北海道馬産地ファイターズ
第193回 『研修会からの研修会 PARTⅡ』
担い手経営管理研修」の当日、事前の打ち合わせを含めた集合時間は15時ぐらいだったにもかかわらず、緊張もあってか、それよりも1時間半ほど早く会場に到着してしまった。
もちろん、会場には誰もいることがなく、そそくさと出直しを図ったわけだが、予定時間に再び会場へ戻ると、そこにはいかにも研修会ぽいレイアウトの机やいすが配置されていて、それを見た瞬間に「やれんのか俺?」という気持ちにもなった。
ただ、打ち合わせにおける、株式会社ノードネットワークスの浅川和基代表の発表が素晴らしく、それを見た上でシナリオを練り直してくれた、馬栄養飼養管理アドバイザーの朝井洋氏からのプランニングも非常に的確であり、話を聞いていく中で、「この講習会って、かなり盛り上がりそうじゃね?」との気持ちになっていった。
その予感は当たる。「ITを活用した広報活動 産駒販売 求人」とのテーマで行われた研修会であったが、先に日高管内における、各町内の農協の職員を招いての浅川氏からの発表、そして司会を務めた朝井氏からの質疑応答が行われたのだが、農協職員の方の顔を見ていると、浅川氏からの発表に誰もが目を凝らしていた。
その後の質疑応答におけるキーマンとなったのが、馬市ドットコムのサイトを運営している齊藤宗信氏である。
齊藤氏とはこの講習会が決まってから、事前の打ち合わせだけでなく、FacebookのMessageや電話などでも、どんな話をするかについて語り合ってきた。その際、齊藤氏からは、「僕が脱線しそうになったら、村本さん、お願いしますね」と言われていたのだが、農協の職員からの質疑応答に対する回答、そして要望は脱線どころか、このテーマの核心を突くものばかりだった。
それほど知識の無いサッカーに例えるのなら、司令塔である朝井氏から浅川氏を中心としたゲーム運びが指示。浅川氏はボールという名の「テーマ」を、鮮やかなドリブルという名の「トーク回し」や「パワーポイントを使った発表」でキープしながら、試合という名の講習会を作り上げていく。
質疑応答という名のペナルティーエリアにボールこと「テーマ」が入った時に、強烈なシュートという名の「回答」をしていくのが、パネラー陣の中ではストライカー的役割となった齊藤氏である。
一方、筆者は何をしていたかというと、シュートがバーなどに弾かれた時に、そのこぼれ球を再び齊藤氏へと戻して、チャンスならぬ「トークの継続」を図る、シャドーストライカー的な役割を意識した。
この試合運びならぬ、講習会運びが思うようにいくと、あっという間に時間は過ぎ去っていく。予定されていた時間をオーバーしそうになった時、朝井氏からタイムアップならぬ、結びの言葉が発せられた。
その時、まだまだ行けるという気持ちと、次の牧場経営者や後継者を対象とした講習会もどんとこい!という妙な自信ができあがっていた。それは朝井氏だけでなく、浅川氏や齊藤氏も一緒だったのかもしれない。
構成的には先ほどとほぼ一緒ながらも、朝井氏の時間の使い方はより的確となり、浅川氏も更に円滑にテーマ進行を行っていく。
こうなれば、あとは齊藤氏にシュートを決めてもらうだけとなる。講習会の終盤は、参加者との質疑応答に、とても長いアディショナルタイムと言えるほどの時間が取られていた。
参加者からの攻撃とも言える、様々な質問をクリアするどころか、しっかりと受け止めた朝井氏は、パネラーである3人へのアイコンタクトを図った上で、トークという名のボールを渡していく。
実は事前に朝井氏からは、パネラーがトークを主導していくシナリオも作られていた。あとは戦術ならぬ、シナリオ通りのトークテーマを展開していけば、テーマはゴールへと近づいていく。
ブラジル代表チーム史上、最高のチームと言われているのが1982年のスペインワールドカップの代表チームであり、その際、中盤を任されていたトニーニョ・セレーゾ、ファルカン、ソクラテス、ジーコは、「黄金のカルテット」とされている。
ポジションと役割こそ違っているが、この講習会における朝井氏、浅川氏、齊藤氏、ついでに筆者の4人もまた、「金箔のカルテット」と言ってもいいほどの面白い試合ならぬ、興味深い講習会が行えたのではないだろうか。
企画運営をしていただいたJBBA関係者と、アドバイザーと共に行った打ち上げも、講習会の成功を祝うかのように、かなり盛り上がったのだが、その際、筆者は次なる講習会に向けて、少しだけ不安を感じていた。
(次号に続く)