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第37回 『2011年の10大ニュース』

2012.01.16
 僭越ながら、今年もこのJBBA誌上にて、コラムを続けさせていただくことが決まった。個人的にも4年も続いた連載はそれほどなく、連載と共に築き上げてきた背番号(詳しくはタイトルのイラストを見てください)も48番まで伸びることがほぼ確実となった。
 これまでの36回を振り返るのはさすがにどうかと思うので、せめて2011年を回顧してみようと思う。ちょうどタイミングも良く、ふるさと案内所が主催する「2011年馬産地10大ニュース」のアンケートがメールで送られてきたのだが、馬産地だけでも様々なことが起こっていたのだなと改めて感じる。

 個人的に10大ニュースにランクインさせたいと思っているのは、「新ひだか町静内に牛丼のすき家ができた」である。昨年のこのコラムでも書いた「新ひだか町三石にセブンイレブンができた」に続き、またか!と思われる方もいらっしゃることだろう。

 それでも馬産地のインフラ事情を考えた場合に、昨年オープンしたマクドナルドと24時間営業の飲食店が一挙2店もオープンしたことは、深夜における食糧事情の好転だけでなく、馬産地で働きたいという人材にも、「日高にはマックとすき家があるよ」というのは、多少なりとも心を動かす交渉条件となるはず。ぜひとも2011年の馬産地10大ニュースにランクインをさせるべく努力をしていきたい。

 と悪のりはここまでにして、今年の10大ニュースならぬ、きっと生涯における10大ニュースとなるのは、3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震であり、それによって引き起こされた東日本大震災となろう。
 馬産地日高を中心とした太平洋岸にも大津波警報が発令され、浦河港には2m70㎝の津波が押し寄せ、漁港に繋留中だった船や漁具を保存していたコンテナなどが流された。日高の大動脈ともいえる国道235号線は終日に渡って通行止めを余儀なくされ、沿岸部に住んでおられた方も避難を余儀なくされた。日高地区をはじめとする馬産地に人的被害が無かったことは不幸中の幸いともいえたが、それでもしばらくの間、地震や津波に対する不安感が払拭されることは無かったのだろうし、目を覆いたくなるような被災地の映像に、心を痛めたのは自分だけではないだろう。

 東日本大震災は競馬産業にも大きな影響を与えた。具体例としては競馬日程の変更であり、特に甚大な被害を被った岩手競馬は開催の延期を余儀なくされた。JRAでも東北地方の場外馬券発売所などに多大な影響が出ており、福島競馬場では天井や壁の崩落といった建物の被害に加え、福島第一原子力発電所事故によって飛散した放射性物質の飛散防止と、放射線量の低減のために芝コースの張り替えを行い、2011年度の開催は中止となった。

 そんな状況下でも競馬は様々な形で社会貢献を果たしてきた。JRAでは「東北関東大震災被災地支援競馬」として売上げの一部を被災地支援に充ててきただけでなく、日本馬主協会連合会、日本調教師会、日本騎手クラブからは義援金が、そして競馬場内では募金活動も行われた。NARでも被災地支援に向けた様々な取り組みが行われ、民間レベルでも被災にあった馬の避難や「ハッツオフ計画」に見られる世界のホースマンから送られた帽子の提供なども、競馬にしかできない支援と言えた。

 自分はダービー馬を基準として、その年に何があったかを思い出すようにしている。ダービーだけでなく三冠を制したオルフェーヴルはその強さだけでなく、2011年を振り返った時にも、一生忘れることのできない馬となった。
 被災に遭われた方の中には、オルフェーヴルの底知れぬ強さを見て、未来への希望を持ったという方もおられたはずだ。あるいは震災のすぐ後に世界を制したヴィクトワールピサ、ジャパンカップで約1年ぶりの復活を果たしたブエナビスタの姿にも、前向きな気持ちが湧いてきたに違いない。

 我々は自然を前にしたとき、あまりにも微力である。しかし、無力ではない。こうして競馬を通して繋がった微力が、未来へ繋がる力となることを。そして来年の10大ニュースは、全て明るい話題で満ちていてほしい。
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