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第85回 『競馬とナショナリズム』

2016.01.14
 まずはニュースから。「JBBANEWS」にて、馬産地ファイターズを執筆中の村本浩平さんが、28年度の契約を更新しました。
 この「JBBA NEWS」コラム内では、吉川良さんの「烏森発牧場行き」に続くロング連載であり、また85回の掲載回数は、小山内完友さんの「馬ミシュラン」とも一緒。ユニフォームをモチーフにしたデザインでもお馴染みですが、このまま連載が続くようだと、コラムの回数が書かれた背番号がプロ野球界では育成選手の証である、3桁の数字になることも見込まれています。

 これについて村本さんは、「3桁の背番号も見えて来ましたが、育成選手のように自分自身、ライターを始めた頃の気持ちを忘れず、今後も小山内さんと共に、吉川さんの背中を追いかけていく所存です」ということで、連載の延長が決まりました!

 普段、取材でお会いする生産者の方からの感想も、それなりにいただけるこのコラム。時として競馬とは関係ない内容を書かせていただくこともありますが、今後もご一読いただけると幸いです。

 ということで、今回はラグビーの話題から(笑)。日本国民の大多数に「五郎丸」の名前を知らしめた五郎丸選手がキック前に行うルーティンは、昨年、最も真似されたポーズとなったであろう、ラグビーワールドカップ。グループBで行われた日本代表対南アフリカ戦における逆転勝利は、ラグビーワールドカップ史上最大のアップセットと呼ばれたのも、記憶に新しいところです。

 その後も日本代表はサモアとアメリカに勝利。ただ、3勝をあげながらも、同じく3勝をあげていた南アフリカとスコットランドよりも勝ち点が下回ったことで、一次リーグ突破とはなりませんでした。それでも、ラグビーの面白さや迫力を広く伝えただけではなく、日本国民の心を一つにしたその戦いぶりは、高く評価されるべきでしょう。

 そのラグビーワールドカップと同じく、日本国民の注目度の高さがその視聴率でも証明されていたのが、「プレミア12」(正式名称はWBSCプレミア12)。予選を全勝で駆け抜けた侍ジャパンの快進撃と、それをふいにするような、決勝トーナメント準決勝でのまさかの敗退。戦前は「WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)と何が違うねん!」と突っ込んだ方も、12球団のスタープレイヤーたちのプレーを見て、「日本の野球レベルは世界一ィィィィ!」と思い直したのではないかと思われます。

 というわけで、競馬です。ジャパンカップで苦渋を舐めていたのは、いつのことかと言わんばかりに、近年は海外のGⅠレースでも勝利をあげることが珍しく無くなった日本馬たち。にもかかわらず、そのニュースがラグビーワールドカップやプレミア12ほどには取り上げられないのは、「Why?! Japanese people!!!」と言いたくもなります。

 その中では多くの日本国民が唯一、ナショナリズムを心の片隅に置きながら応援してくれるのが凱旋門賞。これは国民的スターホースとなった、ディープインパクトが挑戦したことも大きいのではないでしょうか。

 しかし、その後も凱旋門賞には毎年の様に日本馬が参戦しているにもかかわらず、ディープインパクトほどの注目度が集まらないのも事実です。というよりも、オルフェーヴル、エルコンドルパサー(USA)、ナカヤマナイトといった2着馬たちは、「世界二位!」として、称えられるべきだとも思うのですが、どうもその凄さが伝わりきっていません。

 昨年、競馬法が改正されたことにより、今後は海外レースの馬券が、日本でも発売される運びとなりました。競馬はワールドワイドであることを証明する意味でも、素晴らしい試みだと思う一方で、「普段、日本ダービーや有馬記念ぐらいしか馬券を買わない人たちは、どこまで興味を持ってくれるのだろう?」と思ってしまうのも事実です。 先日、農林水産省はホームページ上で24の対象レース案を示しました。その中には勿論、凱旋門賞や、東日本大震災が起こったその年に、日本馬がワンツーフィニッシュを果たしたドバイワールドカップが入っていますが、その他のレースは、あまり競馬に詳しくない人たちには見向きもされないのでは?とネガティブな考えも浮かんでしまいます。

 出来ることなら、その24レースの全てに日本馬が挑んで欲しいと思うだけでなく、日本馬が勝った際には、それがどれだけ凄いことかを、改めて知らしめるところまでが、海外でレースを発売する意味だと個人的には思います。というよりも、ラグビーワールドカップのように、誰が見ても「凄い」と思えるレースが行われ、そして「感動」する結果が出来れば、競馬を通してのナショナリズムは、自ずと高揚してくるとも思うのですが...。
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