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第176回 『観光とせり』

2023.08.17

 毎年、7月上旬に開催されている八戸市場に行くのが楽しみになっている。


 北海道の道南に住んでいた筆者ではあったが、海を越えて行かなければならない(現在はトンネルでの行き来も可能)青森は、近くて遠い場所だった。それでも故松橋康彦さんの案内もあって、青森の生産牧場に足を運ばせてもらうようになった数年後には、八戸市場にも足を運ぶようになり、今ではプライベートな旅行でも、八戸や東北地方を訪れるようにもなった。


 これも八戸が観光地(含むグルメスポット)としても魅力的であることが大きい。買い物とグルメを集約した八食センターや、全国にその名を轟かせた、ヒラメの漬け丼が食べられるみなと食堂。そして、松橋さんが八戸に来た関係者にお勧めしたばかりに、せりの前日は予約でいっぱいとなる七味家など、八戸のグルメを食べつくすには前泊どころか、後泊しなければと思えるほどである。


 最近は実家のある新函館北斗から、新幹線で八戸に移動する機会が増えたが、ある時、ローカル線の青い森鉄道に乗りたいがばかりに青森で下車。乗り換えの関係で青森市内を探索したのだが、青森もまた魅力的(主にグルメ関係)な街であり、そうしているうちに、近郊の弘前にも足を延ばすようにもなった。


 今では八戸から足を伸ばし過ぎて盛岡(冷麺や岩手競馬)に行ったり、そこから遥かにオーバーランをして、仙台(牛タンや楽天スタジアム)で前泊をしてから、八戸へと向かったこともある。これも東北新幹線の便数の多さだけでなく、八戸駅からせり会場まで、購買関係者に対しては往復のタクシーチケットが配布されていることが、行き来のしやすさに繋がっている。


 それもあってか、近年では八戸市場を訪ねるリピーターの数が、年々増加している気すらしている。数年前、初めて八戸を訪れたという知り合いの生産者は、今ではセレクトセールやセレクションセールと日程が詰まっているにもかかわらず、八戸市場を挟んでの前泊と後泊を欠かさないようになった。


 道内の競馬マスコミの中には、タクシーチケットを使わず、様々な場所を巡りたいとの理由から、苫小牧からのフェリーに自家用車を乗せて、せりの前後で自由気ままに八戸近郊を巡っている者もいた。こうしたことがせり結果に反映されて欲しいと願うばかりだが、これをお読みになった馬主の中には、八戸市場というか、八戸に興味を持たれた方もいらっしゃるはず。来年は観光とせりの両狙いで、是非とも購買登録をお願いしたい。


 一方、北海道内のせりは、空港(含む新千歳空港駅&南千歳駅)にほど近いノーザンホースパークが会場となっているセレクトセールや、HBAの定期市場では唯一、札幌競馬場での開催となっている北海道トレーニングセールは、交通の便の良さに加えて、観光地であるまさに札幌での開催というメリットもある。だが、新ひだか町の北海道市場で開催されている、セレクションセールなどの定期市場は、新千歳空港や札幌駅から会場まで、2時間ほどのアクセス時間を要してしまう。


 また、日高地方は関係者の皆さんの理解や手助けもあって、サラブレッド見学や体験乗馬といった、馬産地観光が一般的となっている。ただ、せりに来られているような馬のプロの方が、その合間に乗馬をしようとは、まず思わないだろう。観光とせりをくっつけてしまうこと自体が間違った考えなのかもしれないが、それでも、目的となる場所の近くに、魅力的な食べ物や、前泊や後泊をしたくなるような観光スポットがあれば、さらに腰を上げやすくなるのは間違いない。


 その意味では、数年前から北海道市場内のせり会場で始まった、新ひだか町内の飲食施設が様々なメニューを提供する屋台村は、素晴らしいサービスだと思う。しかも、日高町内の人気蕎麦店であるいずみ食堂も、せり開催日は施設内で出店を行っており、昼時になると本店のような行列もできあがっている。新ひだか町やその近郊の街の宿泊施設も少ない中で、千歳方面からの送迎バスも用意しているなど、HBAは主催者としてやるべきことはやっている。それだけにまだ日高が観光地としても魅力のある場所となって欲しいと願うばかりなのだが、それは、この場所に25年近く通っている自分には、見えていないだけなのかもしれない。


 サマーセールが行われる8月下旬だが、まだ本州は残暑が残っているはず。避暑も兼ねてせり市に参加されませんか?というのは方向性がずれているのかもしれないが、いずれにしても、せりに足を運びたくなるようなきっかけを、自分自身も探し出していきたい。

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