第5コーナー ~競馬余話~
第134回 「受難」
2022.05.12
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4月17日に第82回皐月賞が終了した時点で、この原稿を書いている。ここまでに2022年のJRAの平地GⅠレースは5戦を終了したが、1番人気は5連敗中だ。
フェブラリーSはレッドルゼルが6着、高松宮記念はレシステンシアが6着、大阪杯のエフフォーリアは9着、桜花賞のナミュールは10着。そして皐月賞のドウデュースは3着だった。本命馬不振のせいで、結果は波乱の連続。3連単の配当は皐月賞の300倍を最低に、最高は高松宮記念の2万7,000倍と跳ね上がっている。1番人気がここまで苦戦するのは現行の日程になってからは初めてだ。
JRAにグレード制が導入され、重賞レースを格付けするようになったのは1984年だった。導入当時のGⅠレースは全部で15戦。GⅠは4月の桜花賞でスタートする日程だった。1997年にフェブラリーSがGⅠに昇格、1996年にGⅠに昇格した高松宮記念は、それまで5月に行われていたのが、2000年に3月に移された。2017年には大阪杯がGⅠの仲間入りを果たし、フェブラリーS→高松宮記念→大阪杯→桜花賞→皐月賞という現在の流れが出来上がった。
GⅠレースが計24レースに増え、現在の日程が固まった2017年以降、昨年までの5年間はフェブラリーSか大阪杯で1番人気が優勝し、本命馬が年初に好スタートを切るのが通常のパターンだった。今年はこのパターンが大きく崩れた。
その年のGⅠレースで1番人気が勝つまでの連敗記録は「5」が最多だ。1995年、1996年、2012年が該当する。
1995年は桜花賞(ライデンリーダー、4着)→皐月賞(ダイタクテイオー、8着)→天皇賞・春(エアダブリン、5着)→安田記念(サクラチトセオー、2着)→オークス(ライデンリーダー、13着)の後、ダービーでタヤスツヨシが優勝した。安田記念がオークスやダービーの前に行われていたのが現在と違う点だ。
1996年は桜花賞(リトルオードリー、9着)→皐月賞(ロイヤルタッチ、2着)→天皇賞・春(ナリタブライアン、2着)→NHKマイルカップ(ファビラスラフイン(FR)、14着)→高松宮杯(ヒシアケボノ(USA)、3着)と来て、オークスでエアグルーヴが1着になっている。高松宮記念は当時、高松宮杯の名称で行われていた。
2012年はフェブラリーS(トランセンド、7着)→高松宮記念(ロードカナロア、3着)→桜花賞(ジョワドヴィーヴル、6着)→皐月賞(グランデッツァ、5着)→天皇賞・春(オルフェーヴル、11着)の後に、カレンブラックヒルがNHKマイルカップを制した。
2002年から2021年までの20年間に行われたJRAの平地GⅠレースで1番人気はどんな成績を残しているだろうか。
結果は450戦158勝、2着78回、3着65回。勝率は35.1%、連対率は52.4%にものぼる。出走する全馬が頂点を狙
い、激戦を繰り広げるGⅠレースにしては想像以上に順当な結果だと筆者は感じた。
中でも2020年の成績には驚かされた。この年のGⅠレース24戦で、1番人気は16勝、2着3回、3着2回、4着2回で、6着以下で掲示板を外したのは、わずか1回という驚異的な好成績を残した。勝率は66.7%、連対率は79.2%のハイレベルに達した。
16勝の内訳はコントレイルが皐月賞、ダービー、菊花賞の三冠をいずれも1番人気で制したほか、アーモンドアイがヴィクトリアマイル、天皇賞・秋、ジャパンカップで3勝。デアリングタクトがオークスと秋華賞のタイトルを奪取、グランアレグリアがスプリンターズSとマイルチャンピオンシップで頂点に立った。残る6頭は1勝ずつ。モズアスコット(USA)はフェブラリーS、フィエールマンは天皇賞・春、ラッキーライラックはエリザベス女王杯、ソダシが阪神ジュベナイルフィリーズ、ダノンザキッドがホープフルS、クロノジェネシスが有馬記念をそれぞれ勝利した。新型コロナウイルスが猛威をふるい、ダービーをはじめ競馬場にファンの姿がないレースもあったが、名馬たちがその実力を出し切った1年だった。
今年はGⅠばかりでなく、JRAの平地重賞で「本命馬受難」が目立っている。スタートレースとなった中山金杯(1月5日)からダイヤモンドS
(2月19日)まで本命馬は18連敗を喫した。連敗を止めたのは小倉大賞典(2月20日)のアリーヴォだった。
5月号が皆様のお手元に届くころまでにはGⅠレースでの1番人気の連敗記録は止まっているものと思われるが、今年の傾向を見ていると、受難の期間が続いていることもありそうだ。
フェブラリーSはレッドルゼルが6着、高松宮記念はレシステンシアが6着、大阪杯のエフフォーリアは9着、桜花賞のナミュールは10着。そして皐月賞のドウデュースは3着だった。本命馬不振のせいで、結果は波乱の連続。3連単の配当は皐月賞の300倍を最低に、最高は高松宮記念の2万7,000倍と跳ね上がっている。1番人気がここまで苦戦するのは現行の日程になってからは初めてだ。
JRAにグレード制が導入され、重賞レースを格付けするようになったのは1984年だった。導入当時のGⅠレースは全部で15戦。GⅠは4月の桜花賞でスタートする日程だった。1997年にフェブラリーSがGⅠに昇格、1996年にGⅠに昇格した高松宮記念は、それまで5月に行われていたのが、2000年に3月に移された。2017年には大阪杯がGⅠの仲間入りを果たし、フェブラリーS→高松宮記念→大阪杯→桜花賞→皐月賞という現在の流れが出来上がった。
GⅠレースが計24レースに増え、現在の日程が固まった2017年以降、昨年までの5年間はフェブラリーSか大阪杯で1番人気が優勝し、本命馬が年初に好スタートを切るのが通常のパターンだった。今年はこのパターンが大きく崩れた。
その年のGⅠレースで1番人気が勝つまでの連敗記録は「5」が最多だ。1995年、1996年、2012年が該当する。
1995年は桜花賞(ライデンリーダー、4着)→皐月賞(ダイタクテイオー、8着)→天皇賞・春(エアダブリン、5着)→安田記念(サクラチトセオー、2着)→オークス(ライデンリーダー、13着)の後、ダービーでタヤスツヨシが優勝した。安田記念がオークスやダービーの前に行われていたのが現在と違う点だ。
1996年は桜花賞(リトルオードリー、9着)→皐月賞(ロイヤルタッチ、2着)→天皇賞・春(ナリタブライアン、2着)→NHKマイルカップ(ファビラスラフイン(FR)、14着)→高松宮杯(ヒシアケボノ(USA)、3着)と来て、オークスでエアグルーヴが1着になっている。高松宮記念は当時、高松宮杯の名称で行われていた。
2012年はフェブラリーS(トランセンド、7着)→高松宮記念(ロードカナロア、3着)→桜花賞(ジョワドヴィーヴル、6着)→皐月賞(グランデッツァ、5着)→天皇賞・春(オルフェーヴル、11着)の後に、カレンブラックヒルがNHKマイルカップを制した。
2002年から2021年までの20年間に行われたJRAの平地GⅠレースで1番人気はどんな成績を残しているだろうか。
結果は450戦158勝、2着78回、3着65回。勝率は35.1%、連対率は52.4%にものぼる。出走する全馬が頂点を狙
い、激戦を繰り広げるGⅠレースにしては想像以上に順当な結果だと筆者は感じた。
中でも2020年の成績には驚かされた。この年のGⅠレース24戦で、1番人気は16勝、2着3回、3着2回、4着2回で、6着以下で掲示板を外したのは、わずか1回という驚異的な好成績を残した。勝率は66.7%、連対率は79.2%のハイレベルに達した。
16勝の内訳はコントレイルが皐月賞、ダービー、菊花賞の三冠をいずれも1番人気で制したほか、アーモンドアイがヴィクトリアマイル、天皇賞・秋、ジャパンカップで3勝。デアリングタクトがオークスと秋華賞のタイトルを奪取、グランアレグリアがスプリンターズSとマイルチャンピオンシップで頂点に立った。残る6頭は1勝ずつ。モズアスコット(USA)はフェブラリーS、フィエールマンは天皇賞・春、ラッキーライラックはエリザベス女王杯、ソダシが阪神ジュベナイルフィリーズ、ダノンザキッドがホープフルS、クロノジェネシスが有馬記念をそれぞれ勝利した。新型コロナウイルスが猛威をふるい、ダービーをはじめ競馬場にファンの姿がないレースもあったが、名馬たちがその実力を出し切った1年だった。
今年はGⅠばかりでなく、JRAの平地重賞で「本命馬受難」が目立っている。スタートレースとなった中山金杯(1月5日)からダイヤモンドS
(2月19日)まで本命馬は18連敗を喫した。連敗を止めたのは小倉大賞典(2月20日)のアリーヴォだった。
5月号が皆様のお手元に届くころまでにはGⅠレースでの1番人気の連敗記録は止まっているものと思われるが、今年の傾向を見ていると、受難の期間が続いていることもありそうだ。