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第5コーナー ~競馬余話~

有吉正徳 第5コーナー ~競馬余話~

第120回 「17頭」

 2月14日に阪神競馬場で行われた第114回京都記念でワグネリアン(牡6歳、栗東・友道康夫厩舎)は、勝ったラヴズオンリーユーから0秒7遅れの5着に終わった。

 2018年の神戸新聞杯を最後に勝利から遠ざかっている第85代日本ダービー馬はそれでも単勝2番人気の支持を得た。それは、ひとえに武豊騎手との初コンビが理由のすべてだろうと思う。「武豊騎手ならなんとかしてくれるのではないか」。新しい化学反応を期待するファンの思いが込められた2番人気だった。

 ワグネリアンは武豊騎手が実戦で騎乗した17頭目の日本ダービー馬だった。

 武豊騎手が初めてダービー馬とコンビを組んだのは1994年9月18日、ウイニングチケットで臨んだオールカマーだった。前年に柴田政人騎手とのコンビで第60代ダービー馬になったウイニングチケットだったが、この時は柴田騎手が落馬負傷のため騎乗することができなかった。ダービー優勝後は少し輝きを失っていたウイニングチケットだったが、このオールカマーでは意地を見せ、同期の強豪ビワハヤヒデの2着に頑張った。その後、天皇賞・秋でも武豊騎手とのコンビを続行したが、8着に終わり、このレースを最後に現役を引退した。

 その後、武豊騎手はタヤスツヨシ、ナリタブライアン、スペシャルウィーク、アドマイヤベガ、タニノギムレット、ジャングルポケット、キングカメハメハ、ディープインパクト、メイショウサムソン、ディープスカイ、ウオッカ、ロジユニヴァース、キズナ、ワンアンドオンリー、マカヒキ、そしてワグネリアンと16頭のダービー馬の手綱を取ってきた。

 このうち、ともにダービーを戦って勝ち取ったのはスペシャルウィーク、アドマイヤベガ、タニノギムレット、ディープインパクト、キズナの5頭だ。ダービー5勝。空前にして絶後かもしれない大記録である。タヤスツヨシ、キングカメハメハ、ディープスカイ、ロジユニヴァースの4頭はダービーを勝つ以前に手綱を取っている。正確にいえば、ダービー馬に騎乗したことにはならない。タヤスツヨシとは2着だった1995年の共同通信杯4歳ステークス(現共同通信杯)、キングカメハメハとは優勝した2003年のエリカ賞(阪神競馬場)、ロジユニヴァースとは2008年7月6日に阪神競馬場で行われた新馬戦でコンビを組んでデビュー勝ちを収めている。いずれも1度だけのコンビ結成だった。ディープスカイとは未勝利戦で2度手綱を取ったが、いずれも2着に終わっている。

 このほかの8頭はダービー馬になり、功なり名を遂げた後にバトンが武豊騎手に委ねられたパターンだ。やはり「ダービー馬」の看板を背負った実績のある馬ともなると、新たに騎乗を依頼しようとすると大物ジョッキーでなければならない。必然的に武豊騎手に白羽の矢が立つことになる。

 こういうダービー優勝後というパターンでの成績を調べてみると、27戦5勝、2着7回、3着2回という記録が残っている。勝率18.5%、連対率は44.4%になる。5勝のうち4勝はGⅠで、メイショウサムソンで天皇賞・秋(2007年)を制し、ウオッカで3勝(2008年天皇賞・秋、2009年ヴィクトリアマイル、同年安田記念)を挙げ、ナリタブライアンで1996年のGⅡ阪神大賞典を制している。ただダービー馬と武豊騎手という「最強タッグ」がコンビを組んでも勝利することはむずかしく、2009年の安田記念以降、実現していない。

 現役の騎手で、武豊騎手の次に数多くのダービー馬に騎乗した経験があるのは福永祐一騎手だ。騎乗したのは計6頭。ワグネリアンとコントレイルの2頭はその手でダービー優勝の栄冠をつかみとり、そのほかではネオユニヴァース、

キングカメハメハ、エイシンフラッシュ、レイデオロに騎乗経験がある。2003年のきさらぎ賞でネオユニヴァースに重賞初制覇をもたらしたのも福永騎手だし、2004年の毎日杯でキングカメハメハを初の重賞勝ちに導いたのも福永騎手だった。

 この原稿を読んでいただく頃には、コントレイルの復帰初戦である大阪杯(4月4日、阪神競馬場)が近づいている。昨年、史上初めて父子2代にわたる無敗の3冠制覇という偉業を達成した最強コンビ。その走りに注目が集まる。いつだってダービー馬は注目の的だ。