北海道馬産地ファイターズ
第192回 『研修会からの研修会 PARTⅠ』
今年は仕事のシンクロニシティが続く年のようだ。
第188回から190回にかけての3回にわたり、今年の6月、三石地区と平取地区で相次いで行われた、1歳馬品評会(第188回~190回の1歳馬品評会PARTⅠ~Ⅲ)についての原稿を書かせてもらった。
それが、11月13日に開催された「担い手経営管理研修」では、公益社団法人日本軽種馬協会からパネラーとして声をかけていただいただけでなく、日本軽種馬青年部連絡協議会が主催する研修会では、司会の大役を仰せつかった。
かたやパネラーで、かたや司会。人気タレントばりの大抜擢に、むしろ見えない力がどこかで働いているのでは?と勘ぐってもしまったのだが、それぞれの研修会に呼んでいただいたのには理由があった。
まず声をかけていただいた「担い手経営管理研修」。本年度の開催は9月~12月までの全5回の開催となっているのだが、筆者が呼んでもらったテーマとは、「ITを活用した広報活動 産駒販売 求人」である。
以前、このコラムにも書かせてもらったのだが、忘れもしない2022年の12月、三石軽種馬生産振興会が主催する軽種馬講習会で、人生初の講演を行った際のテーマが、「SNSとのウマい付き合い方」だった。
ことの顛末は当コラムに執筆させてもらったのだが、その記事を読んでくれた日本軽種馬協会の関係者の方が、「村本ってITとか、SNSに強いのかも」と勘違いしてくれたに違いない(実はXもInstagramも表立ってはやっていません…)。
だが、勘違いの人間をサポート、いや、むしろ自分は後方支援だけでOKと思えるような心強いパネラーが、今回の講演では揃っていた。
その一人は新ひだか町静内に事務所を置いて、せりのライブ配信や競走馬事業のサイト運営などを行っている、株式会社ノードネットワークスの浅川和基代表。そして、せり市場を中心とした馬産地の情報をサイトから発信し続ける、馬市ドットコムの齊藤宗信氏である。
浅川代表とはせり会場などで頻繁に顔を合わせているし、齊藤氏とは2009年にこのコラムが始まって間もない頃に、その人物像を取り上げさせていただいた(第7回、8回の馬市ドットコム(Part1、2)。
2人とも、自分よりはるかにインターネットやITに精通しているとは思っていたが、研修会を前に3人で打ち合わせを行った際に、改めて、「自分は何も話さない方がいいかも」と思えた程に、知識も豊富だった上に、それぞれの立場から、ITやSNSについての意見を持っていた。
しかも、開催を前にしたZoomでの打ち合わせでは、JBBA業務部の小林孝平氏や、 数々の役職を歴任されたのち、現在は馬栄養飼養管理アドバイザーの朝井洋氏も交えて、研修会の内容を更に煮詰めていった。
ここでも2人は活発な意見交換を行っただけでなく、その意見に対する朝井氏の質疑応答を見た時に、このZoomの内容をそっくりそのまんま流せば、研修会が成り立つのではないかとさえ思った。
立場の無くなった自分をかわいそうに思ったのか、小林氏から、「村本さんは研修会の題材となるような、テーマを作ってもらえますか?」と話を向けられる。ここはライターとして、喜んで取り組ませてもらおうと思ったのだが、小林氏にその原稿を送ってから数日後、朝井氏から送られてきた研修会のシナリオを読んだ瞬間に衝撃を受けた。
自分の作ってきたテーマが、司会とパネラーのマンツーマン的な内容だったのに対して、朝井氏のシナリオはその枠を飛び越えて、会場の全てを引き込むところまで練り上げられていた。
しかも個々の話題ではなく、そこから波及していく内容や、パネラーとのクロストークまでも想定されている。こちらは三石の講習会を一度だけやらせてもらったものの、そもそも朝井氏は「日本ウマ科学会」における学術集会で座長を務めてきたなど、研修会や講習会の経験値が自分とはまるで違っていた。
パネラーとしても力不足、ライターとしてもテーマを作れないとなれば、ますます自分の存在価値は無くなっていく。しかしながら朝井氏からはメールで、「村本さんからもらったメモはとても参考になりました」と返事をいただいただけでなく、研修会当日にお会いした時も、「あのメモには、馬産地で仕事をされている方の意見が反映されていたので、そのあたりを村本さんにはお願いします」と研修会における自分の役割まで与えていただいた。
(次号に続く)