第5コーナー ~競馬余話~
第100回「小兵」
2019.07.12
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競走馬の飼料添加物から禁止薬物のテオブロミンが見つかった事件で、競馬界に衝撃が走った2019年6月15日、阪神競馬場で快記録が達成された。
第6レースの3歳未勝利戦(芝2400㍍)で13頭立ての5番人気に支持されたメロディーレーン(牝、栗東・森田直行厩舎)は12番手を進んでいた3コーナーからスパートを開始した。その勢いは素晴らしく、ルーキーの岩田望来騎手が外に進路を取ると、前を行くライバルたちを次から次へとかわし、最後の直線では独走。2着のダンディズムに9馬身もの差をつけて1着でゴールした。
この快勝によって、競馬史に刻まれたのは「JRA史上最少体重優勝馬」という記録だった。この日のメロディーレーンの体重は340キロ。従来の記録は1972年に2歳牝馬のジャンヌダルクが小倉競馬場でマークした350キロだったから、この記録を47年ぶりに10キロ下回った。
メロディーレーンは、これまでも体重に関するJRA記録を持っていた。それは「史上最少体重出走馬」という記録だ。2019年3月2日に小倉競馬場で3歳未勝利戦に出走した時の体重が330キロで、2011年にグランローズが記録したものと並び、JRAでもっとも小さな馬として名前を残していた。そんな小兵が、今度は当時より10キロ体重を増やして初勝利を飾り、JRAでもっとも小さな勝ち馬として競馬史に名を刻むことになった。
JRAが馬体重を発表するようになったのは1964年だ。GⅠ級のレースを勝った馬でもっとも小さかったのは1971年のオークスで優勝したカネヒムロ(牝3歳)で当日の体重は384キロだった。重賞の優勝馬では1983年にニュージーランドトロフィー4歳S(当時)を制したアップセッター(牡3歳)の380キロという記録がある。
逆に大きな馬の記録も書いておこう。「最高体重出走馬」は2015年1月17日の京都競馬の第8レースで5着になったショーグン(牡5歳)で640キロ。メロディーレーンとグランローズの持つ最少記録330キロとは310キロもの差があり、ほとんど2倍の重さだ。ショーグンは最高体重優勝馬626キロの記録保持馬でもある。ショーグンは現在、阪神競馬場で誘導馬の仕事をしている。その大きさを体感したい方は是非、阪神競馬場に足を運んでみてください。
再び小さな馬メロディーレーンの話題に戻る。同馬は父オルフェーヴル、母メーヴェ(GB)という血統を持つ。2011年に3冠を制したオルフェーヴルは国内で走った17戦で体重は440~466キロだった。小柄な部類だが、娘のメロディーレーンほどではない。母メーヴェは英国から輸入され、中央競馬で競走馬になった。22戦5勝。体重は446~464キロだった。オルフェーヴルとほぼ同じ体重だ。両親からはメロディーレーンの軽量は説明がつかない。母の父モティヴェーターMotivator(GB)は2005年の英国ダービー優勝馬で凱旋門賞を連覇したトレヴTreve(FR)の父としても有名だが、その体重はわからない。可能性があるとしたら、オルフェーヴルの父ステイゴールドからの隔世遺伝だろう。国内外を合わせ50戦もしたステイゴールドだが、最低体重は408キロという小兵だった。
ステイゴールドは2015年に他界し、この年に種付けした中から1頭だけ産駒が誕生した。実質的には2014年に種付けし、2015年に生まれた現4歳世代がステイゴールドの最終世代といえる。数少なくなってきたステイゴールド産駒だが、今年は活躍が目立つ。6月23日の時点で、中央競馬の種牡馬ランキングで2位につけているのもさすがだが、インディチャンプ(牡4歳、栗東・音無秀孝厩舎)がGⅠ安田記念を制するなどJRAの重賞9勝を挙げ、ウインブライト(牡5歳、美浦・畠山吉宏厩舎)は4月の香港でクイーンエリザベス2世Cに優勝。海外GⅠタイトルを手にした。
ステイゴールドの小さな体の中にあった無尽蔵のエネルギーは死後4年たっても燃え続けている。
第6レースの3歳未勝利戦(芝2400㍍)で13頭立ての5番人気に支持されたメロディーレーン(牝、栗東・森田直行厩舎)は12番手を進んでいた3コーナーからスパートを開始した。その勢いは素晴らしく、ルーキーの岩田望来騎手が外に進路を取ると、前を行くライバルたちを次から次へとかわし、最後の直線では独走。2着のダンディズムに9馬身もの差をつけて1着でゴールした。
この快勝によって、競馬史に刻まれたのは「JRA史上最少体重優勝馬」という記録だった。この日のメロディーレーンの体重は340キロ。従来の記録は1972年に2歳牝馬のジャンヌダルクが小倉競馬場でマークした350キロだったから、この記録を47年ぶりに10キロ下回った。
メロディーレーンは、これまでも体重に関するJRA記録を持っていた。それは「史上最少体重出走馬」という記録だ。2019年3月2日に小倉競馬場で3歳未勝利戦に出走した時の体重が330キロで、2011年にグランローズが記録したものと並び、JRAでもっとも小さな馬として名前を残していた。そんな小兵が、今度は当時より10キロ体重を増やして初勝利を飾り、JRAでもっとも小さな勝ち馬として競馬史に名を刻むことになった。
JRAが馬体重を発表するようになったのは1964年だ。GⅠ級のレースを勝った馬でもっとも小さかったのは1971年のオークスで優勝したカネヒムロ(牝3歳)で当日の体重は384キロだった。重賞の優勝馬では1983年にニュージーランドトロフィー4歳S(当時)を制したアップセッター(牡3歳)の380キロという記録がある。
逆に大きな馬の記録も書いておこう。「最高体重出走馬」は2015年1月17日の京都競馬の第8レースで5着になったショーグン(牡5歳)で640キロ。メロディーレーンとグランローズの持つ最少記録330キロとは310キロもの差があり、ほとんど2倍の重さだ。ショーグンは最高体重優勝馬626キロの記録保持馬でもある。ショーグンは現在、阪神競馬場で誘導馬の仕事をしている。その大きさを体感したい方は是非、阪神競馬場に足を運んでみてください。
再び小さな馬メロディーレーンの話題に戻る。同馬は父オルフェーヴル、母メーヴェ(GB)という血統を持つ。2011年に3冠を制したオルフェーヴルは国内で走った17戦で体重は440~466キロだった。小柄な部類だが、娘のメロディーレーンほどではない。母メーヴェは英国から輸入され、中央競馬で競走馬になった。22戦5勝。体重は446~464キロだった。オルフェーヴルとほぼ同じ体重だ。両親からはメロディーレーンの軽量は説明がつかない。母の父モティヴェーターMotivator(GB)は2005年の英国ダービー優勝馬で凱旋門賞を連覇したトレヴTreve(FR)の父としても有名だが、その体重はわからない。可能性があるとしたら、オルフェーヴルの父ステイゴールドからの隔世遺伝だろう。国内外を合わせ50戦もしたステイゴールドだが、最低体重は408キロという小兵だった。
ステイゴールドは2015年に他界し、この年に種付けした中から1頭だけ産駒が誕生した。実質的には2014年に種付けし、2015年に生まれた現4歳世代がステイゴールドの最終世代といえる。数少なくなってきたステイゴールド産駒だが、今年は活躍が目立つ。6月23日の時点で、中央競馬の種牡馬ランキングで2位につけているのもさすがだが、インディチャンプ(牡4歳、栗東・音無秀孝厩舎)がGⅠ安田記念を制するなどJRAの重賞9勝を挙げ、ウインブライト(牡5歳、美浦・畠山吉宏厩舎)は4月の香港でクイーンエリザベス2世Cに優勝。海外GⅠタイトルを手にした。
ステイゴールドの小さな体の中にあった無尽蔵のエネルギーは死後4年たっても燃え続けている。