券を購入しながら競馬を楽しんでいる未来が来て欲しい。

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