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第28回 母と子の絆

2013.07.22
 節目となった第80回日本ダービーは単勝1番人気のキズナ(父ディープインパクト)が優勝した。
 武豊騎手が前人未到のダービー5勝目を飾るなど、今回も数々の新しい記録が作られたが、僕が一番驚いたのは、キズナは母キャットクイル(CAN)が20歳の時に出産したという事実だった。これは1942年(昭和17年)優勝のミナミホマレと並ぶ最高齢出産でのダービー制覇だった。

 これまでに誕生した80頭のダービー馬は果たして母が何歳の時に出産したのだろうか。年齢別にまとめてみた。

【母4歳=1頭】タニノムーティエ
【母5歳=5頭】フレーモア、キーストン、クライムカイザー、フサイチコンコルド、ロジユニヴァース
【母6歳=10頭】マツミドリ、タチカゼ、クリノハナ、ロングエース、シリウスシンボリ、トウカイテイオー、ミホノブルボン、サニーブライアン、アドマイヤベガ、メイショウサムソン
【母7歳=7頭】ミハルオー、ゴールデンウエーブ、タケホープ、カブラヤオー、サクラショウリ、ミスターシービー、メリーナイス
【母8歳=5頭】オートキツ、カツラノハイセイコ、スペシャルウィーク、ジャングルポケット、ディープブリランテ
【母9歳=7頭】カブトヤマ、イエリユウ、ハクチカラ、ダイゴホマレ、シンボリルドルフ、ウィナーズサークル、ウイニングチケット
【母10歳=8頭】クモノハナ、ヒカルメイジ、バンブーアトラス、ナリタブライアン、アグネスフライト、キングカメハメハ、ディープスカイ、エイシンフラッシュ
【母11歳=12頭】ワカタカ、ガヴアナー、ヒサトモ、コダマ、ハクシヨウ、タニノハローモア、ダイナガリバー、アイネスフウジン、タニノギムレット、ディープインパクト、ウオッカ、オルフェーヴル
【母12歳=8頭】クモハタ、ボストニアン、コマツヒカリ、シンザン、テイトオー、コーネルランサー、オペックホース、タヤスツヨシ
【母13歳=3頭】トクマサ、スゲヌマ、サクラチヨノオー
【母14歳=6頭】セントライト、クリフジ、カイソウ、トキノミノル、メイズイ、ヒカルイマイ
【母15歳=2頭】アサデンコウ、ラッキールーラ
【母16歳=3頭】フエアーウイン、カツトップエース、ネオユニヴァース
【母19歳=1頭】ダイシンボルガード
【母20歳=2頭】ミナミホマレ、キズナ

 最近は繁殖牝馬の入れ替えも早く、高齢牝馬は淘汰されることが多いと聞く。最近30年で14歳を超える母から誕生したダービー馬はキズナのほかではネオユニヴァースしかいない。若い母馬じゃないと名馬を産むことはできない。そんな先入観を持っていた。しかしキズナが見事に常識を打ち破った。

 1990年にカナダで生まれたキャットクイルは英国で競走馬になった。2戦して0勝。1994年に日本に輸入された。ブライアンズタイム(USA)と交配され、翌1995年に生まれた牝馬が後の桜花賞馬ファレノプシスだった。

 キャットクイルは桜花賞馬とダービー馬の母になった。それも2頭の間には15歳もの年齢の開きがある。これはフサイチコンコルド(1996年ダービー)とアンライバルド(2009年皐月賞)という13歳離れたクラシック馬の母になったバレークイーン(IRE)を超え、グレード制が導入された1984年以降では、もっとも年齢差のあるGⅠきょうだいの出産例ということになった。

 キャットクイルの9歳年上の姉はパシフィカス(USA)という。そうビワハヤヒデとナリタブライアンという2頭のGⅠ馬の母になった名牝である。

 こうした背景を持つキャットクイルだが、繁殖牝馬としてのステップは決して順調ではなかった。ファレノプシスを産んだ後、不受胎や流産、死産などもあった。キズナ以後は産駒を送り出していない。そうした恵まれない状況にあっても、しっかりとダービー馬を送り出す。キャットクイルの底力を感じたダービーだった。
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