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第186回 『キャッチコピー』

2024.06.18

 馬産地ライターが、コピーライターになってみた。


 毎年、ホッカイドウ競馬で開催されているスタリオンシリーズの「スタリオンシリーズ競走種牡馬名鑑」を書かせてもらっている筆者ではあるが、発注先の代理店から、「今年、所属騎手のポスターを制作するのですが、もしよろしければキャッチコピーを考えていただければと思いまして…」と言われた。実はと言うか、名前を出してない仕事の中では、こうしたキャッチコピーや見出しを頼まれることがたまにある。


 このコラムのように、決められた文字数の中で起承転結のある文章(たまにそうならないこともありますが)を書くのは慣れているものの、短い文字数で対象物や、物事の内容に興味を持ってもらうような、コピーの仕事は意外と難しい。


 最も難しいと感じるのが文字数の制限である。こうしたコピーの文字数は大概短く、時には四字熟語プラスαぐらいの文字数しか使えないこともある。


 その場合は四字熟語をそのまま使うだけでなく、音は一緒でも使用する文字を変えるなどしてコピーを作っていくのだが、そんな上手くいく四字熟語が、簡単に見つけられるわけがない。


 競馬のキャッチコピーと言えば、騎手では南井克巳騎手の「剛腕」、田島良保騎手の「仕事人」などが有名である。また「JRAヒーロー列伝」のポスターには、サッカーボーイに「弾丸シュートだ」、ナリタブライアンには「皐月賞31/2馬身、ダービー5馬身、菊花賞7馬身」と付けられている。


 前者は馬名からであり、後者はクラシック3冠における2着馬との着差を表記することで、その強さを表したと言える。


 このようにキャッチコピーは自由である一方で、ピタッと来る言葉を当てはめるのはなかなか難しい。そう思うと、オグリキャップの「ありがとう」というキャッチコピーは、かなり思い切ったと思えてくる。


 というわけで、ホッカイドウ競馬に所属する騎手のキャッチコピーなのだが、いくら馬券でお世話になった騎手だったとしても、「ありがとう」と付けるわけにはいかない。


 この話をもらった時に、すぐ思い浮かんだのは、服部茂史騎手に対するSNS上での愛称である、「ハットーリ」という言葉だった。もちろん、語源となっているのは、世界的な名騎手であるランフランコ・デットーリ騎手であり、服部騎手が好騎乗を見せた際に「ハットーリキター」といった書き込みを通して、ファンの中で認知されていくようになった。


 それでも、単に「ハットーリ」としただけでは、よく分からない場合もある。なので、こちらもSNSで一般的になっていた、「ハットーリ来日!」にしようかと思ったのだが、服部騎手は常にホッカイドウ競馬にいるなとも思い、「ハットーリ来日中!」と2つのコピーを代理店に送り、判断をあおぐことにした。


 しかし「ハットーリ」との愛称を、服部騎手が納得してくれるかどうかという、最大の問題を忘れていた。ただ、ここは主催者であるホッカイドウ競馬の関係者の方が、「ハットーリでポスターを作ってもいいですか?」と確認してくれただけでなく、本人からも了承を得たことで、腕組みをする服部騎手のポスターには、「ハットーリ来日中!」とのコピーが添えられることとなった。


 門別競馬場でコピーを見られた方もいらっしゃるかもしれないが、我ながら、不思議なほどに統一感が無い(笑)。


 個人的に気に入っているのは、高配当の馬券を演出してくれている(あくまで個人の感想です)松井伸也騎手に付けた、「一発長打」(これは元プロ野球選手の松井秀喜選手もかけております)。そして、「朝飛」という名前から連想した、若杉朝飛騎手の「ライジングサン」(筆者が毎年参加している野外音楽フェスでもあります)である。


 名前が出ない仕事だけに、むしろやりがいを感じていたのだが、開幕日早々に様々な関係者から、「ポスターのキャッチコピーを作ったの村本君だって?」と何度も聞かれるようになったので、改めてこのコラムを通してカミングアウトさせていただいた。もし、これをお読みの方で、自分にもキャッチコピーを付けて欲しいという方がいらっしゃいましたら、JBBAへの連絡をお待ちしております(嘘)。

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