北海道馬産地ファイターズ
第191回 『まさかの冠 』
生まれて初めて、佐賀競馬場に行ってきた。
11月4日(振月)、佐賀競馬場ではJBC競走(JBCレディスクラシック、JBCスプリント、JBCクラシック)が開催される。その際、同日にJBC2歳優駿が行われる門別競馬場との、コラボキャンペーンが実施されることとなった。
その一環として佐賀競馬YouTubeチャンネルの「SAGAリベンジャーズ」に出演中のJRA元騎手の佐藤哲三さんと、タレントの藤江れいなさんが、8月27日(火)に門別競馬場へ来場。ホッカイドウ競馬YouTubeチャンネルの「なまちゃき」に出演して、予想対決を行った。そのお返しという形で、9月29日(日)には「なまちゃき」解説者である筆者と、番組のMCを務めるmikuさんが佐賀競馬場へと乗り込み、「SAGAリベンジャーズ」へと出演する運びとなったのだ。
筆者が九州の地を踏むのはこれで3回目となる。その内容に関しては第104回~106回の『馬産地通信、九州へ』、そして第166回~168回の『九州再上陸』にも書かせていただいたのだが、九州は足を運ぶたびに好きな場所となっている。
それはラーメンやうどんといった、現地の食べ物が美味しいだけでなく、九州の牧場やせり会場といった施設に赴いたり、競馬関係者の方とお会いするのも、楽しみを更に倍増させてくれるからだ。
これまでは勝手に遠いと思いこんでいた佐賀競馬場であったが、福岡空港からレンタカーに乗り込むと、1時間もかからずに到着することができた。しかも、駐車場も広い上に、スタンドの大きさも門別競馬場の約10倍(あくまで筆者の感想です)はある。
それにもかかわらずコース1周の距離は1,100㍍と、門別競馬場よりも小回りで、直線の長さも200㍍しか無い。フルゲートでも12頭までとなっており、全国の競馬場では唯一の右回りで周回するパドックも、非常にコンパクトにまとまっている。
筆者が佐賀競馬場に行った日は、手書き掲示板運用の最終日でもあり、パドックでは掲示板の写真を撮る競馬ファンの姿もあった。スタンドといった施設が大きいにもかかわらず、古めかしい部分も残されているのは、佐賀競馬が繁栄と衰退、そして復興の歴史を経てきたからだと言える。
復興の一つの区切りと言えるのが、JBC開催であり、それに合わせて様々な企画を行っている。それは門別競馬場とのコラボキャンペーンであり、そして、史上初の地方競馬場アイドルである、「UMATENA」の存在とも言えるだろう。
こういった企画に関しては、佐賀県競馬組合経営企画課広報担当の飯田健史さんの尽力によるところが大きい。今回の佐賀遠征だけでなく、競馬場内のロケに関しても、飯田さんは様々な面で便宜を図ってくれていた。誌面上で大変申し訳ないが、改めて飯田さんには感謝を申し上げたい。
その飯田さんの計らいだと思うのだが、佐賀競馬場に行く数日前に、知り合いから、「29日にはこんなレースがあるみたいですよ」との連絡が来た。気になってその日のレースを調べていると、7レースには、「村本浩平さん来場記念」との表記されていた。しかも、その前の6レースには「mikuさん来場記念」もある。
すぐにmikuさんに連絡すると、とても驚いていただけでなく、「なまちゃき」の豊田ディレクターに尋ねたところ、ホッカイドウ競馬の関係者も含めて、全くの初耳だったという。
当初は「なまちゃき」のロケと、「SAGAリベンジャーズ」の出演しか念頭に無かったのだが、こうなると話が違ってくる。冠レースだけに、ひょっとしたらプレゼンターもあるのではと、スーツケースの中にネクタイとジャケットを詰め込んだ。
だが競馬場では、飯田さんから冠レースに関する話が一言も出てこない。結局、何事も無かったかのように、6レースには「mikuさん来場記念」、その後の7レースには「村本浩平さん来場記念」が行われた。
ただ、自分の名前を佐賀競馬場で実況を行っている、佐藤泉アナウンサーのいい声で呼んでもらうのは、かなり気持ちがいい。しかも、このレースの出走馬が活躍した暁には、「村本浩平」の名前が広まることにもなる。
そう思うと、これからレース名に相応しい生き方をしなければいけないという、プレッシャーを感じてきた。
佐賀競馬では素朴で温かなおもてなしを、「うまてなし」と呼んでいる。まさにこのレース名は佐賀競馬からの「うまてなし」なのだろう。このコラムが掲載される頃にはJBCも開催されているが、多くの競馬ファンや競馬関係者を「うまてなし」したJBC開催は、大成功をおさめているに違いない。