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第5コーナー ~競馬余話~

有吉正徳 第5コーナー ~競馬余話~

第119回 「母父」

 史上初めて牡と牝で同時に「無敗の3冠馬」が誕生し、新型コロナウイルスの影響で無観客が続くなど、2020年は、競馬界にとって忘れられない1年になった。こうした大きなうねりに隠れて、静かに変化したこともあった。

 そのひとつがリーディング・ブルードメアサイアーの交代だった。2006年から2019年まで14年間頂点に立ち続けたサンデーサイレンス(USA)が2位に陥落。代わってキングカメハメハが初めて首位に立った。2019年に18歳で生涯を閉じたキングカメハメハの初タイトルになった。

 代表産駒のデアリングタクト(父エピファネイア)が桜花賞、オークス、秋華賞の牝馬3冠に輝き、ソダシ(父クロフネ(USA))は阪神ジュベナイルフィリーズで白毛馬初のGⅠ制覇という快記録を達成した。2頭の牝馬が母の父であるキングカメハメハの飛躍を後押しした。そのほかではブラストワンピース(父ハービンジャー(GB))がAJC杯を制し、インディチャンプ(父ステイゴールド)がマイラーズカップで優勝した。変わったところではタガノエスプレッソ(父ブラックタイド)が阪神ジャンプS、京都ジャンプSと二つの障害重賞をものにした。

 母の父にキングカメハメハを持つ競走馬は2020年の中央競馬で395頭が1,674回走り、このうち108頭が計145勝を挙げた。重賞は13勝。獲得賞金は35億2,054万3,000円に達し、31億9,125万4,000円のサンデーサイレンスを抑えた。

 2001年に北海道早来町で生まれたキングカメハメハは内国産種牡馬としては、1977年のトサミドリ(父プリメロ(GB))、母フリツパンシー(GB)、青森県産)以来43年ぶりとなるリーディング・ブルードメアサイアーになった。

 母の父にキングカメハメハを持つ競走馬が中央競馬で走り始めたのは2012年だ。7月21日に新潟競馬の新馬戦でピュアソルジャー(父ジャングルポケット)がデビューした。12頭立ての4着だった。初勝利はその翌日、札幌競馬の新馬戦に出走したヴェルデホ(父シンボリクリスエス(USA))である。

 重賞初勝利は2013年4月だった。デニムアンドルビー(父ディープインパクト)が1番人気に支持されたフローラSで優勝した。初のGⅠ勝利は2017年11月のエリザベス女王杯だった。モズカッチャン(父ハービンジャー)がクビ、アタマという接戦を制した。2018年にはワグネリアン(父ディープインパクト)がダービー、ブラストワンピース(父ハービンジャー)が有馬記念で優勝するなど活躍馬が増加、ブルードメアサイアーの部門で前年の11位から一気に2位まで順位を上げた。

 2019年はインディチャンプが安田記念とマイルチャンピオンシップを制して、JRA賞の最優秀短距離馬になるなど、再びブルードメアサイアーの部門で2位をキープした。そして2020年の首位につなげた。

 キングカメハメハは2010年と2011年にリーディングサイアーになっている。リーディングサイアーとリーディング・ブルードメアサイアーの両方のタイトルに輝いたのはライジングフレーム(IRE)、ヒンドスタン(GB)、ネヴアービート(GB)、パーソロン(IRE)、ノーザンテースト(CAN)、サンデーサイレンスに次いで7頭目だが、内国産では初めてのケースになった。

 リーディングサイアー経験馬が後にリーディング・ブルードメアサイアーになることが多く、キングカメハメハの当面のライバルは、2020年まで9年連続リーディングサイアーの座に君臨するディープインパクトということになる。

 ディープインパクトはこの部門でも急速に順位を上げてきている。2016年に115位だったのが、翌年に20位、2018年は12位、2019年は10位、そして2020年は5位まで来た。2020年はステラヴェローチェ(父バゴ(FR))がサウジアラビアロイヤルC、ワンダフルタウン(父ルーラーシップ)が京都2歳Sを制するなど2歳戦線で実績を残し、2歳のブルードメアサイアー部門ではディープインパクトが1位、キングカメハメハが2位と逆転が起きている。

 母の父として、キングカメハメハが首位の座を守ることができるかどうか。デアリングタクトとソダシの走りが大きく影響しそうだ。