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第7回 不良馬場でのダービー

2008.10.25
 9月7日に行われた第28回新潟2歳Sは1番人気のセイウンワンダーが優勝した。予想したより後方からのレースになってしまったが,岩田康誠騎手は想定外の出来事にも慌てることなく,馬場の大外に出して,セイウンワンダーの末脚を見事に引き出した。
 勝ちタイムは1分35秒4。新潟2歳Sが1600メートルで行われるようになった2002年以降,もっとも遅い優勝タイムとなった。

 勝ちタイムは遅くなったのには,はっきりとした理由がある。この日は雨の影響で第1レースから,芝・ダートとも不良馬場のコンディションだったのだ。新潟競馬場は水はけのいいことで知られる。「日本一の芝コース」と呼ばれることもあり,めったに不良馬場になることはない。

 調べてみると,新潟競馬場の芝コースが不良馬場になったのは,2006年8月12日以来のことだった。約2年ぶり。さらにさかのぼって,新潟競馬場の芝の重賞レースで不良馬場になったのはいつだったかを調べてみると,なんと1989年9月の新潟3歳S(現新潟2歳S)だということがわかった。今年の新潟2歳Sに出走した15頭は20年に1度あるかないかという珍しい状況でレースを迎えたのだ。

 競馬記者になって26年がたつ。改めて振り返ってみると,最近の馬場は雨に強くなったと痛感する。「泥田のような」とか「どろどろの」という形容をしていた芝の不良馬場が,今では天然記念物のようにたまにしか見ない現象になった。

 最近20年間の芝の重賞レースで不良馬場になったのは,わずかに52レースである。

 これを年ごと,競馬場ごとにまとめてみた。

 現在,中央競馬に芝の重賞レースは年間109レースある。04年から昨年まで4年連続して,不良馬場の出現回数は年1回。いかにJRAの競馬場のコースコンディションが良好に保たれているのかがわかる。

 東京競馬場の馬場管理の方法を取材したことがある。東京競馬場では,コースの内側を中心に約3万平方メートルの芝生の養成地がある。ここで向こう3年分の芝を育てる。コースが大きなダメージを受けた場合は,養成地から土ごと切り取って傷ついた場所に移植を行う。

 東京競馬場の芝コースは1周約2080メートル。面積は約10万平方メートルになる計算だ。サッカー場なら13面分にあたる広さをすべて人力で管理している。45人の係員が連日,丹精込めて初めて,競馬の開催に耐え得る強い芝が作られている。

 そこで日本ダービーの馬場状態を調べてみた。最後に不良馬場で行われたダービーは1969年の第36回だった。大崎昭一騎手が手綱を取ったダイシンボルガードが優勝している。日本の競馬ファンはもう39年間も不良馬場のダービーを見たことがないことがわかった。死ぬまでに一度は不良馬場のダービーも観戦してみたいと思う。


JBBA NEWS 2008年10月号より転載
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