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第15回 天気 VS 種牡馬展示会

2010.03.01
 今年の北海道の冬は「日少太多」の冬型らしい。そんな言葉を聞いたことがないぞ,という読者の方に対して素直に謝る。これは自分が作った造語であり,本当なら「西高東低」みたいな漢字でしっくり来るかな,と思っていたのだが,やはり,「今年の冬,日本海側は雪が少なくて,太平洋側は雪が多いでしょう」という言葉を四文字にまとめるのは無理があったようだ。
 雪国という言葉でひとまとめにされてしまう北海道だが,それでも降雪量や冷え込み方は場所によって様々である。ちなみに筆者の住む札幌(石狩地方)は日本海側となるので,北海道内でも雪の多い地域とされる。車で30分も走ればスキー場があることからも,ご理解していただけるのではないだろうか。

 一方,太平洋側とされるのが,馬産地の胆振地方や日高地方,そして釧路地方や根室地方である。余談となるが,同じ北海道でも日本海側では冬の体育のカリキュラムにスキーが,太平洋側ではスケートが取り入れられていることが多い。

 その大きな理由として.太平洋側は降雪量が少ないにも関わらず,冬の冷え込みが厳しいことが関係している。この時期に日高の小中学校の前を通ると,グラウンドに大きな氷が張っているのをよく目にする。実はあれは人工のスケート場であり,冬になると水を撒いて,地面を凍らせながら氷の厚みを増していくのだという。

 体育の授業からも,北海道の冬は場所によってそれぞれだということが分かっていただけたかと思う。だが,ここ数年の冬はカリキュラムを再編しなくてはと思えるほどの気候変動が続いている。

 日本海側のスキー場では,人工降雪機を使わなくてはオープンができなくなっている一方で,太平洋側では北海道に近づくにつれて急激に発達する「爆弾低気圧」がもたらす大雪と暴風で,一日で50㎝を超えるほどの降雪が一冬に数回記録されている。

 この「日少太多」の気候は,俗に言う地球温暖化の影響もあるのかもしれない。しかし,それで片付けてはいられないのが,2月に種牡馬展示会を行うスタリオン関係者である。

 種牡馬展示会の日程が決まるのはおおよそ1月の下旬。それまでに開始日が重ならないように日程を調整したり,同じ町内で時間をずらしたりと,1人でも多くの生産関係者に足を運んでもらえるように様々な便宜が図られるが,天気だけはどうしようもない。しかも,半月以上前から天気を予想して日程を組むだなんて,気象衛星ひまわりに乗り込んだとしても不可能だろう。

 先日,種牡馬展示会の日程を決めたばかりというスタリオン関係者と話をすることがあったが,どの種牡馬をどんな順番で見せるかということより心配なことは,当日の天気だと教えてくれた。「日程を決めた以上,晴れるのを祈るだけなのですが,雪が降ったらどうしよう,それも吹雪いてしまったら目も当てられないなと不安ばかりが先走りますよね」との関係者の話にもあるように,ここ数年の種牡馬展示会は必ずと言っていいほど,大荒れとなる日がある。今,思い出すだけでも寒気がするのだが,爆弾低気圧の大雪の中を向かったとある種牡馬展示会では,途中で何台も車が事故を起こしていただけでなく,自分の車も吹きだまりに突っ込み,対向車線まではみ出すほどにスピンをしていた。

 これを教訓にして「天気が悪い日は外に出ない」と声を大にして言いたいところなのだが,とはいっても種牡馬たちの今の姿は見たいし,何せ種牡馬展示会のルポは仕事でもある。生産関係者の方も,馬体や動きから判断して配合を決めるのだろうが,肝心要となる種牡馬たちの姿が雪で見えにくくては足を運んだ意味が無くなってしまう。しかも行き帰りで事故の危険がつきまとうとあれば,行く気がそがれてしまうはずだ。

 種牡馬展示会はどの種牡馬もベストの状態が見られるこの上ない機会である。となると,最高の日照条件の元,光り輝く馬体を見たいのだが,それも神頼みならぬ天気頼みとなってしまうのだろうか。空に向けての勝手なお願いだが,せめて今年の種牡馬展示会は,全て晴れた空の下で,とまでは言わないまでも,生産関係者や筆者が足を向けやすいような穏やかな天気であって欲しい。

JBBA NEWS 2010年3月号より転載
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