第5コーナー ~競馬余話~
第138回 「聖奈」
2022.09.09
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中央競馬の新人騎手・今村聖奈(18)の快進撃が続いている。
8月14日現在、282戦26勝(新潟12勝、小倉6勝、阪神5勝、中京3勝)、2着18回、3着19回、4着29回、5着22回、着外168回。勝率は9.2%、連対率は15.6%を記録している。このほかに地方競馬でも13戦4勝(園田、名古屋、盛岡、浦和各1勝)、2着3回、3着1回、着外5回の成績を挙げ、こちらは勝率36.4%というハイアベレージだ。中央・地方両方の勝ち星を合計すると30勝に達する。
翌週8月20日の小倉競馬第6レースの2歳新馬戦で1番人気のヤマニンウルスに騎乗して1着となり、計31勝に到達した。これで中央競馬のGⅠレースに出場が認められる資格を手にした。
2022年3月5日、今村騎手は中央競馬10人目の女性騎手として阪神競馬場でデビューした。デビュー戦は14頭立ての8着。父康成さんは中山大障害で優勝したこともある元騎手で現在は調教助手だ。2世騎手である今村騎手は3月13日の阪神競馬場でブラビオに騎乗して初勝利を挙げたのを皮切りに白星を積み重ね、5月22日の新潟競馬場でタマモエイトビートに乗って通算10勝目を挙げた。過去の女性騎手のデビュー年の最多勝は、1996年の増沢由貴子騎手(旧姓牧原)と2000年の西原玲奈騎手がマークした9勝だった。今村騎手はこの記録をデビュー2か月あまりであっさりとクリアしてしまった。8月14日の時点で同じ新人騎手の中では2番目の角田大河騎手に10勝差をつけてトップを走っている。今村騎手はもう「女性騎手」という枠に収まり切れない才能豊かな若手騎手といっていいだろう。
今村騎手の名前を一気に有名にしたのは、7月3日の第58回CBC賞だった。小倉競馬場の芝1200メートルを舞台にして行われたハンデ戦のGⅢで、今村騎手は牝3歳のテイエムスパーダに騎乗した。6戦3勝の戦績を残すレッドスパーダ産駒だ。与えられたハンデは出走馬17頭の中で最軽量の48キロだった。
5番枠に入ったテイエムスパーダを今村騎手は迷うことなく先行させた。約200メートル進んだあたりで先頭に立っていた。スタートからの200メートルごとのラップは11秒4-10秒0-10秒4。前半の3ハロンは31秒8を記録した。小倉競馬場の芝コースは開幕週で絶好の状態だったとはいえ、このラップはいかにも速すぎる。しかし4コーナーを回っても脚勢は衰えない。必死に追いすがるトップハンデ57キロのタイセイビジョンに3馬身1/2の差をつけ、1着でゴールした。
CBC賞は記録ずくめのレースとなった。3月5日にプロデビューした今村騎手はCBC賞が通算197戦目で重賞初騎乗だった。1984年のグレード制導入以降、新人騎手が重賞初騎乗で優勝したのは1992年の菊沢隆仁騎手(ウインターS=チェリーコウマン)、1997年の武幸四郎騎手(マイラーズC=オースミタイクーン)、1998年の池添謙一騎手(北九州記念=トウショウオリオン)に次ぐ4人目の記録だった。新人ではなかったがデビュー2年目の2008年に愛知杯でセラフィックロンプに騎乗して優勝した宮崎北斗騎手も重賞初騎乗初勝利だった。JRA所属の女性騎手が重賞を制したのは2019年の藤田菜七子(カペラS=コパノキッキング)以来2人目。18歳7か月6日での重賞制覇は年少記録では5番目の若さでもあった。
優勝タイムは1分5秒8。2021年のCBC賞(小倉競馬場)でファストフォースが記録した1分6秒0を0秒2更新する中央競馬の芝1200メートルの新記録となった。1ハロンの平均ラップは10秒97。1ハロンの平均ラップが11秒を切る中央競馬のレコードタイムは芝1000メートルでカルストンライトオ(2002年8月18日、新潟競馬場)がマークした53秒7(1ハロン平均10秒74)に次ぐ2つ目の記録になった。負担重量48キロの馬が重賞勝ちを収めたのは2001年のカブトヤマ記念(タフネススター)、2008年のマーメイドS(トーホウシャイン)以来3頭目だった。
これから年末までに今村騎手が達成可能な記録があるとすれば、新人騎手による重賞複数勝利と史上初のデビュー年GⅠ制覇だろう。
今村騎手を除き、これまで18人の騎手がデビュー年に重賞勝ちを収めているが、複数の重賞勝利を飾ったのは武豊騎手と武幸四郎騎手の「武兄弟」の2人しかいない。武豊騎手は1987年に京都大賞典(トウカイローマン)、京都新聞杯(レオテンザン)、阪神牝馬特別(シヨノリーガル)と重賞3勝。武幸四郎騎手も1997年にマイラーズC(オースミタイクーン)、セントウルS(オースミタイクーン)、阪神牝馬特別(エアウイングス)と3勝を挙げた。
グレード制が導入された1984年以降、ルーキー騎手がGⅠレースで優勝した例はない。今村騎手が前人未到の大記録に挑むかどうか。今年の秋は楽しみがひとつ増えた。
8月14日現在、282戦26勝(新潟12勝、小倉6勝、阪神5勝、中京3勝)、2着18回、3着19回、4着29回、5着22回、着外168回。勝率は9.2%、連対率は15.6%を記録している。このほかに地方競馬でも13戦4勝(園田、名古屋、盛岡、浦和各1勝)、2着3回、3着1回、着外5回の成績を挙げ、こちらは勝率36.4%というハイアベレージだ。中央・地方両方の勝ち星を合計すると30勝に達する。
翌週8月20日の小倉競馬第6レースの2歳新馬戦で1番人気のヤマニンウルスに騎乗して1着となり、計31勝に到達した。これで中央競馬のGⅠレースに出場が認められる資格を手にした。
2022年3月5日、今村騎手は中央競馬10人目の女性騎手として阪神競馬場でデビューした。デビュー戦は14頭立ての8着。父康成さんは中山大障害で優勝したこともある元騎手で現在は調教助手だ。2世騎手である今村騎手は3月13日の阪神競馬場でブラビオに騎乗して初勝利を挙げたのを皮切りに白星を積み重ね、5月22日の新潟競馬場でタマモエイトビートに乗って通算10勝目を挙げた。過去の女性騎手のデビュー年の最多勝は、1996年の増沢由貴子騎手(旧姓牧原)と2000年の西原玲奈騎手がマークした9勝だった。今村騎手はこの記録をデビュー2か月あまりであっさりとクリアしてしまった。8月14日の時点で同じ新人騎手の中では2番目の角田大河騎手に10勝差をつけてトップを走っている。今村騎手はもう「女性騎手」という枠に収まり切れない才能豊かな若手騎手といっていいだろう。
今村騎手の名前を一気に有名にしたのは、7月3日の第58回CBC賞だった。小倉競馬場の芝1200メートルを舞台にして行われたハンデ戦のGⅢで、今村騎手は牝3歳のテイエムスパーダに騎乗した。6戦3勝の戦績を残すレッドスパーダ産駒だ。与えられたハンデは出走馬17頭の中で最軽量の48キロだった。
5番枠に入ったテイエムスパーダを今村騎手は迷うことなく先行させた。約200メートル進んだあたりで先頭に立っていた。スタートからの200メートルごとのラップは11秒4-10秒0-10秒4。前半の3ハロンは31秒8を記録した。小倉競馬場の芝コースは開幕週で絶好の状態だったとはいえ、このラップはいかにも速すぎる。しかし4コーナーを回っても脚勢は衰えない。必死に追いすがるトップハンデ57キロのタイセイビジョンに3馬身1/2の差をつけ、1着でゴールした。
CBC賞は記録ずくめのレースとなった。3月5日にプロデビューした今村騎手はCBC賞が通算197戦目で重賞初騎乗だった。1984年のグレード制導入以降、新人騎手が重賞初騎乗で優勝したのは1992年の菊沢隆仁騎手(ウインターS=チェリーコウマン)、1997年の武幸四郎騎手(マイラーズC=オースミタイクーン)、1998年の池添謙一騎手(北九州記念=トウショウオリオン)に次ぐ4人目の記録だった。新人ではなかったがデビュー2年目の2008年に愛知杯でセラフィックロンプに騎乗して優勝した宮崎北斗騎手も重賞初騎乗初勝利だった。JRA所属の女性騎手が重賞を制したのは2019年の藤田菜七子(カペラS=コパノキッキング)以来2人目。18歳7か月6日での重賞制覇は年少記録では5番目の若さでもあった。
優勝タイムは1分5秒8。2021年のCBC賞(小倉競馬場)でファストフォースが記録した1分6秒0を0秒2更新する中央競馬の芝1200メートルの新記録となった。1ハロンの平均ラップは10秒97。1ハロンの平均ラップが11秒を切る中央競馬のレコードタイムは芝1000メートルでカルストンライトオ(2002年8月18日、新潟競馬場)がマークした53秒7(1ハロン平均10秒74)に次ぐ2つ目の記録になった。負担重量48キロの馬が重賞勝ちを収めたのは2001年のカブトヤマ記念(タフネススター)、2008年のマーメイドS(トーホウシャイン)以来3頭目だった。
これから年末までに今村騎手が達成可能な記録があるとすれば、新人騎手による重賞複数勝利と史上初のデビュー年GⅠ制覇だろう。
今村騎手を除き、これまで18人の騎手がデビュー年に重賞勝ちを収めているが、複数の重賞勝利を飾ったのは武豊騎手と武幸四郎騎手の「武兄弟」の2人しかいない。武豊騎手は1987年に京都大賞典(トウカイローマン)、京都新聞杯(レオテンザン)、阪神牝馬特別(シヨノリーガル)と重賞3勝。武幸四郎騎手も1997年にマイラーズC(オースミタイクーン)、セントウルS(オースミタイクーン)、阪神牝馬特別(エアウイングス)と3勝を挙げた。
グレード制が導入された1984年以降、ルーキー騎手がGⅠレースで優勝した例はない。今村騎手が前人未到の大記録に挑むかどうか。今年の秋は楽しみがひとつ増えた。