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第79回 「追加登録」

2017.10.18
 9月18日に中山競馬場で行われた第71回朝日杯セントライト記念は2番人気のミッキースワロー(牡3歳、美浦・菊沢隆徳厩舎)が優勝した。2着のアルアイン、3着のサトノクロニクルとともに10月22日に京都競馬場で行われる第78回菊花賞の優先出走権を獲得した。
 しかし出走には追加登録が必要だ。ミッキースワローは成長が遅れていたため、3冠レースの第1回と第2回の特別登録を行っていなかったのだ。皐月賞、ダービー、菊花賞、桜花賞、オークスの5大クラシックレースは通常、出走までに3回の特別登録が必要だ。現3歳の場合、第1回特別登録は2016年10月28日(金)正午、第2回特別登録は2017年1月27日(金)正午に締め切られた。第3回の最終登録は各レースの2週間前に行われる。登録料は第1回が1万円、第2回が3万円、最終登録が36万円で3回の登録料の合計は40万円だ。

 古くから踏襲されてきた、このクラシックレースの登録制度だが、オグリキャップの登場などで疑問視する声も出てきた。1985年に生まれたオグリキャップは地方・岐阜の笠松競馬場出身だったため、中央競馬のクラシックレースのことなど頭になかった。だが3歳の春に中央競馬に移籍すると連戦連勝。皐月賞、ダービーに出走していたら、十分通用しただろうと言われた。実力がありながら、登録をしなかったばかりにクラシックレース出走の機会さえ与えられない不運をなくすために導入されたのが追加登録制度だ。1992年のことだった。

 正規の手続きを踏めば、合計40万円の登録料で済むが、追加登録は最終登録の時に200万円を支払う。5倍の登録料だが、追加登録でダービーを優勝することができれば、本賞金は2億円。100倍になって返ってくる。今年の凱旋門賞の場合、1着賞金は285万7,000ユーロ(約3億7,000万円)で追加登録料は12万ユーロ(約1,500万円)となっている。こちらも優勝すれば、20倍以上の見返りがある。追加登録料を支払って凱旋門賞に出走した場合、少なくとも5着にならないと追加登録料を回収することはできない。

 1992年に制度ができて初めて追加登録でクラシックレースに出走したのはウィーンコンサートという牝馬だった。同年の桜花賞に出走して10着だった。天皇賞馬サクラユタカオーを父に持つウィーンコンサートはデビューが3歳の2月29日と遅かった。このデビュー戦を6馬身差の圧勝で飾ると、2戦目は重賞のフラワーCだった。ウィーンコンサートは先手を奪い、2着に逃げ粘った。そこでチャンスありと見て、3戦目に桜花賞を選んだ。桜花賞でも4コーナーまで先頭を守ったが、直線入り口で優勝したニシノフラワーに競り落とされた。

 追加登録を初めて優勝に結びつけたのは1999年の皐月賞を制したテイエムオペラオーだ。2歳8月のデビュー戦は2着に終わり、その後故障。年明けの休み明け2戦目で初勝利を飾ると、ゆきやなぎ賞、毎日杯と3連勝で重賞ウイナーとなった。ここで皐月賞の追加登録をして3冠レースの第一関門を勝利で突破した。追加登録制度ができて8年目での成功例となった。

 1992年の導入後、2006年を除き、毎年最低1頭は追加登録がある。テイエムオペラオーの後、追加登録を勝利に結びつけたのは5頭。2002年桜花賞のアローキャリー、2002年菊花賞のヒシミラクル、2013年オークスのメイショウマンボ、2014年菊花賞のトーホウジャッカル、2015年菊花賞のキタサンブラックだ。ダービーだけはまだ追加登録馬の優勝がなく、2007年にサンツェッペリンが4着になったのが最高の成績だ。

 優勝した中で、もっともドラマチックだったのがヒシミラクルだろう。追加登録した上で、収得賞金で並んでいた8頭の中から3頭の抽選を通過して出走枠を獲得。レースは1番人気の皐月賞馬ノーリーズンが落馬で競走中止する予想外の展開。ゴールでは2着のファストタテヤマとハナ差という接戦だった。針の穴を通すように困難をくぐり抜け、ついにつかんだGⅠタイトルだった。
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