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第5コーナー ~競馬余話~

有吉正徳 第5コーナー ~競馬余話~

第20回 8歳カンパニーの挑戦

 毎日王冠で8歳馬カンパニーが見せた走りには心底,感心させられた。

 逃げるウオッカを射程に入れ,インコースの5,6番手を追走。最後の直線,残り200メートルを切ってから猛然とウオッカに襲いかかり,1馬身かわして先頭でゴールインした。

 ウオッカが上がり33秒8の末脚で逃げ込みをはかるところをカンパニーは33秒0という瞬発力で一蹴した。とても8歳とは思えない,はつらつとした走りだった。

 毎日王冠は4歳だった05年がサンライズペガサスの7着。06年がダイワメジャーの5着。08年もスーパーホーネットの5着に終わっていた。これが4度目の挑戦で初優勝となった。驚いたことに3着にもカンパニーと同期の8歳ハイアーゲームが食い込み,ベテラン健在をアピールした。

 カンパニーはこれで重賞7勝目。05年の京阪杯に始まり,06年の産経大阪杯,07年の関屋記念,08年の中山記念とマイラーズカップ,そして09年の中山記念と毎日王冠。5年連続の重賞勝ちはスピードシンボリ,スズパレードと並び史上2位タイの記録だ。ちなみに史上最多はドウカンヤシマの6年連続である。

 また,この勝利により,カンパニーは獲得賞金を6億9,971万8,000円とし,10月11日現在,ウオッカ(10億1,746万6,000円)に続く現役賞金ランキング2位になった。この賞金ランキングは地方競馬や海外遠征を除き,JRAのレースだけで稼いだ賞金によるものである。

 これだけの実績を残しながら,カンパニーにはまだ手に入れてないものがある。G1優勝というタイトルだ。3歳秋の菊花賞がG1初挑戦だった。結果はデルタブルースの9着。以来,通算で12度の挑戦をし,着順では07年天皇賞・秋の3着が最高(1着はメイショウサムソン)。着差では08年天皇賞・秋のタイム差なしの4着(1着は1分57秒2のウオッカ)がある。

 毎日王冠が終わった後,音無秀孝調教師(55)は会見で言った。「G1を取らせてやりたいんです。この成績なのに評価が低いんです」。重賞を7勝もしていながらG1級のタイトルを取っていないのは,重賞8勝でG㈵級未勝利のバリモスニセイぐらいだ。種牡馬として声がかかってもおかしくないのだが,そうはなっていない。

 それもこれも地味な血統のせいだと想像される。父ミラクルアドマイヤは父トニービン(IRE),母バレークイーン(IRE)の血統。半兄にダービー馬フサイチコンコルド,半弟に皐月賞馬アンライバルドがいる華麗な血筋を持つが,自身は1勝したのみで引退した。ミラクルアドマイヤは血統の良さを買われて種牡馬になった。初年度の00年は39頭に種付けしたが,その後は26頭,10頭と漸減し,03年はついに1頭になった。そこに現れたのが初年度産駒の中から出たカンパニーだった。

 04年1月の新馬戦を勝ち上がると,2戦目のきさらぎ賞は敗れたが,あざみ賞,ベンジャミンSと2連勝し,あっという間にオープン馬になった。同じ頃,ジョーファングという活躍馬も出て,この年,ミラクルアドマイヤは171頭もの繁殖牝馬に種付けをするほどの人気を博した。だがカンパニーを超える活躍産駒を出すことはかなわず,昨年08年限りで種牡馬を引退し,現在は乗馬として暮らしているという。カンパニーはミラクルアドマイヤが生んだ突然変異だと思われているのだろう。その競走成績が正当に評価されていない。

 音無調教師の話では毎日王冠の後,カンパニーは天皇賞・秋,そしてマイルチャンピオンシップへと駒を進める予定だ。この原稿が読まれる頃,すでに天皇賞・秋は終わり,マイルチャンピオンシップに備えているだろう。できれば,いい結果が出ていればいいと思う。グレード制が敷かれた84年以降,8歳馬がG㈵レースを制したことはない。前人(馬)未到の記録に挑む。


JBBA NEWS 2009年11月号より転載