北海道馬産地ファイターズ
第190回 『1歳馬品評会 PARTⅢ 』
日本一の漫才師を決める大会でもあるM-1グランプリ。準決勝を勝ち上がった9組の漫才師と、放送当日に敗者復活戦で選ばれた1組の漫才師が、ファーストラウンドで順番にネタを披露するのだが、出場順が1番手で優勝したのは、過去20回の大会において第1回の中川家と、第20回の令和ロマンの2組だけとなっている。
そのM-1グランプリの決勝3組と同じく、金賞、銀賞、銅賞の上位3頭しか選出できない平取町軽種馬振興会が主催する1歳馬品評会。最初に姿を見せる馬が、審査の面で不利になるのは明らかだった。
しかし、第1回目からのM-1視聴者である筆者は、以前に審査員の誰かが話していた気がする、「1組目の出場者は基準点となるので、審査ではプラス5点を加える」という採点方法で審査に臨むこととした。
だが、その審査方法を用いたとしても、最初の出陳馬から素晴らしい馬体と管理がされており、審査の後半になるにつれて、100点オーバーの点数を付けざるを得ない出陳馬も出てくるようになった。
幸いだったのはM-1の審査員と違い、出陳馬ごとに点数を発表しなくても良いことだった。そう思うと審査をするだけでなく、ネタを披露した漫才師たちにコメントをしていく、M-1の審査員はどれほどハードな仕事をしているのかと考えさせられた。
事前にもらっていた資料に書き込んだ点数を誰にも見られないようにしながら、主催をする平取町軽種馬振興会の関係者に、審査の結果を手渡す。
同じく審査員を務めていたJRA日高育成牧場の浮島理場長や、JBBA日本軽種馬協会静内種馬場の遊佐繁基場長、そしてホッカイドウ競馬調騎会の角川秀樹会長も、ほぼ自分が付けていた点数と同じ結果であり、スムーズに金賞、銀賞、銅賞の3頭を選ぶに至った。
また、特別審査員として招かれていた、JRA札幌競馬場の植田嘉奈子場長は、ベストターンドアウト賞の選出を行っていたが、その選出馬も個人的には金賞に選出された馬と同格の評価をしていた馬だった。立場の違いこそあれ、「いい馬」の基準は植田場長とも共通していると感じさせられた。
昨年の平取町の1歳馬品評会だが、ウインフロレゾンの2022(牡、父リオンディーズ)こと、後のショウナンマクベスがこの後に行われた「セレクションセール2023」に上場。税込みで7,700万円という高い評価を受けただけでなく、今年の6月15日に行われたメイクデビュー東京でも優勝を果たしている。
品評会の後にびらとり温泉「ゆから」で行われた関係者との懇親会では、ショウナンマクベスの生産者である二風谷ファームの稲原昌幸代表が、昨年も審査を務めた浮島場長と遊佐場長に、「昨年の品評会では自信を持って送り出したのに、思ったような評価をしてもらえなかったからなあ」と苦笑いを浮かべながら話しかける姿があった。この時、上位3頭の選出とはならなかったショウナンマクベスであるが、「セレクションセール2023」での評価額は、全体で4番目という非常に高い評価が与えられている。
また、2歳時にメイクデビューを優勝という競走成績も含めて、馬体の良さだけでなく、競走能力でも「いい馬」であることが証明された。
昨年の平取町の1歳馬品評会には参加していない筆者であるが、上位3頭の立ち写真を見ると、どれもいい馬ばかりであり、選出にもさぞ苦労したであろうことがうかがえる。
ひょっとしたら、平取町の品評会ならではの「M-1グランプリと同じ審査方法」が、ショウナンマクベスの点数を伸びにくくしたのかもしれない。
先に行われた三石町の1歳馬品評会、そして、平取町の1歳馬品評会の出陳馬たちは、この後に開催されたセレクションセールや、サマーセールにも上場されており、軒並み高い評価を受けていた。この点においては「いい馬」の評価がせり成績にも現れたと言えるだろう。
その一方でショウナンマクベスのように、「賞には該当しなかったいい馬」は、今年の1歳馬品評会にいたのではという気もしてくる。
それが気になってしまっているがために、審査の際に書き記したメモを大事に保管してある。この後のせり結果は勿論のこと、競走馬となってからの活躍も追いかけながら、「意外と馬を見る目があったなあ」とメモを開きながらほくそ笑みたい。というわけで、来年も審査員をさせていただけるのなら、三石町は博多大吉さん、平取町は富澤たけしさんのような気持ちで臨みたいと思っている。