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第189回 『1歳馬品評会 PARTⅡ』

2024.09.18

 「いい馬」に対する概念を掴めないまま臨んだ、三石地区の軽種馬1歳馬育成管理品評会。しかも、審査員(兼取材者)としての参加となったことで、必ず「いい馬」を選抜しなければいけない。


 三石地区の1歳馬品評会は、まずJAみついしに関係者が集合。そこから審査員を乗せたバスが牧場に移動していく形で行われた。


 そのバスに同乗していたのが、JRA日高育成牧場の浮島理場長や、JBBA日本軽種馬協会静内種馬場の遊佐繁基場長といった、筆者からすれば「本物の審査員」たち。


 しかもバスの中には、全国の1歳市場に参加し、ブリーズアップセールの上場馬を購買している、JRA日高育成牧場の職員の姿も見受けられた。


 こうなると「いい馬」というよりも、場長2人を含めた、みんなの意見に沿った馬を選ばなければいけないのでは?というプレッシャーも出てくる。


 各牧場で出陳馬の審査を行ったあと、バスで移動する際には、浮島場長や遊佐場長に、「あの馬どうでしたか?」と恐る恐る感想を聞いてみて、自分の相馬眼とそれほど違いが無かった時には、ホッと胸を撫でおろした。


 ただ、三石の品評会は牡と牝でそれぞれの最優秀馬を選出するだけでなく、2位(優秀賞)と3位(優良賞)に加えて、ベストターンドアウト賞も選ぶので、多くの馬を評価できる余裕もあった。


 心に余裕が生まれてくると、出陳馬の全ての長所を探したくなってくる。「今は筋肉も付ききっていないけど、血統的にもゆくゆく良くなってくるはず」「ハンドラーとの意思の疎通は図れていないが、この闘争心は競馬向きとなるかも」など、目の前の馬の評価ではない加点をしそうになって、さすがにそれは、「あくまで個人の感想です」との気持ちに抑え込んだ。


 JRA日高育成牧場の職員に聞くと、ブリーズアップセールに上場する購買馬を探すに当たっては、立ち姿や歩様だけでなく、手入れ具合に加えて、人間と馬との信頼関係や環境整備も採点基準に入ってくるという。その話を聞いてから、「ここの牧場は道路沿いの掃除刈りがされているなあ」などの気付いたことも、ボーナスポイントとして採点を行うことにした。


 14頭全ての審査が終わると、審査員を乗せたバスは、審査会場となるJAみついしへと戻ってきた。会議室で始まった審査はまず、浮島場長と遊佐場長が牡馬の最優秀馬候補をリストアップ。その馬たちについて、JRA日高育成牧場の職員(with村本浩平)の意見も交える形で最終的な順位を決めていった。


 牡馬の選考でいうと、自分の上位3頭は順位こそ違えど、最優秀賞といった賞の対象馬となっており、牝馬も2頭がランクインしていた。興味深かったのは場長2人の意見も相違があったことであり、改めて「いい馬」の見方は人それぞれだと感じさせられた。


 また、三石地区の品評会で興味を惹かれたのは審査員のみならず、この品評会に同行した全ての人を対象とした、「みんなが選んだ馬大賞」という項目だった。


 これはJAみついしに到着した時に、農協の職員から渡されたA4サイズの紙を見て知ったのだが、牡馬、牝馬関係なく、この品評会で最も良かった馬を選ぶという非常にシンプルかつ、もっとも説得力のある審査方法だった。


 自分も審査からは外れたものの、気になった馬の名前を書いて提出した。その馬は大賞に選ばれなかったものの、誰もが審査員となり、その多数決で決める「みんなが選んだ馬大賞」は、最も意義のある賞ではではないかという気もしてきた。


 三石地区の品評会の審査を終えて、審査員としてレベルアップした自分が次に臨んだのは、平取町軽種馬振興会が主催する1歳馬の品評会となった。


 びらとり温泉「ゆから」に集合した関係者の中には、浮島場長や遊佐場長に加えて、ホッカイドウ競馬調騎会の角川秀樹会長。そして、JRA札幌競馬場の植田嘉奈子場長の姿もあった。


 システムは三石地区の品評会と一緒であり、バスに同乗して最初の出陳馬のいる牧場へと向かっていく。そこで馬体や曳き馬、そして、牧場の環境整備も加点していったのだが、今回は牡馬、牝馬問わずに金賞、銀賞、銅賞の上位3頭しか選出できない事実を知って、審査方法に迷いが出てくる。その理由は、「最初に審査した馬が基準点となってしまうことで、後から出てきた馬の方が点数が高くなってしまう」という「М-1」と同じ審査方法に気付いたからだった。
(次号に続く)

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