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第136回 「更新」

2022.07.08
 5月29日にあった第89回東京優駿(日本ダービー)は武豊騎手騎乗のドウデュース(牡3歳、栗東・友道康夫厩舎)が優勝した。武豊騎手は歴代最多の6度目のダービー制覇。友道康夫調教師は現役最多となる3度目の優勝だった。ダービーを知り尽くすジョッキーとトレーナーが初めてダービーでコンビを組んで栄冠を手にした。
 ドウデュースの勝ち時計2分21秒9(東京競馬場 芝2400メートル)は、前年にシャフリヤールがマークした2分22秒5を0秒6更新するダービー新記録となった。逃げたデシエルトが作ったペースは淀みがなく、2400メートルを800メートルごとに3分割すると、47秒1→47秒8→47秒0となる。この流れをドウデュースは後方で待機し、最後の直線でメンバー中2番目の33秒7の末脚を繰り出し、優勝に結びつけた。

 1932年、目黒競馬場の芝2400メートルで行われた第1回ダービーで優勝馬ワカタカがマークした勝ち時計は2分45秒4(1959年まではコンマ5分の1表示なので現代表示に修正)だった。90年後、勝ち時計は23秒5も短縮された。

 1934年、第3回ダービーは舞台を現在の東京競馬場に移して行われた。フレーモアの勝ち時計は2分45秒0だった。1937年、第6回ダービーは史上初めて牝馬のヒサトモが優勝した。勝ち時計は2分33秒6。ガヴアナーが第4回ダービーで記録した2分42秒2を一気に8秒6も更新し、2分30秒台に突入した。

 1963年、第30回ダービーでメイズイが大記録を達成する。2着のグレートヨルカに7馬身もの差をつけ、2分28秒7でゴールした。初めて2分30秒を切るタイムで優勝を飾った。メイズイの記録は1972年、第39回ダービーでロングエースに破られるまでレースレコードとして残る優秀なものだった。

 その後、1973年、第40回ダービーでタケホープが2分27秒8を出して2分27秒台に突入し、1982年、第49回ダービーでバンブーアトラスが2分26秒5と2分26秒台をマーク。1990年、第57回にアイネスフウジンが2分25秒3を記録して、旧東京競馬場でマークされたダービーの優勝タイムはいったんピリオドが打たれた。

 東京競馬場のコースが改修され、2003年にリニューアルされたコースで初めての第70回ダービーが行われ、ネオユニヴァースが2分28秒5で駆け抜けた。2004年、第71回ダービーでキングカメハメハが2分23秒3という驚異的なタイムをたたき出した。この記録を破ったのがキングカメハメハの息子であるドゥラメンテだった。2015年、第82回ダービーで2分23秒2を記録し、父を超えた。2019年、第86回ダービーでロジャーバローズが初めて2分22秒台となる2分22秒6で走り、シャフリヤール、ドウデュースへとつながった。

 ドウデュースの勝ち時計2分21秒9から1ハロン(200メートル)ごとの平均ラップを求めると、11秒825となる。スタートからゴールまで、200メートルを12秒を切るラップで進まなければ、この勝ち時計をクリアすることはできないのだ。近代日本のサラブレッドはほんとうに速くなったと思う。

 中央競馬の芝2400メートル戦で2分21秒9以下のタイムをマークしたことのある馬は8頭しかいない。第89回ダービーの1着ドウデュースと2着のイクイノックス(同タイム)。残りの6頭は2018年のジャパンカップの上位6頭だ。アーモンドアイが2分20秒6で優勝。2着のキセキが2分20秒9、3着のスワーヴリチャードと4着のシュヴァルグランが同タイムの2分21秒5、5着のミッキースワローと6着のサトノダイヤモンドが2分21秒9だった。

 東京競馬場の芝2400メートルといえば、僕のような古い競馬記者にとっては、1989年のジャパンカップが今でも衝撃的な印象として残る。ニュージーランドの牝馬ホーリックスと日本のオグリキャップがゴール前で競り合い、クビ差でホーリックスが優勝。勝ち時計は驚異的な2分22秒2だった。電光掲示板に「2」が4つ並んだ光景は忘れられない。

 ダービーは過去4年間で3度もレースレコードが更新されているが、JRAの平地GⅠ24レースの中で、もっとも長くレースレコードが保持されているのは、エリザベス女王杯だ。2001年に京都競馬場の芝2200メートルでトゥザヴィクトリーがマークした2分11秒2は21年後の今も健在だ。京都競馬場は大規模な改修工事が行われており、エリザベス女王杯が京都競馬場で行われるのは早くても2023年。今年まではまだトゥザヴィクトリーの名前が残ることになる。

 ドウデュースのダービー記録はかなり優秀だ。エリザベス女王杯のトゥザヴィクトリーのように更新されず、いつまで残る記録になるのか。それとも、新しいダービー馬が軽々と超えていくのか。
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