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第101回 「引退」

2019.08.09
 中央競馬で2度首位種牡馬に輝き、ドゥラメンテとレイデオロという2頭のダービー馬を送り出したキングカメハメハが種牡馬を引退することになった。免疫機能が低下し、ここ数年は体調不良に苦しんでいた。今年は種付けを中止していたが、回復の兆しはなく、このまま種牡馬を引退して、功労馬として余生を送ることになった。
 キングカメハメハは2001年3月20日北海道のノーザンファームで生まれた。父キングマンボKingmambo(USA)、母マンファス(IRE)。前年の米キーンランド・ノベンバーセールで吉田勝己ノーザンファーム代表が65万ドルで落札したのがマンファスだった。おなかの中には、のちのキングカメハメハが入っていた。

 母マンファスは英国で現役生活を送り、7戦0勝に終わったが、1997年にPetardia(GB)との間に産んだザデピュティThe Deputy(IRE)が2000年に米GⅠのサンタアニタダービーを制していた。

 生まれたばかりのキングカメハメハはこの年のセレクトセールに出場し、金子真人オーナーに7,800万円で落札された。当歳では10番目、サンデーサイレンス(USA)産駒以外では3番目の高額だった。

 栗東トレーニング・センターの松田国英調教師のもとに送られたキングカメハメハは2003年11月に京都競馬場でデビューした。1番人気に応えて芝1800㍍戦で優勝すると、続くエリカ賞(阪神、芝2000㍍)も制覇した。年明け初戦の京成杯(中山、芝2000㍍)はフォーカルポイントの3着と苦杯をなめたが、2月のすみれS(阪神、芝2200㍍)、3月の毎日杯(阪神、芝2000㍍)と2連勝し、重賞ウィナーとなった。

 その後は松田国英調教師が好む「マツクニ・ローテーション」を歩んだ。芝1600㍍で争われるNHKマイルカップと芝2400㍍のダービー。中2週の間隔で行われる2つのGⅠレースに挑むチャレンジだ。松田国英調教師はキングカメハメハ以前に、2001年にクロフネ(USA)、2002年にタニノギムレットと、管理馬2頭をこのローテーションに送り出した。

 クロフネはNHKマイルカップを制したが、ダービーは5着。逆にタニノギムレットはNHKマイルカップは3着に終わったものの、ダービーでは見事に優勝を果たした。まだ「変則2冠」はどの馬も達成したことのないことだった。

 2004年5月9日、キングカメハメハは1番人気でNHKマイルカップを迎えた。デビューからの5戦はいずれも1800㍍以上の距離を走っており、1600㍍は初体験だった。ところがレース内容は桁違い。2着のコスモサンビームに5馬身差をつけ、従来の記録を1秒7も短縮する1分32秒5のレース新記録で圧勝した。

 21日後の5月30日、第71回日本ダービーが行われた。キングカメハメハは単勝2.6倍の1番人気に支持された。2番人気は3.3倍のコスモバルク。以下ハイアーゲーム、ダイワメジャー、ハーツクライと人気は続いた。結果はキングカメハメハの完勝だった。勝ちタイムの2分23秒3(芝2400㍍)は従来の記録を大幅に更新するダービー新記録となった。2着はハーツクライ、3着はハイアーゲームだった。

 同年秋初戦の神戸新聞杯(阪神、芝2000㍍)も快勝したキングカメハメハだったが、これが現役最後のレースとなってしまった。

 2005年から種牡馬生活に入ったキングカメハメハは着実に成果を上げていった。2019年7月21日現在で産駒の中央競馬の重賞勝ち馬は合計55頭。このうちGⅠ勝ち馬はアパパネ、ローズキングダム、ロードカナロア、ベルシャザール、ホッコータルマエ、レッツゴードンキ、ドゥラメンテ、ラブリーデイ、リオンディーズ、レイデオロ、ミッキーロケットの11頭を数える。馬名を挙げてみて分かるのは牝馬から短距離馬、ダートホースまで実に多彩な産駒に恵まれていることだ。守備範囲の広い種牡馬であることが証明されている。

 キングカメハメハを起点とする血統の裾野は確実な広がりを見せている。ロードカナロアはアーモンドアイ、サートゥルナーリア、ステルヴィオの父となり、ルーラーシップもキセキを生み出した。生産界に十分な貢献を果たした。のんびりと余生を送ってほしいと願う。

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