第5コーナー ~競馬余話~
第89回 「単勝」
2018.08.10
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7月22日に今夏の福島競馬が終わった。6月30日に始まり、土日の8日間、全96レースの中でもっとも注目を集めたのは7月7日に行われた開成山特別だった。
現役最強の障害馬オジュウチョウサン(牡7歳、美浦・和田正一郎厩舎)が4年8か月ぶりに平地レースに参戦したからだ。この日、福島競馬場の入場者は1万4,247人を記録した。これは2011年3月の東日本大震災で被災した福島競馬場が翌2012年4月に競馬を再開してからの土曜日としては最多の入場者数となった。
2011年4月3日、オジュウチョウサンは北海道平取町の(有)坂東牧場で生まれた。父ステイゴールド、母シャドウシルエットという血統だ。2013年10月、東京競馬場でデビューを迎えた。芝1800㍍の2歳新馬戦。15頭立ての11着でゴールした。11月の未勝利戦(東京競馬場、芝2000㍍)でも8着に終わり、オジュウチョウサンの平地キャリアはここでいったん終了する。
2014年11月15日の福島競馬場。1年ぶりに競馬場に姿を見せたオジュウチョウサンの活躍の舞台は障害戦に変わっていた。芝2800㍍のレースでオジュウチョウサンはスタートからゴールまで最後方を走り、最下位の14着になった。勝ち馬から13秒7、13着馬から8秒7も離されていた。現在のオジュウチョウサンを知る身としては信じられないような障害のスタートレースだった。だが惨敗したのは、この障害デビュー戦だけ。その後は障害という新天地で秘めていた適性を徐々に発揮することになる。
2016年4月16日、中山グランドジャンプを制した。障害レース4勝目で初めてのJ・GⅠ制覇となった。そして、このレース以降、オジュウチョウサンは不敗の白星街道を歩み続ける。重賞ばかり9連勝。丸2年間負け知らずできた。
そこで選んだのが開成山特別だった。長山尚義オーナーは平地再挑戦の理由を次のように話した。「有馬記念に出走させたいと思ったんです」。きっかけは昨年の有馬記念のファン投票だった。オジュウチョウサンは1,278票を集め、77位になった。ちなみに今年6月の宝塚記念のファン投票では、さらに票が伸び、4,268票で43位になった。
ただ、いくら票を集めても、オジュウチョウサンは有馬記念に出走できる資格を持っていなかった。現行のルールでは、1600万条件以上の平地レースに平地未勝利馬は出走することができないのだ。最低でも平地で1勝しないことには有馬記念出走は夢のまた夢となってしまう。
そのため芝2600㍍とスタミナが要求される長距離レース「開成山特別」が選ばれた。手綱を取るのは武豊騎手。否が応でも注目度は高まった。結果は優勝。オジュウチョウサンは夢の有馬記念出走へ大きく前進した。
今回の件で僕が一番驚いたのは、オジュウチョウサンの「集票力」だった。
開成山特別で売れたオジュウチョウサンの単勝は5,073万8,100円だった。この売り上げは、夏の福島8日間、96レースで出走した、のべ1,384頭の中で、3番目の高い数字となった。
もっとも売れたのはラジオNIKKEI賞で1番人気になったフィエールマン(2着)で7,916万3,800円で、2番目は七夕賞の1番人気サーブルオール(4着)で5,841万3,900円だった。つまり5,000万円を超えた開成山特別のオジュウチョウサンは重賞レベルの単勝売り上げを記録したのだ。
今年前半の大レースで人気を集めた主な馬の単勝売り上げの合計を調べたところ最高の人気馬はダービーで1番人気になったダノンプレミアムで、弥生賞と合わせ、単勝は8億2千万円以上売れた。
次がアーモンドアイでシンザン記念、桜花賞、オークスの3レース合計で6億6千万円。3番目はラッキーライラック。チューリップ賞、桜花賞、オークスを合わせ、5億9千万円に達した。4番目は古馬でスワーヴリチャード。金鯱賞、大阪杯、安田記念で5億2千万円を集めた。
単勝の売り上げは人気のバロメーターだ。私案だが、有馬記念や宝塚記念のファン投票に過去1年間の単勝の売り上げもポイントとして加えれば、より正確に出てほしい馬が分かるのではないだろうか。
現役最強の障害馬オジュウチョウサン(牡7歳、美浦・和田正一郎厩舎)が4年8か月ぶりに平地レースに参戦したからだ。この日、福島競馬場の入場者は1万4,247人を記録した。これは2011年3月の東日本大震災で被災した福島競馬場が翌2012年4月に競馬を再開してからの土曜日としては最多の入場者数となった。
2011年4月3日、オジュウチョウサンは北海道平取町の(有)坂東牧場で生まれた。父ステイゴールド、母シャドウシルエットという血統だ。2013年10月、東京競馬場でデビューを迎えた。芝1800㍍の2歳新馬戦。15頭立ての11着でゴールした。11月の未勝利戦(東京競馬場、芝2000㍍)でも8着に終わり、オジュウチョウサンの平地キャリアはここでいったん終了する。
2014年11月15日の福島競馬場。1年ぶりに競馬場に姿を見せたオジュウチョウサンの活躍の舞台は障害戦に変わっていた。芝2800㍍のレースでオジュウチョウサンはスタートからゴールまで最後方を走り、最下位の14着になった。勝ち馬から13秒7、13着馬から8秒7も離されていた。現在のオジュウチョウサンを知る身としては信じられないような障害のスタートレースだった。だが惨敗したのは、この障害デビュー戦だけ。その後は障害という新天地で秘めていた適性を徐々に発揮することになる。
2016年4月16日、中山グランドジャンプを制した。障害レース4勝目で初めてのJ・GⅠ制覇となった。そして、このレース以降、オジュウチョウサンは不敗の白星街道を歩み続ける。重賞ばかり9連勝。丸2年間負け知らずできた。
そこで選んだのが開成山特別だった。長山尚義オーナーは平地再挑戦の理由を次のように話した。「有馬記念に出走させたいと思ったんです」。きっかけは昨年の有馬記念のファン投票だった。オジュウチョウサンは1,278票を集め、77位になった。ちなみに今年6月の宝塚記念のファン投票では、さらに票が伸び、4,268票で43位になった。
ただ、いくら票を集めても、オジュウチョウサンは有馬記念に出走できる資格を持っていなかった。現行のルールでは、1600万条件以上の平地レースに平地未勝利馬は出走することができないのだ。最低でも平地で1勝しないことには有馬記念出走は夢のまた夢となってしまう。
そのため芝2600㍍とスタミナが要求される長距離レース「開成山特別」が選ばれた。手綱を取るのは武豊騎手。否が応でも注目度は高まった。結果は優勝。オジュウチョウサンは夢の有馬記念出走へ大きく前進した。
今回の件で僕が一番驚いたのは、オジュウチョウサンの「集票力」だった。
開成山特別で売れたオジュウチョウサンの単勝は5,073万8,100円だった。この売り上げは、夏の福島8日間、96レースで出走した、のべ1,384頭の中で、3番目の高い数字となった。
もっとも売れたのはラジオNIKKEI賞で1番人気になったフィエールマン(2着)で7,916万3,800円で、2番目は七夕賞の1番人気サーブルオール(4着)で5,841万3,900円だった。つまり5,000万円を超えた開成山特別のオジュウチョウサンは重賞レベルの単勝売り上げを記録したのだ。
今年前半の大レースで人気を集めた主な馬の単勝売り上げの合計を調べたところ最高の人気馬はダービーで1番人気になったダノンプレミアムで、弥生賞と合わせ、単勝は8億2千万円以上売れた。
次がアーモンドアイでシンザン記念、桜花賞、オークスの3レース合計で6億6千万円。3番目はラッキーライラック。チューリップ賞、桜花賞、オークスを合わせ、5億9千万円に達した。4番目は古馬でスワーヴリチャード。金鯱賞、大阪杯、安田記念で5億2千万円を集めた。
単勝の売り上げは人気のバロメーターだ。私案だが、有馬記念や宝塚記念のファン投票に過去1年間の単勝の売り上げもポイントとして加えれば、より正確に出てほしい馬が分かるのではないだろうか。