第5コーナー ~競馬余話~
第21回 血統論の正解と不正解
2009.12.01
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比叡ステークスは毎年,秋の京都競馬場で行われる特別レースだ。最近は1600万下の芝2400という条件で行われているが,1400だったり,2000だったりした時期もあった。
のちのジャパンカップ優勝馬マーベラスクラウンが3連勝目を飾り,重賞戦線へのステップとしたのが93年。また名脇役のシルクフェイマスも03年の勝利で弾みをつけ,次走の日経新春杯で重賞初制覇を果たしている。
そんな比叡ステークスが今年も11月14日に京都競馬場で行われた。エリザベス女王杯の前日に行われた準メーンレースには,かつてないほどの「豪華メンバー」がそろった。
1番人気はザサンデーフサイチ(牡5歳)だった。父は菊花賞馬ダンスインザダーク,母は牝馬ながら天皇賞・秋を制したエアグルーヴ。半姉のアドマイヤグルーヴはエリザベス女王杯2連覇の記録を残した「良血の塊」だ。ザサンデーフサイチは04年のセレクトセールに上場され,4億9千万円(税抜き)で落札された。ここまで11戦3勝。2度の長期休養はあったが,徐々に血統の良さを出してきた。
8番人気と評価を落としていたが,ニュービギニング(牡5歳)も12頭の出走馬の中に名を連ねていた。父アグネスタキオン,母ウインドインハーヘア(IRE)。そう3冠馬ディープインパクトの2歳年下の半弟である。3枠3番に入ったのはエーシンダードマン(牡5歳)だった。父ダンスインザダーク,母エイシンマッカレン(USA)。半兄のエイシンデピュティは宝塚記念を制したG1馬だ。ただの条件レースでしかない比叡ステークスにG1馬の弟が3頭もそろった。出走馬の中にはさらにナリタキングパワー(牡4歳)もいた。こちらは半妹のタガノエリザベート(牝2歳)がファンタジーSで怒濤の追い込みを決め,重賞制覇を果たしたばかりだった。
良血馬の競演。比叡ステークスは血統ファンが固唾をのんで見守るほどの注目レースとなった。
ゲートが開き,先手を奪ったのはメトロシュタインだった。1000通過が1分1秒0。メトロシュタインの福永祐一騎手は,そこから12秒8−13秒0−13秒0とラップを落とし,逃げ込みをはかった。注文通りのレースになったが,メトロシュタインは粘りきれずに5着。優勝したのは内からスルスルと伸びたメイショウドンタク(牡3歳)だった。「良血軍団」はエーシンダードマンの3着が最高でニュービギニングは4着,ナリタキングパワーは9着,ザサンデーフサイチは10着という結果だった。
改めて思う。競馬の勝因敗因にはいくつものファクターが絡み合っている。当たり前のことだが,「血統」だけが勝敗を決するわけではない。比叡ステークスはそれを教えてくれた。
その一方で,血統がものをいったレースもあった。10月にあった第70回菊花賞がそうだった。結果は1着スリーロールス,2着フォゲッタブルとダンスインザダークの息子が上位を独占した。ダンスインザダークは96年に自身,菊花賞を制しているが,種牡馬としての菊花賞実績はさらにすごい。
これまでにザッツザプレンティ(03年),デルタブルース(04年),そして今年のスリーロールスと3頭の菊花賞馬を送り出したほか,ファストタテヤマ(02年)とフォゲッタブル(09年)が2着に食い込んでいる。これまでに計11頭が出走して3勝2着2回。連対率は4割5分を超えるハイアベレージだ。
菊花賞をスリーロールスが制したことで,今年の3冠レースは見事な決着をみた。皐月賞のアンライバルド(父ネオユニヴァース),ダービーのロジユニヴァース(父ネオユニヴァース)ときて,菊花賞のスリーロールスで3冠レースはすべて父子2代制覇という共通項でまとまったのだ。
血統で決まるレースもあれば,決まらないレースもある。この秋,当たり前の競馬の本質を思い知った。
JBBA NEWS 2009年12月号より転載
のちのジャパンカップ優勝馬マーベラスクラウンが3連勝目を飾り,重賞戦線へのステップとしたのが93年。また名脇役のシルクフェイマスも03年の勝利で弾みをつけ,次走の日経新春杯で重賞初制覇を果たしている。
そんな比叡ステークスが今年も11月14日に京都競馬場で行われた。エリザベス女王杯の前日に行われた準メーンレースには,かつてないほどの「豪華メンバー」がそろった。
1番人気はザサンデーフサイチ(牡5歳)だった。父は菊花賞馬ダンスインザダーク,母は牝馬ながら天皇賞・秋を制したエアグルーヴ。半姉のアドマイヤグルーヴはエリザベス女王杯2連覇の記録を残した「良血の塊」だ。ザサンデーフサイチは04年のセレクトセールに上場され,4億9千万円(税抜き)で落札された。ここまで11戦3勝。2度の長期休養はあったが,徐々に血統の良さを出してきた。
8番人気と評価を落としていたが,ニュービギニング(牡5歳)も12頭の出走馬の中に名を連ねていた。父アグネスタキオン,母ウインドインハーヘア(IRE)。そう3冠馬ディープインパクトの2歳年下の半弟である。3枠3番に入ったのはエーシンダードマン(牡5歳)だった。父ダンスインザダーク,母エイシンマッカレン(USA)。半兄のエイシンデピュティは宝塚記念を制したG1馬だ。ただの条件レースでしかない比叡ステークスにG1馬の弟が3頭もそろった。出走馬の中にはさらにナリタキングパワー(牡4歳)もいた。こちらは半妹のタガノエリザベート(牝2歳)がファンタジーSで怒濤の追い込みを決め,重賞制覇を果たしたばかりだった。
良血馬の競演。比叡ステークスは血統ファンが固唾をのんで見守るほどの注目レースとなった。
ゲートが開き,先手を奪ったのはメトロシュタインだった。1000通過が1分1秒0。メトロシュタインの福永祐一騎手は,そこから12秒8−13秒0−13秒0とラップを落とし,逃げ込みをはかった。注文通りのレースになったが,メトロシュタインは粘りきれずに5着。優勝したのは内からスルスルと伸びたメイショウドンタク(牡3歳)だった。「良血軍団」はエーシンダードマンの3着が最高でニュービギニングは4着,ナリタキングパワーは9着,ザサンデーフサイチは10着という結果だった。
改めて思う。競馬の勝因敗因にはいくつものファクターが絡み合っている。当たり前のことだが,「血統」だけが勝敗を決するわけではない。比叡ステークスはそれを教えてくれた。
その一方で,血統がものをいったレースもあった。10月にあった第70回菊花賞がそうだった。結果は1着スリーロールス,2着フォゲッタブルとダンスインザダークの息子が上位を独占した。ダンスインザダークは96年に自身,菊花賞を制しているが,種牡馬としての菊花賞実績はさらにすごい。
これまでにザッツザプレンティ(03年),デルタブルース(04年),そして今年のスリーロールスと3頭の菊花賞馬を送り出したほか,ファストタテヤマ(02年)とフォゲッタブル(09年)が2着に食い込んでいる。これまでに計11頭が出走して3勝2着2回。連対率は4割5分を超えるハイアベレージだ。
菊花賞をスリーロールスが制したことで,今年の3冠レースは見事な決着をみた。皐月賞のアンライバルド(父ネオユニヴァース),ダービーのロジユニヴァース(父ネオユニヴァース)ときて,菊花賞のスリーロールスで3冠レースはすべて父子2代制覇という共通項でまとまったのだ。
血統で決まるレースもあれば,決まらないレースもある。この秋,当たり前の競馬の本質を思い知った。
JBBA NEWS 2009年12月号より転載