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第49回 「3×3」

2015.04.16
 3月21日、中山競馬場で行われた3歳牝馬による重賞レース、第29回フラワーカップは、1番人気に支持されたアルビアーノ(USA)が逃げ切って優勝した。Harlan's Holiday(ハーランズホリデー=USA)産駒はアルビアーノを含めて、これまで11頭が中央競馬に登録され、レースに出走した経歴を持つが、これが産駒のJRA重賞初勝利となった。
 1999年に米国で生まれたハーランズホリデーは2002年春、フロリダダービー、ブルーグラスSとGⅠレースで2連勝を飾り、勇躍ケンタッキーダービーに向かったが、結果は7着。1番人気に応えることはできなかった。この時に優勝したウォーエンブレム(USA)、6着だったケイムホーム(USA)、8着のヨハネスブルグ(USA)と、3頭が現在、日本で種牡馬として暮らしているのはおもしろい因縁だ。

 ハーランズホリデーは4歳まで現役を続け、通算22戦9勝の成績を残した。種牡馬に転向後の2012年にはブリーダーズカップ・ジュヴェナイルで産駒シャンハイボビーが優勝するなど、2歳部門で年間獲得賞金額の新記録を作るほどの成功を収めた。残念ながら2013年に死亡したため、今後、産駒が増えることはない。

 アルビアーノのフラワーカップはJRA重賞の初勝利となったが、エスメラルディーナ(USA)が昨年、川崎競馬場で行われた関東オークスを制しており、日本の重賞レースは2勝目だった。アルビアーノは1994年にJRA賞最優秀3歳牝馬(現2歳牝馬)に選ばれたヤマニンパラダイス(USA)の近親に当たる。2014年3月に米フロリダで行われたファッシグ・ティプトンの2歳せりに出場し、40万ドルで落札された。

 年が明けて3ヵ月がたち、今年はハーランズホリデーのようにJRA重賞で初勝利を挙げる種牡馬が目立っている。

 スクリーンヒーローはシンザン記念のグァンチャーレが初の重賞勝ちとなった。ヴァーミリアンはフェアリーSのノットフォーマル、アドマイヤドンは日経新春杯のアドマイヤデウス、ハービンジャー(GB)は京成杯のベルーフ、Discreet Cat(ディスクリートキャット=USA)は根岸Sのエアハリファ、スニッツェル(AUS)はアーリントンCのヤングマンパワーが父に初めてのタイトルをプレゼントした。

 この中で気になったのがヴァーミリアン産駒のノットフォーマルだ。
 ヴァーミリアンは父エルコンドルパサー(USA)、母スカーレットレディとの間に生まれた。2002年生まれはディープインパクトなどと同期だ。母スカーレットレディはサンデーサイレンス(USA)の娘である。ノットフォーマルの母リミッターブレイクはマンハッタンカフェの娘で、マンハッタンカフェの父はサンデーサイレンスだ。つまりノットフォーマルは父と母の双方の祖父にサンデーサイレンスを持つサンデーサイレンスの3×3という近親交配の結果誕生した。

 サンデーサイレンスの大成功を受け、国内にはサンデーサイレンスの遺伝子があふれている。種牡馬にも繁殖牝馬にもサンデーサイレンスのDNAを持っていない馬を探す方がむずかしいのが現状だ。遺伝子の偏りを不安視する向きもある。しかしノットフォーマルを見て、解決策があるのを知った。時間だ。

 サンデーサイレンスが日本で種牡馬活動をしたのは1991年から2002年までの12年間。直子が最後に出走したのが2012年8月。サンデーサイレンスは少しずつ表舞台を離れ、競馬を脇から支える裏方さんに変わりつつある。利根川や信濃川のような一級河川だったものが、今では地下水脈へと様変わりするようなものだろうか。

 ヴァーミリアンはダイワメジャー、ダイワスカーレットなどの近親という血統。産駒の動きの良さなどから馬産地でも人気が高く、1年目の2011年から200頭を超える種付けを行い、昨年も180頭の牝馬に種付けをしている。ノットフォーマルの成功により、虚弱体質になることもあると避けられることも多い3×3の近親交配にも道筋をつけた。

 もう一つ、いいこともあった。フェアリーSでコンビを組んだ黛弘人騎手にとってもJRA重賞初勝利。10年目の記念碑になった。
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