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第5コーナー ~競馬余話~

有吉正徳 第5コーナー ~競馬余話~

第54回 「復活」

 8月8日、JRA札幌競馬場で行われたメインレース、札幌日経オープン(芝2600㍍)で、かつて「ダービー候補」と言われたペルーサ(牡8歳、美浦・藤沢和雄厩舎)が実に5年ぶりの勝ち星を挙げた。

 1周目の直線で先頭に立つ積極的なレース運びで長丁場を克服。ゴール前ではタマモベストプレイ、ワールドレーヴなどの追撃を封じ込め、21戦ぶりの白星を飾った。勝ちタイムは2分38秒7のコース新記録。従来の記録を0秒1更新してみせた。初めてコンビを組んだクリストフ・ルメール騎手はゴールすると、左手でガッツポーズをつくった。会心の騎乗となったようだ。ルメール騎手は「後ろで走っているとリラックスしすぎていた。刺激を与える意味で先行させた」とレースを振り返った。ルメール騎手の好判断だった。

 ペルーサは父ゼンノロブロイ、母アルゼンチンスター(ARG)との間に2007年3月20日、北海道の社台ファームで誕生した。ペルーサという馬名はサッカーの名選手ディエゴ・マラドーナ(アルゼンチン)のニックネームだという。母の馬名アルゼンチンスターからイメージされた。

 2009年11月、東京競馬場でデビューした。新馬、500万下と2連勝。3戦目の若葉S(阪神競馬場)では後の天皇賞馬ヒルノダムールを半馬身差で下して優勝。デビューから3連勝を飾った。4戦目はダービートライアルの青葉賞。単勝1.4倍の1番人気に支持されたペルーサは、ここでも楽勝劇を演じる。中団を進み、残り400㍍付近で先頭に立ち、あとは後続を引き離すばかり。メンバー中最速の上がり33秒8の末脚で堂々のゴールインを果たした。4馬身差の2着になったのは、その後重賞5勝することになるトゥザグローリーだった。2番人気で臨んだダービーは6着。この青葉賞の勝ち星が札幌日経オープンで優勝するまでの最後の勝ち星となった。

 JRAに残る勝利間隔の従来の最長記録はアドマイヤセナの5年2ヵ月16日だった。ペルーサの青葉賞は2010年5月1日。札幌日経オープンは2015年8月8日だったので、その勝利は5年3ヵ月と8日ぶり。ペルーサは勝ちタイムばかりでなく、勝利間隔でも新記録を達成した。

 ペルーサが通算5勝目を挙げるのに苦労したのは出遅れ癖とノドの病気があったせいだ。スタートが苦手で、ここ一番というところでたびたび出遅れた。ノドの手術のため1年7ヵ月あまり実戦から離れたこともあった。それにしても、よくあきらめずに走り続けたと思う。

 ペルーサが今後挑むべき記録が2つある。今回のペルーサのように勝利と勝利の間隔が5年以上空いた馬はアドマイヤセナ、リュートハーモニー、アドマイヤコマンド、テングジョウと全部で5頭を数えるが、過去の4頭はいずれも久々の勝利を最後に引退しており、「次の1勝」を加えることができなかった。勝てない時期を乗り越えて勝利を手にした上で、もう一度、気力と体力を奮い立たせることは相当にむずかしいようだ。

 ペルーサが挑むべき、もう一つの記録というのはダンスインザモアの持つ重賞競走勝利間隔記録だ。

 2002年生まれのダンスインザモアは2005年3月20日、皐月賞トライアルのスプリングSを制して重賞勝ち馬になった。しかし、その後は勝ち運に恵まれず、12連敗した。通算4勝目は2007年1月13日のオープン特別、ニューイヤーS(中山競馬場)だった。それは1年10ヵ月ぶりの勝ち星だった。そこから、また苦難の道が始まる。16連敗。この間には1年4ヵ月、9ヵ月という長い休養もあった。

 迎えた2010年11月20日の福島記念(福島競馬場)で最後方を進んだ15頭立て12番人気のダンスインザモアはメンバー中最速の末脚を繰り出し、見事に優勝を飾った。スプリングSから実に5年8ヵ月がたっていた。

 ペルーサがダンスインザモアを超えるためには来年以降も現役を続ける必要がある。