第5コーナー ~競馬余話~
第56回 「6歳牝馬」
2015.11.17
Tweet
10月4日、6歳牝馬のストレイトガールがスプリンターズSを制した。5月のヴィクトリアマイルに次ぐ2つ目のGⅠタイトルだ。
この勝利によって、ストレイトガールはかつてなかった大記録を達成した。その記録とは「6歳牝馬によるGⅠレース年間2勝」だ。
1984年、中央競馬にグレード制度が導入された。重賞レースの格付けが行われ、距離別体系が整備された。しかし、グレード制度導入後30年以上たったにもかかわらず、6歳牝馬はGⅠレースでの優勝は数少ない。ストレイトガール以前に、ただ1頭優勝したのが1989年ジャパンカップのホーリックスである。ホーリックスとストレイトガール。GⅠタイトルに輝いた6歳牝馬はたったの2頭なのである。
今も名勝負として語り継がれる第9回ジャパンカップは武豊騎手のスーパークリーク、南井克巳騎手(現調教師)のオグリキャップと日本馬が1、2番人気を占めた。海外からは米国のペイザバトラー(USA)、ホークスター(USA)、英国のイブンベイ(GB)らの実績馬が参戦した。ただ1頭南半球から来日したのがニュージーランドの6歳牝馬ホーリックスだった。豪華な出走メンバーに導かれ、当日の東京競馬場には9回目で最多の14万824人の観客が集まった。
レースはとてつもないハイペースを刻んだ。4番ゲートからスタートし、先頭を奪ったイブンベイがつくり出すラップはスタートから200メートルごとに13秒0-11秒1-11秒5-11秒4-11秒5-12秒0。1200メートル通過が1分10秒5。その後もペースは落ちることなく、12秒0-11秒6-11秒7と続いた。1800メートル通過は1分45秒8、2000メートルのそれは1分58秒0だった。
当時の東京競馬場の芝1800メートルのコースレコードはサクラユタカオーが持っていた1分46秒0。そしてジャパンカップの約1ヵ月前、スーパークリークが制した天皇賞・秋の優勝タイムが芝2000メートルで1分59秒1だった。当時の日本のトップクラスの記録を上回るペースで進んだレースはしかし、残り400メートルを切っても先頭集団が持ちこたえた。
イブンベイに代わって先頭に躍り出たのが3番手にいたホーリックスだった。そのホーリックスを目がけて追いすがったのが5番手を進んだオグリキャップだった。2頭の競り合いはゴールまで続いた。首差の接戦を制したのはホーリックス。優勝タイムは芝2400メートルで2分22秒2。従来のレコードを一気に2秒7も更新する大記録となった。
南半球からの参戦が1頭だけだったため、検疫の関係もあって、ホーリックスは調教も1頭だけで行った。関係者はホーリックスが寂しがらないようにと、馬房の中に鏡を置いた。鏡の中の自分を見て、「1頭じゃない」と思わせたエピソードは有名だ。
ストレイトガールが初めてGⅠタイトルを獲得したヴィクトリアマイルもまた伝説のレースになった。
先手を奪った18頭立て18番人気のミナレットが懸命に粘るところを12番人気のケイアイエレガントがかわし、優勝かと思われたのを5番人気のストレイトガールが猛然と追い込み、頭差で頂点に立った。1番人気のヌーヴォレコルトは6着、2番人気のディアデラマドレは7着に終わるという波乱の決着で3連単⑤⑦⑱の払い戻しは2,070万5,810円を記録した。これは3連単の払い戻しとして重賞史上最高であり、全レースでは歴代3位にランクされる。
改めて振り返るとヴィクトリアマイルは1着のストレイトガールも2着のケイアイエレガントも6歳牝馬。過去のGⅠレースでの戦績を知っていれば余計に予想できない組み合わせだ。6歳牝馬がGⅠレースで連対した例は6例あるが、いずれも波乱の決着になっている。
2009年のエリザベス女王杯では12番人気のテイエムプリキュアが2着に粘って、馬連は10万2,030円、3連単154万5,760円の払い戻し。1993年の安田記念では14番人気のイクノディクタスが2着になり、馬連は6万8,970円だった。
ストレイトガールは順調なら12月の香港に遠征し、昨年3着に終わった香港スプリントに再挑戦する計画だ。このレースはまた引退レースになる。勝てば6歳牝馬の年間GⅠレース3勝という大記録が達成される。おそらく、この記録は今後も破られることがないだろう。
この勝利によって、ストレイトガールはかつてなかった大記録を達成した。その記録とは「6歳牝馬によるGⅠレース年間2勝」だ。
1984年、中央競馬にグレード制度が導入された。重賞レースの格付けが行われ、距離別体系が整備された。しかし、グレード制度導入後30年以上たったにもかかわらず、6歳牝馬はGⅠレースでの優勝は数少ない。ストレイトガール以前に、ただ1頭優勝したのが1989年ジャパンカップのホーリックスである。ホーリックスとストレイトガール。GⅠタイトルに輝いた6歳牝馬はたったの2頭なのである。
今も名勝負として語り継がれる第9回ジャパンカップは武豊騎手のスーパークリーク、南井克巳騎手(現調教師)のオグリキャップと日本馬が1、2番人気を占めた。海外からは米国のペイザバトラー(USA)、ホークスター(USA)、英国のイブンベイ(GB)らの実績馬が参戦した。ただ1頭南半球から来日したのがニュージーランドの6歳牝馬ホーリックスだった。豪華な出走メンバーに導かれ、当日の東京競馬場には9回目で最多の14万824人の観客が集まった。
レースはとてつもないハイペースを刻んだ。4番ゲートからスタートし、先頭を奪ったイブンベイがつくり出すラップはスタートから200メートルごとに13秒0-11秒1-11秒5-11秒4-11秒5-12秒0。1200メートル通過が1分10秒5。その後もペースは落ちることなく、12秒0-11秒6-11秒7と続いた。1800メートル通過は1分45秒8、2000メートルのそれは1分58秒0だった。
当時の東京競馬場の芝1800メートルのコースレコードはサクラユタカオーが持っていた1分46秒0。そしてジャパンカップの約1ヵ月前、スーパークリークが制した天皇賞・秋の優勝タイムが芝2000メートルで1分59秒1だった。当時の日本のトップクラスの記録を上回るペースで進んだレースはしかし、残り400メートルを切っても先頭集団が持ちこたえた。
イブンベイに代わって先頭に躍り出たのが3番手にいたホーリックスだった。そのホーリックスを目がけて追いすがったのが5番手を進んだオグリキャップだった。2頭の競り合いはゴールまで続いた。首差の接戦を制したのはホーリックス。優勝タイムは芝2400メートルで2分22秒2。従来のレコードを一気に2秒7も更新する大記録となった。
南半球からの参戦が1頭だけだったため、検疫の関係もあって、ホーリックスは調教も1頭だけで行った。関係者はホーリックスが寂しがらないようにと、馬房の中に鏡を置いた。鏡の中の自分を見て、「1頭じゃない」と思わせたエピソードは有名だ。
ストレイトガールが初めてGⅠタイトルを獲得したヴィクトリアマイルもまた伝説のレースになった。
先手を奪った18頭立て18番人気のミナレットが懸命に粘るところを12番人気のケイアイエレガントがかわし、優勝かと思われたのを5番人気のストレイトガールが猛然と追い込み、頭差で頂点に立った。1番人気のヌーヴォレコルトは6着、2番人気のディアデラマドレは7着に終わるという波乱の決着で3連単⑤⑦⑱の払い戻しは2,070万5,810円を記録した。これは3連単の払い戻しとして重賞史上最高であり、全レースでは歴代3位にランクされる。
改めて振り返るとヴィクトリアマイルは1着のストレイトガールも2着のケイアイエレガントも6歳牝馬。過去のGⅠレースでの戦績を知っていれば余計に予想できない組み合わせだ。6歳牝馬がGⅠレースで連対した例は6例あるが、いずれも波乱の決着になっている。
2009年のエリザベス女王杯では12番人気のテイエムプリキュアが2着に粘って、馬連は10万2,030円、3連単154万5,760円の払い戻し。1993年の安田記念では14番人気のイクノディクタスが2着になり、馬連は6万8,970円だった。
ストレイトガールは順調なら12月の香港に遠征し、昨年3着に終わった香港スプリントに再挑戦する計画だ。このレースはまた引退レースになる。勝てば6歳牝馬の年間GⅠレース3勝という大記録が達成される。おそらく、この記録は今後も破られることがないだろう。