北海道馬産地ファイターズ
第28回 馬産地
2011.04.08
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昨年末,競走馬のふるさと日高案内所が主催した「2010年馬産地十大ニュース」において,10個目のニュースに「三石にセブンイレブンができた」を入れようと思ったら,周りのまっとうな競馬業界の方に止められた。
ここからはローカル過ぎる話題で申し訳ないのだが,一昨年まで日高には,静内を過ぎるとセイコーマートというコンビニエンスストアしか無かった。それが昨年,浦河町内にセブンイレブンが相次いでオープン。その上,まるでオセロで挟んだかのように,静内と浦河の間にある三石にもセブンイレブンが開店したのだ。
朝食や昼食,またはトイレ休憩など,取材に出かけた際,頻繁にコンビニを訪れる自分にとって,コンビニが選べるというのは非常に有り難い。「さっきはセイコーマートだったから,今回はセブンイレブンで」と思えるだけでも,運転に張り合いが出てくる。
今回,こんなくだらない話を書き出しに選んだ理由。それは馬産地のインフラについてである。
生家があった北海道の某漁村町は,自分が高校を卒業するまで,車で20㎞ほど離れた場所にセイコーマートが1軒あるだけだった。だが,今はどうだろう。セイコーマートは車で10㎞ほどの距離まで近づき,その上,町内にはローソンまで開店していた。現在,自分が住んでいる家の近くには,徒歩圏内にコンビニが3軒もある。都会で暮らすというのはこんなことなんだろうなあ,と感心しながらも,この環境に慣れている人には,コンビニが近くに無いということは,心にぽっかりと穴が開いたような気がするのではという気もしてくる。
いや,実際にコンビニが無いと暮らせない人はいるようだ。以前,求人不足で悩むとある牧場関係者に話を聞いた時,勤めて間もない若いスタッフが,とんでもない理由で辞めることを告げてきたという。「歩いて行ける距離にコンビニがないからと言われたんですよ。確かに田舎ですが,それでも車を出せば10分の場所にコンビニはあるのに。ゆとり世代だからしょうがないか,と自分を慰めたくもなりますよね」
ゆとり世代恐るべし,と思いたくもなるが,コンビニは言い訳の一つで,辞めたいと思った理由は他にもあるのだろう。だが,馬産地でこうしたインフラ整備が整っていないことが,求人を妨げる一つの要因となっているのかもしれない。別に牧場の周りにコンビニを増やせと言うわけではない。人によっては繁華街が近い方がいいという声もあるだろうし,買い物に便利な都市部に近いほうがいいという声もあがるだろう。しかし,それを全て馬産地でまかなうのは不可能である。
いや,車を使えば数時間で繁華街や都市部に行けないこともない。だが,これまで歩ける距離や,交通機関を使って数十分で行けた人にはあり得ない環境なのだろうし,それがストレスとなるのも,札幌暮らしに慣れ親しんでしまった自分には分からなくもない。その一方で,北海道の環境を好んで牧場に来たという人もいる。「住めば都」ならぬ「住めばなおさら都」とでもいうのか,そういった人たちは長く牧場に勤め,しかも仕事の面においても優れた馬を送り出している。
「馬の仕事はしたい≠でも住環境は変えたくない」というのは,永遠に解決しないテーマなのかもしれない。でも,ちょっと着眼点を変えて,「北海道で暮らしたい=馬の仕事がありますよ」というのは意外と行けそうな気がしてくる。自分もコンビニに車を使わないと行けない田舎で18年間暮らして来たから分かるが,田舎の人ほど都会指向が強くなるというのは,とてもよく分かる。しかも一度,都会の暮らしに慣れてしまうと,なかなか田舎に戻れなくもなる。
BOKUJOBをきっかけとして,馬産地に求職者を招こうという動きは活発となっている。でも,ここは足元を見る意味でも,今,牧場で働いている人にアンケートを取って,この仕事に興味を引かれた理由だけでなく,それまでの住環境や,北海道や馬産地に対する憧れがあったかどうかを聞いてみるべきなのかもしれない。きっと,共通する見解があるはずであり,その層に求人を訴えかけることができたのなら,コンビニが多少遠かろうと,優れた馬を育てるスタッフとなってくれるはずだ。
ここからはローカル過ぎる話題で申し訳ないのだが,一昨年まで日高には,静内を過ぎるとセイコーマートというコンビニエンスストアしか無かった。それが昨年,浦河町内にセブンイレブンが相次いでオープン。その上,まるでオセロで挟んだかのように,静内と浦河の間にある三石にもセブンイレブンが開店したのだ。
朝食や昼食,またはトイレ休憩など,取材に出かけた際,頻繁にコンビニを訪れる自分にとって,コンビニが選べるというのは非常に有り難い。「さっきはセイコーマートだったから,今回はセブンイレブンで」と思えるだけでも,運転に張り合いが出てくる。
今回,こんなくだらない話を書き出しに選んだ理由。それは馬産地のインフラについてである。
生家があった北海道の某漁村町は,自分が高校を卒業するまで,車で20㎞ほど離れた場所にセイコーマートが1軒あるだけだった。だが,今はどうだろう。セイコーマートは車で10㎞ほどの距離まで近づき,その上,町内にはローソンまで開店していた。現在,自分が住んでいる家の近くには,徒歩圏内にコンビニが3軒もある。都会で暮らすというのはこんなことなんだろうなあ,と感心しながらも,この環境に慣れている人には,コンビニが近くに無いということは,心にぽっかりと穴が開いたような気がするのではという気もしてくる。
いや,実際にコンビニが無いと暮らせない人はいるようだ。以前,求人不足で悩むとある牧場関係者に話を聞いた時,勤めて間もない若いスタッフが,とんでもない理由で辞めることを告げてきたという。「歩いて行ける距離にコンビニがないからと言われたんですよ。確かに田舎ですが,それでも車を出せば10分の場所にコンビニはあるのに。ゆとり世代だからしょうがないか,と自分を慰めたくもなりますよね」
ゆとり世代恐るべし,と思いたくもなるが,コンビニは言い訳の一つで,辞めたいと思った理由は他にもあるのだろう。だが,馬産地でこうしたインフラ整備が整っていないことが,求人を妨げる一つの要因となっているのかもしれない。別に牧場の周りにコンビニを増やせと言うわけではない。人によっては繁華街が近い方がいいという声もあるだろうし,買い物に便利な都市部に近いほうがいいという声もあがるだろう。しかし,それを全て馬産地でまかなうのは不可能である。
いや,車を使えば数時間で繁華街や都市部に行けないこともない。だが,これまで歩ける距離や,交通機関を使って数十分で行けた人にはあり得ない環境なのだろうし,それがストレスとなるのも,札幌暮らしに慣れ親しんでしまった自分には分からなくもない。その一方で,北海道の環境を好んで牧場に来たという人もいる。「住めば都」ならぬ「住めばなおさら都」とでもいうのか,そういった人たちは長く牧場に勤め,しかも仕事の面においても優れた馬を送り出している。
「馬の仕事はしたい≠でも住環境は変えたくない」というのは,永遠に解決しないテーマなのかもしれない。でも,ちょっと着眼点を変えて,「北海道で暮らしたい=馬の仕事がありますよ」というのは意外と行けそうな気がしてくる。自分もコンビニに車を使わないと行けない田舎で18年間暮らして来たから分かるが,田舎の人ほど都会指向が強くなるというのは,とてもよく分かる。しかも一度,都会の暮らしに慣れてしまうと,なかなか田舎に戻れなくもなる。
BOKUJOBをきっかけとして,馬産地に求職者を招こうという動きは活発となっている。でも,ここは足元を見る意味でも,今,牧場で働いている人にアンケートを取って,この仕事に興味を引かれた理由だけでなく,それまでの住環境や,北海道や馬産地に対する憧れがあったかどうかを聞いてみるべきなのかもしれない。きっと,共通する見解があるはずであり,その層に求人を訴えかけることができたのなら,コンビニが多少遠かろうと,優れた馬を育てるスタッフとなってくれるはずだ。